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第24話 帰還/休息へ……。

「はぁはぁ……!」

「はぁはぁ……! ミルルちゃん……! ハル君……!」


 クロハとセシリアは、ミルルの遠吠えが聞こえた方へと向かっていた。


 ハイルとミルルの二人はとんでもない速度で移動したため、それほど距離がないように思えるが、実際はかなり距離が離れており、ユズィの元にたどり着くのに数十分以上はかかる。


 二人が走り出して、すでに二十分は経過していた。


(どこ……? どこにいるの……!)


 クロハとセシリアは、二人の姿を見逃さないように辺りを注意しながら見回していた。

 走りながらそこまで注視ができるのは、上級者でなければできな技術だった。


 そして、走り出して三十分が経とうとした時──、


「あっ!」

「セシリアさん?」

「見つけました!」


 セシリアがミルル達を発見した。


「ハル君! ミルルちゃん!」


 二人がミルル達のいる場所に向かうと、そこには、壁に背中を預け項垂れるユズィと、背中に穴が開き、そこから大量に血を流しながらうつ伏せで倒れるモリー、頸動脈を切られ血を流し倒れるメザリの姿があった。

 さらに、ミルルの腕の中には、大量の汗を流し、苦しそうに呼吸を乱すハルの姿が。

 ミルルは泣きじゃくってるようで、顔は涙と鼻水でグチョグチョだった。


「こ、これは……一体、ここで何が……」

「ミルルちゃん、大丈夫?」

「うっ……うっ……」


(まともに喋れる状態じゃないか……)


 クロハはミルルに声をかけた。

 だが、ミルルは未だパニック状態にあるようで、会話ができる状態じゃなかった。


 その為、クロハは状況判断をするため辺りを見回した。


(ご遺体が二人……ユズィさんは……)


「大丈夫です! まだ息はあります!」


 クロハがユズィの状態を思案していると、先に状況判断を始めていたセシリアが、ユズィの生死を確認しており、ユズィの無事をクロハに報告してくれた。


「よかった……」

「ですが、一刻を争う事態です! 急いでここから連れ出して治療院に連れて行かないと危険です!」

「うん。ミルルちゃん! ハル君をお願い!」

「うっ……うっ……」


(後で必ず、ケアするからね……!)


 そう思いながら、クロハはユズィの方に近づこうとする。

 すると、そこに──、


「クロハ殿! セシリア殿!」

「っ、エリィ様、ドゥーザ様!」


 エリィとドゥーザの二人が駆けつけた。


「こ、これは……」

「一体、どれだけの戦いが……」


 二人は、目の前に広がる惨状を見て、驚きが隠せなかった。


「ドゥーザさん、ユズィさんを運ぶの手伝ってもらってもいいですか?」

「えぇ。もちろんです。ユズィさんは……?」

「まだ生きています。ですが、一刻を争う危険な状態です。急いで治療院に連れていかないといけません」

「分かりました」

「クロハ殿、私も──」

「いえ。エリィさんは、彼女を頼みます」

「彼女……? はっ!?」


 クロハの視線を追い、視線を横にズラすと、そこには未だ泣きじゃくるミルルがいた。


「い、犬人族……!?」

「彼女は人間を忌み嫌ったり、敵対したりする子ではありません。ただ、今は過度なショックによるパニックを引き起こしています。なので、ハル君の事含め、側にいてあげていただきたいんです。お願いできますでしょうか……?」

「も、もちろんだ……! 私にできる事なら、なんでもやらせていただく!」

「では、お願いします」


 クロハはエリィと共にミルルの元へ。


 ミルルの前にしゃがみ込み、ミルルの頭を優しく撫で──、


「この人は味方だから、安心して側にいてね」

「うっ……うぅ……」


 軽くだが頷いたミルル。ほんの少しだけ落ち着いてきたのだろう。


 クロハは優しく微笑み、ミルルの頭に置いていた手をハルの頬に持っていき──、


「私、信じてるからね。勝手にいなくなったりしないって。約束、したもんね」


 優しくハルの頬を撫でた後、何かを振り切るかのように目を閉じた後、セシリア達に合流していった。


「彼女は強いな。一番辛い状況でも、最善の判断を下し、それを行っている。彼女のような者こそ、人や国をまとめるのに必要なのかもしれない」


 エリィは、クロハの事を見ながらそう独り言ちた。


 ゆっくり、隣にいるミルルを見る。


(よっぽど怖い思いをしたんだろうな……こんなに泣きじゃくって……ハル殿、君が彼女を守ったのだな……やはり君には、何か特別な力が……)


