第23話 家族の為に……/人の為に
「頂の破壊おおおおおおおお!!!」
「くっ!? 全反射!」
ユズィが放った閃光を、ヘルズダールは楕円形鏡で受け止める。
「くっ……何、この威力……! 今までのとは比べ物にならない……!」
が、閃光の威力が強すぎるため、受け止めきれず、どんどん閃光に押され後退りしていく。
「あいつらの覚悟が乗った攻撃だ! それが軽いわけないだろ!!! さぁ、ここで敗れろ!!!」
「くっ……!」
ユズィが心の思いを叫ぶ。
その思いに呼応したかのように閃光が楕円形鏡をどんどん押していく。
そこにユズィは、ダメ押しをするかのように──、
「おおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああ!!!!!!」
最後の力を振り絞るかのように、ユズィは雄叫びを上げる。
この勝負の結果は、果たして……………。
(くっ……! このままじゃ押し負ける……! ボクの全反射が押し返されるなんて、信じられない……! どうすれば……! まだ何も、成し遂げていないのに……!)
ヘルズダールは攻撃を受け止めきれていない事に焦り、どうすればいいのかを考えていた。
このままでは、数分もしない内にユズィの攻撃が楕円形鏡を貫通し、自分に直撃するだろう。
そうなれば、重傷……下手をすれば命を落とす可能性もある。
よって、どうすればこの攻撃を受け止めるないしは躱す方法があるのか。ヘルズダールは必死に思考を巡らせていた。
「はあああああああああああああああああ!!!!!」
「ぐっ……!」
ユズィの攻撃の威力はどんどんと増していく。
楕円形鏡にも、どんどんヒビが入っていく。
(本当に、どうすれば……!?)
と、ヘルズダールがどうにもならなくなった瞬間──、
「ヘルズダール様!」
「っ!? デルビーズ!? なぜここに!」
突如、デルビーズがヘルズダールの隣に姿を現した。
「ダンジョン内で実験をしていた所、強力な能量を検知したので、慌ててやって来たんです。そしたらヘルズダール様が……」
「そう……悔しいし、認めたくはないけど、今のままじゃボクは負ける。この攻撃がこの体を直撃して、最悪死ぬ」
「そんな……!?」
「でも、それは嫌。ボクはお姉様の為にまだ何もできていない。死ぬのなら、少しでも役に立ってから死にたい。だから、助けて」
「ヘルズダール様……はい。もちろんです! では、私に掴まってください。空間転移でここから脱出します」
「あぁ」
ヘルズダールはそっとデルビーズに抱きつく。
「ありがとうございます。まぁ、ただ脱出するのも癪なので、置き土産を用意しておきましょう」
そう言って、デルビーズは真っ黒な石を地面に打ち付け、空間転移でヘルズダールと共にこの場から消えた。
ヘルズダールがいなくなった事で、楕円形鏡が消失。
遮られるものがなくなったユズィの閃光が、動き、壁を穿った。
「はぁはぁ……やった、の、か……?」
閃光が消えた後、残ったのは砂煙だけ。
ユズィは立っているのがやっとなほど、フラフラになりながらヘルズダールがいた場所を見つめる。
砂煙が晴れ視界が良くなると、そこには誰もおらず、大きな穴が開いた壁のみが見えていた。
「跡形もなく消え去った……訳じゃないな……は、はは……ははは……」
ユズィはその場に力なく座り込んでしまう。
岩壁に背中を預け、項垂れる。
「あれほどの攻撃でも、倒せず、挙句に逃げられるのか……」
と、ユズィが吐血混じりの咳をしながら呟いていると──、
「グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……!」
「っ……はっ……ブラッドタウロス……A級モンスターか……つくづくツイていない……」
ユズィの目の前に、薄黒い赤の体をした全長一メートルはゆうに超えるA級モンスター、ブラッドタウロスが現れた。
ブラッドタウロスは、右手に斧、左手に大剣を持ち、五本の太く鋭い角を頭に生やしている。
「ユユゥ、リューズ、リュミ……すまない……私は……俺はここまでのようだ……」
ユズィは、左手に握ったペンダントを開き、写真を見ながらそう力なく呟く。
妻の名前がリュミ。娘がユユゥ。息子がリューズ。
「大好きだ……みんな……」
ブラッドタウロスが斧を振りかぶる中、ユズィは全てを諦め、優しくペンダントを握り、ゆっくりと目を閉じる。
そして、次の瞬間──、
「ブモォォォォォォォォォォ!?」
「え……?」
斧がユズィの体を引き裂く……事はなく、ユズィを殺そうとしていたブラッドタウロスが真横に吹き飛んでいた。
「ど、どういう事だ……」
ユズィは、信じられないものを目撃したようで、目を見開き唖然としていた。
「なぜ君がここに……!?」
ブラッドタウロスを吹き飛ばし、ユズィの目の前に現れた人物。それは──、
「は、ハル殿!?」
ハイルだった。
☆ ♡ ☆
「は、ハル君……? ミルルちゃんも……。どうしたの急に立ち止まって……」
「ハルさんのこの顔……もしかして、何かあったんですか……?」
ユズィが叫んだ瞬間、ハイルとミルルは足を止めた。
ミルルは犬人族で、聴覚が人の何倍もいいので、ユズィの叫びが聞こえたのだろう。
しかし、ハイルは人間。遠くの叫びなど聞こえるわけがない。
では、ハイルは何に反応したのか。それは──、
(この感じ……命が尽きようとしてる……!?)
