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第21話 一緒に

「それでは、話を聞いてもいいですか?」


 ハイルの尋ねにミルルは頷き、話を始めた。


「ミル……私は村を追放されたんだワン……」

「「「っ!?」」」


 いきなりとんでもない事を言い放ったので、三人は目を見開き驚愕した。


「ミル……私は、村にとって異端で害でしかない。だから必要ないって。村を出ていけって言われたんだワン……」

「酷い……」


 クロハが顔を顰めながら小さくつぶやく。


「ミル……私は、村のみんなとは違う風に生まれてしまったワン……だからいらなくなってしまったんだワン……」

「一体、どんな理由で……」


 セシリアが、緊張した面持ちで尋ねる。


「ミル……私は……」


 ミルルが意を決して理由を話そうとした時、セシリアが手を上げてそれを遮った。


「少しよろしいでしょうか……?」

「ん? どうしたんですワン?」

「先程から一人称、何か無理をしていませんか?」

「わふっ!? そ、そんな事ないワン!? ミル……わ、私は私だワン!」

「ほら。ミルと言いかけてやめています。もしかして、普段はご自身の名前を呼んでいるのでは?」

「そ、それは……」

「もしそうなのだとしたら、無理して一人称を変える必要はありませんよ?」

「わ、わふ……?」


 セシリアの言葉に、ミルルは小首を傾げた。


「一人称と言うのは、人によって違うもの。それぞれの言い方があるんです。『私、僕、俺、ワタクシ、自分』。そこに自分の名前を呼ぶのが入っていても、なんら不思議はないじゃないですか。だって、自分の名前なんですから」

「わふ……」

「そそ! 私のパーティーメンバーにも自分の名前を一人称にしている人いるよ? だから、何も気にしなくて大丈夫! 恥ずかしがる必要なんてないよ〜♪」

「わふ……」


 ミルルはハイルの方を見る。


「っ」


 ハイルは微笑みながら、優しく頷く。

 それを受けてミルルは──、


「みんな……ありがとうだワン……! そうやって言ってもらったの、始めてだワン……! すごく、すごく嬉しいワン……! だから、お言葉に甘えて、ミルルはミルルって言うワン!」

「「「はい♪」」」


 ミルルは、これまでで一番の笑みを浮かべた。

 その表情は、とても可愛らしいものだった。


 ☆ ♡ ☆


「話の腰を折ってしまってすみません。ミルルさん、村を追放されてしまった理由をお教えいただいてもよろしいですか?」

「うん……ミルル、強い雄が好きなんだワン……」


………………………………………………………………………………………………………………………………………………


(((ん……?)))


「ミルル、強くてカッコよくて、雌を守ってくれるような雄が大好きなんだワン……」


 でも……と続け──、


「犬人族は基本、雄よりも力を持ってるワン。雄は守る対象。守ってもらう対象じゃない。だから、ミルルの気持ちは犬人族の中だと異端で不必要なんだワン……」


 犬耳と尻尾が下を向き、しょんぼりしているのだと言う事が目に見えて分かった。


「つまり、男の趣味嗜好が違うから追い出されたって事!?」

「わふ……」

「何それ! そんなのおかしいよ! 趣味嗜好なんて人それぞれじゃん! それを一つの考えにまとめて固めるなんて、そんなのおかしい!」

「そうですね。クロハさんの言う通りです。一人一人にそれぞれの考え方があって当然です。それを統一するなど、それは個人とは言えません」


 クロハの怒りにセシリアが同意をする。

 喋りはしないが、ハイルもうんうんと頷いている。


 そんな三人の反応を見たミルルは──、


「みんな……優しいワンね……」


 再び泣き出してしまった。

 しかし、今回の涙は嬉し涙。

 三人の優しさに心打たれたのだろう。


「それで、追放された後、どうやってこのダンジョンに?」

「行く当てなんてないから、ただ適当に歩き回ったんだワン。そうしたら、洞窟の入口みたいなのが見えて、そこに入ったらここだったワン……」

「「「っ!?」」」


 ミルルのその言葉に、三人は驚愕した。


 ミルルの言葉が正しければ、ミルルは直接(・・)二階層(・・・)()入った(・・・)と言う事になる。


 本来、二階層や下の層に行くには必ず一階層を経由しなくてはならない。

 転移技能陣でもない限り、一階層を無視して二階層へと行く事はできない。

 そもそも、転移技能陣はダンジョンの中にしかないので、結局、転移技能陣を使用するにしても必ず一階層には立ち寄らなければならない。


「ミルルさん、その洞窟の入口みたいな所に足を踏み入れた際、何かありませんでしたか?」

「何か、ワン?」

「はい。例えば、入った瞬間に眩い光りが自分を包んだとか、何かを踏んでしまったとか」

「う〜ん……特には何もなかったと思うワン。そこを入ったら、もうこの場所の光景だったワン。どこを行っても同じ景色で、どうすればいいのか分かんなくて、困ってたワン……」

「そう、ですか……」


 直接、二階層へと入る事は本来であれば不可能。

 だが、ミルルが嘘を言っているとは思えない。

 だとすると、二階層へ直接入る事のできる特殊な入口があると言う事になる。


 三人は、目配せをする。


「ミルルちゃん」

「わふ?」

「その入口を入って最初にいた場所、覚えてる?」

「覚えてはないワンけど、迷わないように目印は付けてあるワン!」

「じゃあ、そこに連れて行ってもらっていいかな?」

「いいワンけど……ミルルがいてもいいワン……?」

「もちろん! ミルルちゃんがいないとそこに行けないでしょ? それに、私はもう、ミルルちゃんを仲間だと思ってるから♪」

「仲間……」

「だから、さ。私達と一緒に行かない? 案内が終わっても、一緒にいよう? 私達のパーティーに入って、一緒に思い出作ろうよ」

「一緒に……ほ、本当にいいワン……?」

「うん! 二人もいいよね?」

「はい」「もちろんです」


 クロハは立ち上がり、ミルルに近づいていく。

 そして、ミルルの頭に手を乗せ、優しく撫でる。


「人の事怖いかもしれないけど、私達がいるから、一緒に行こう? ね?」


 追放されたミルルにとって、『仲間、一緒』と言う言葉は、とても嬉しいものだった。


 ミルルは大粒の涙を流しながら──、


「うん……! うん……! 行く! 行くワン……! 一緒に行くワン……!」


 と、嬉しそうに答えた。


「ふふ♪ よかった♪」


 そうして、ハイル達に新たな仲間、ミルルが加わった。


 ミルルが泣き止むのを待ち、四人はミルルが最初にいた場所へと向かう事にした。


 のだが、突然──、


「っ!?」


 ミルルの犬耳がピクッと動き、尻尾が逆立つ。

 足を止めたミルルに、クロハとセシリアは首をかしげる。


「はっ!?」


 そして、ミルルが足を止めたのと同時に、ハイルが勢いよく後方を振り返った


 まるで、何かに気づき、何かを察したかのように。

 プロローグに登場していた三人のヒロイン達。

 その内の一人はクロハでした。


 そして、今回二人目のヒロイン、ミルルが登場いたしました!

 犬人族であるミルルを、可愛がって愛していただけますと幸いです……!


 エルフのクロハ。犬人族のミルル。果たして、残りの一人はどんな子なのか。

 楽しみにしていただけますと嬉しいです……!


「面白い!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、ブックマーク、ご評価をしていただけますと嬉しいです……!

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