 そう考えながら、クロハ達がユズィ、モリー、メザリを運び出し終えるまでミルルの側に居続けた。


 ☆ ♡ ☆


「あ、戻って来ました……って!? い、一体何があったんですか!?」


 ダンジョンの外に張られている複数のテント。

 その中には、冒険者ギルド【ブリューヘル】のギルマスであるデストル。イシュを始めとした受付嬢達が、作戦会議室として使っているテントもある。


 たまたま外に出ていたイシュは、ダンジョンの中からクロハ達が出てくるのを発見。

 戻ってきた事に喜んだのもつかの間、クロハがモリーを、セシリアがメザリを、ドゥーザがユズィを抱えているのを見て、驚きを隠せなかった。


 さらに、その後ろからは、ハルをお姫様抱っこで抱えた犬人族であるミルルと、そのミルルに付き添うエリィの姿もある。


「み、皆さん……! 一体何が……!?」

「イシュちゃん、ごめんね。詳しい話は後にさせて。今はこの人達を運ばないと」

「あ、は、はい! えと……モリーさんにメザリさん、ユズィさんですよね……救護班の皆様! 三人の治療院への搬送、お願い致します!」

『了解!』


 イシュが後ろを振り返り、作戦会議室として使っているテントの隣に声をかけると、中から五人の男性の返事が聞こえる。

 そして、テントの中から白服を着た五人の男性が現れ、クロハ達に近づいていく。


「代わります」

「ありがとうございます。あの……」

「はい?」

「モリーさんとメザリさんは、もう……」

「っ…………分かりました。お辛い中、ここまでお運びいただき、誠にありがとうございました。後は我々にお任せください」

「はい。どうかお願いします」


 クロハが何を言いたいのか察した救護班の男性は、クロハへ(ねぎら)いの声をかけ、搬送を代わった。


 メザリとユズィも救護班に引き継がれ、メザリの事、そしてユズィにはまだ微かに息があることも引き継がれた。


 そして、救護班が三人を抱えこの場を去った後、イシュはハルについて尋ねた。


「あ、あの……は、ハルさんは……?」

「ハル君は私が運びます。彼は、私がいないと駄目なので」

「分かりました。では、お願いします」

「はい」


 クロハは目元が赤く腫れたミルルに近づき──、


「ミルルちゃん、ハル君をここまで運んでくれてありがとう。後は私に任せて」

「で、でも……」

「大丈夫。ハル君は死んだりしない。前に私と約束したから。今はただ、疲れて眠っちゃってるだけだと思うから。だから、今からゆっくり休める所まで連れて行ってくるね」

「わふ……クロハさんを……ミルルを信じてくれた二人を信じるワン」

「ありがとう。エリィさん、ミルルちゃんをお願いしてもいいでしょうか?」

「あ、あぁ。それは構わないが……どうする? 彼女は犬人族だ。いきなり人間族がいる場所に連れて行くのは……」

「これ、私の家の鍵です。そこに、ミルルちゃんを連れて行ってあげてください」

「了解した。ドゥーザ、お前はショタリシアス王国の王城に行って、事態の説明を頼む」

「了解。任せて」

「それじゃあ、ミルルちゃん。この方なら大丈夫だから、お家で待ってて?」

「わふ……」

「じゃあ、また後でね。お願いします」

「あぁ」


 クロハはミルルの頭を優しく撫でた後、エリィに一礼し、ハルをお姫様抱っこで抱えながらその場を後にした。


「それじゃあ、行ってくるね」

「あぁ、頼んだ。何か困ったら私の名前を出してくれ」

「了解」


 ドゥーザは、ショタリシアス王国の王城へと向かって行った。


「イシュ殿」

「は、はい……!」

「詳しい説明ができず、申し訳ない」

「い、いえ……! そ、そんな……! あ、頭を上げてください……!」

「寛大なお心、感謝する。今は状況が状況なだけに、それぞれがパニックに陥り、事態の把握も全くできていない。後日、必ずしっかりと報告は行わせていただく。それまで、何も聞かず、そっとしておいてもらえるとありがたい。特に……」


 エリィが後ろに立つミルルを見る。


「もちろんです。心の整理や落ち着く時間は必要です。皆さんがお話できるタイミングが来るまで、ギルドは状況説明を強要したり詮索したりしません。今はどうか、ゆっくり休んでください」

「ありがとう。ギルドマスターも、感謝する」

「いえいえ。詳しい説明がなくとも、なんとなくの事は分かります。イシュさんもおっしゃいましたが、今はゆっくり、心と体を休めてください」

「はい」


 デストルも外に出てきて、エリィと会話をする。

 デストルは、優しい笑みを浮かべ、優しくそう告げた。ミルルの事も、優しい瞳で見つめていた。


「では、失礼致します。ミルル殿、参りましょう」

「わふ……」


 ミルルは、エリィと共に歩き出し、この場を後にした。


「ギルマス、イシュさん、私も失礼してもよろしいでしょうか?」

「えぇ。もちろんです。セシリアさんも、心と体を休めてください」

「ですです!」

「ありがとうございます。では、失礼致します」


 セシリアも、二人に許可をもらいこの場を後にした。


 イシュは作戦会議室で使っているテントの中に戻ったが、デストルだけはまだ外に立っている。


 その視線の先にはダンジョンの入口があり──、


「いよいよ “本格的に彼らが動き出した” と言う事ですか……これは早急に、対策を立てなければ」


 デストルは、ダンジョンの入口を見ながら少しだけ焦ったような様子で独り言ちた。

 いかがだったでしょうか……?


 ダンジョンから出るだけで一話分使うのはどうかと思ったのですが、各々の会話の内容だったりをこだわりたかったので一話分丸々使って書かせていただきました!


 少しでも、ワクワクハラハラドキドキしていただけておりましたら幸いです……!


 次話ではミルルとクロハの、ちょっとした様子をお届けさせていただきます!

 二人がどういう会話をし、どういう関係になっていくのか。その辺も含め、楽しみにしていていただけますと幸いです!

(あれ? 三人ほど忘れてない? と思われた方もいらっしゃるかと思います。忘れてはいないのでご安心ください……! その三人については第26話で詳しく書かせていただきます……!)


 数話、重たい内容が続いてしまったので、次話ではちょっと明るめの内容にしたいと思っております!

 ですが、その次からはまた重たくなってしまうかもしれません……。


 感情の乱高下が激しくなってしまうかもしれませんが、沢山楽しんでいただけますと嬉しいです……!


 ブックマーク、誠にありがとうございます……!

 ものすごく励みになっております……!

 この感謝の気持ちをお返しする為、沢山更新させていただきます……!

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