そう。直感と感覚で、ユズィの命が危ないと言う事を察したのだ。
それを察してしまっては、先に進む事などできない。
(頼む。力を使わせてくれ……)
ハイルは、心の中で神聖魔法を使えるように願う。
そして──、
(神聖魔法・神雷!)
そう唱えた瞬間、ハイルは目にも留まらぬ速さで走り出した。
「ハル君!?」「ハルさん!?」
突然、目の前からいなくなったハルに、クロハとセシリアは驚愕の声を上げる。
「わふっ!」
「ミルルちゃんまで!?」「ミルルさん!?」
そんなハイルの後を追うように、ミルルも駆け出してしまった。
ミルルの速度も凄まじく、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
「な、何……? なんなの……?」
取り残された二人は、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
「はぁはぁ……!」
神聖魔法・神雷で、超速度で駆けるハイル。
(急げ……! 急げ……! 急げ!!!)
目的地が分かっているかのように、ハイルはどんどん進んでいく。
そして、その後ろをミルルが追ってきている。
二人の距離はそんなに離れていなかった。
そして、駆ける事数分、二人はユズィの元に到着した。
二人が到着すると、ブラッドタウロスが壁によりかかり項垂れるユズィを攻撃しようとしていた所だった。
「ハァ!!!」
「ブモォォォォォォォォォォ!?」
ハイルは、疾駆の威力を利用して、飛び跳ねながらブラッドタウロスの顔面を蹴り飛ばした。
蹴られたブラッドタウロスは、真横へと吹き飛ぶ。
そして、地面に着地したハイルを見て、ユズィが声を漏らした。
「なぜ君がここに……!? は、ハル殿!?」
「間に合ってよかった……。話は後です。今はあのモンスターをどうにかします!」
「ど、どうにかって……君一人では……!?」
「ミルルもいるワン!」
そう言って、ミルルがハイルの横に並び立つ。
「い、犬人族!? 人の前に姿を現さない種族がなぜここに!?」
「話は後ワン! 今はハル様と一緒に、あのデカブツをどうにかするワン!」
「行きましょう、ミルルさん!」
「ワンッ!!!」
ゆっくりと起き上がってくるブラッドタウロスを油断なく睨みながら、ハイルとミルルは戦闘態勢に入った。
☆ ♡ ☆
「ブモォォォォォォォォォォ!!!」
「ハル様! 左に避けてワン!」
「ふっ!」
ブラッドタウロスが右手に持つ斧を振りかぶる。
その攻撃を瞬時に見切ったミルルが、ハイルに声をかけ、それを受けハイルは攻撃を躱す。
そして、攻撃を躱したハイルは、先程使用した力を使い──、
「神聖魔法・神雷!」
超速度で移動し、ブラッドタウロスの背後に回る。
そして──、
「聖爪・セイクリッドネイル! 聖爪・セイクリッドクロー!」
ブラッドタウロスに向かって、銀色に輝く三本の鋭いツメを振り下ろす。
爪の先から銀色の閃光が出現し、ブラッドタウロスに命中した。
が──、
「き、効いてない!?」
「多分、筋肉に覆われていて攻撃が通らないんだワン!」
「なるほど……だったら!」
ハイルは、ミルルの助言を聞き、すぐさま次の行動を起こした。
「同じ所を重点的に攻撃すればいいだけだ!」
そう言いながら、ハイルは地面への着地、飛び上がり、を繰り返しながら、ブラッドタウロスの背中に攻撃を加え続ける。
それも、同じ所だけを。
「ブモォォォォォォォォォォ!!!」
同じ所ばかりを攻撃されて腹が立ったのか、ブラッドタウロスは雄叫びを上げ、左手に持つ大剣を背後に向かって振るおうとした。
しかし、それをみすみす許すミルルではなく──、
「ハル様には指一本触れさせないワン! 獣牙の技能・バイファン!」
ミルルが技能を使用し、少し離れた所にいるブラッドタウロスに向かって噛むような動作をした。
すると、ブラッドタウロスの左手の部分に大きな牙が上下二本ずつ出現し、ミルルの口の動作に合わせて動いた。
ミルルが口を開けると、四本の牙は上下に動き、ミルルが口を閉じると、四本の牙が合わさった。
そして、その牙の間にブラッドタウロスの左手があり、牙が合わさった瞬間、ブラッドタウロスの左手は切断され、地面へと落下した。
「今だ! セイクリッドクロー!」
ハイルは勝機を見逃さない。
ブラッドタウロスが切断された左手の痛みに悶えたその瞬間を狙って、先程から攻撃を加え続けていた場所に、最大の技を放った。
「ブモォォォォォォォォォォ!?」
すると、先程攻撃を加えた際は何もならなかったブラッドタウロスの背中に、大きな傷がついた。
「ミルルさん! 一気に決めましょう!」
「はいワン!」
ハイルがブラッドタウロスの背後に降り立ち、ミルルがブラッドタウロスの真正面に立つ。
挟み撃ちの状態だ。
「獣牙の技能・バイファン!」
「神聖魔法・セイクリッド!」
ブラッドタウロスの真正面からは、ミルルが先程の技能を使用。
先程よりも数の多い牙を出現させ、ブラッドタウロスの全身を噛み砕く。
そして、背後からハイルが力を使用。
両手を前に突き出し、そこから光り輝く閃光を背中に放つ。
前と後ろからの強力な攻撃に、ブラッドタウロスは──、
「ブモォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!?」
雄叫びを上げ、その場に倒れ込んだ。
そして、ゆっくりと灰になり消滅していった。
「や、やったワン……?」
「はい。僕達の勝ちです」
「っ〜〜〜〜〜! やったワ〜ン!!! 始めて敵を倒せたワン! ミルル、ちゃんと戦えたワン!?」
「はい。とても強くて、心強かったですよ♪」
「むふ〜〜〜〜♪ わ〜いワン♪ ミルル、強くなったワン! 戦えたワン〜〜〜!!!」
ミルルは、まるで子供が褒められたかのようにはしゃぎ、その場で飛び跳ねていた。
無邪気な笑顔とその行動に、ハイルは自然と笑みがこぼれていた。
「まさか……本当に倒してしまうとは……子供と人間を嫌う犬人族が……まさか、あんな強大な敵を倒してしまうとは……ふっ……俺は、まだまだ知らない事ばかりだな……こんな知識不足のまま、死ぬわけには、いかない、な……」
ユズィはゆっくりと目を閉じ、体を脱力させた。
「あ、ユズィさん!?」
ハイルがユズィの変化に気づき、近づこうとする。
が、その時──、
「うっ!?」
ピキンッ……!
「また、この後頭部に電流が走ったような痛み……うっ……!?」
ピキンッ……!! ピキィィンッ……!!!
「くっ……! うっ……!? この間のより、長くて痛い……!? うっ……!?」
ハイルは頭を押さえ、痛みに悶え始める。
「ハル様、この後──」
ミルルが後ろにいるハイルに声をかけながら、振り返ろうとした時──、
ドサッ。
背後で物音がした。
「ん?」
なんの音なのか確かめるため、後ろを振り返るミルル。すると、そこには──、
「は、ハル様!?」
額から大量の汗を流し、過呼吸に近い乱れた呼吸を繰り返しながら倒れるハルがいた。
「は、ハル様!? ど、どうしたワン!? な、何があったワン!?」
慌てて駆け寄り、頭を抱え膝の上に上体を乗せ、問いかけるミルル。
しかし、ハルから返答はない。あるのは、どんどん苦しそうに乱れていく呼吸だけ。
「な、なんでワン……い、一緒に戦って、勝てて、やっとこれから一緒に過ごせると思ったワンに……なんで、なんでこうなるワン……あのおじさんも動かないし、ハル様も……ミルルは、ミルルはどうすればいいワン……!」
ミルルは大量の涙を流し、ハルの頭を自身の胸に抱き寄せる。
そして──、
「わおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん……!!!!!!!」
悲しみが混じった遠吠えを上げた。
その遠吠えは、ダンジョン内に響き渡り──、
「はっ!? い、今の遠吠えって!?」
「ミルルさんのですね……何かあったのでしょう!」
「行こう!」
「はい!」
ハルとミルルを探していたクロハとセシリアの耳に届き、二人はその声がした方に急いで向かった。
さらに、ミルルの遠吠えが聞こえたのは二人だけでなく──、
「い、今の声は……!?」
「犬人族の遠吠えに似ているような気がするけど……でも、こんな所に犬人族がいるはずが……」
「先入観など今の私達にとっては一番の天敵。まずは確認あるのみだ。ドゥーザ、行くぞ!」
「うん。エリィならそう言うと思ったよ」
二階層の他のブロックを捜索していた、エリィとドゥーザの耳にもミルルの遠吠えが届き、二人はその遠吠えが聞こえた方へと状況把握の為、向かうことにした。
そして数分後、ミルル達の元に、クロハ、セシリア、エリィ、ドゥーザの四名が集う事となる。
いかがだったでしょうか……?
前回、最後にユズィはどうなるのか、ハイルとミルルは何に気がついたのか、ヘルズダールとの決着は着くのか。
これらをこの話数で説明しますと伝えさせていただきました……!
なので、それを中心的にしっかりと書かせていただきました……!
その結果、またまた文章量が多くなってしまいました……すみません……!
読みづらく感じてしまわれるかもしれないのですが、最後まで、楽しくお読みくださっておりましたら幸いです……!
「なろう様」では初のブックマーク二桁!
本当に嬉しいです……! 本当にありがとうございます……!!!
読んでいただいている皆様により楽しんでいただくために、これからもっともっと沢山更新していきたいと思っております!
なので、これからも引き続き、この作品「エスパ」を何卒、よろしくお願い致します……!
「面白い!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークをしていただけますととっても嬉しいです……!




