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## 第10話「記憶の深層界」

1週間後。


記憶屋ギルド東京支部の地下施設。


俺たちは、巨大な転送装置の前に立っていた。


===================================

【朝倉 蒼】Lv.22

職業:記憶喰らい(C級)

HP:350/350

MP:180/180


この1週間の成果:

・反動から完全回復

・レベル20→22

・職業ランクアップ

===================================


「準備はいい?」


楓が最終確認をする。


「ああ」


この1週間、みっちり準備をした。


記憶の深層界についての知識。


想定される危険。


そして、チームワークの訓練。


「私たちも準備万端よ」


鈴音が自信満々に言う。


===================================

【パーティーメンバー】

・朝倉蒼 Lv.22(リーダー)

・白石鈴音 Lv.30

・真田剛 Lv.44

・神楽美咲 Lv.???

===================================


「じゃあ、転送を開始します」


楓が装置を操作する。


「気をつけて。深層界では、現実の常識は通用しません」


「わかってる」


転送装置が起動する。


眩い光に包まれ——


次の瞬間、景色が変わった。


### ◆◇◆


「これが…記憶の深層界…」


目の前に広がるのは、現実離れした光景だった。


空には無数の記憶結晶が浮遊し、大地は様々な記憶の断片で構成されている。


遠くには、巨大な記憶の塔がそびえ立っていた。


===================================

【エリア情報】

記憶の深層界・第一層

危険度:B

生息する記憶体:Lv.15~25

特殊環境:重力変動、時間流動不安定

===================================


「すごい…」


美咲が呟く。


「ここが、すべての記憶が集まる場所」


「ああ」


でも、美しいだけじゃない。


危険な気配が、そこかしこから感じられる。


「依頼の内容は?」


真田先輩が聞く。


「第三層にある、『ある記憶』を回収すること」


「ある記憶?」


「詳細は不明。ただ、『見ればわかる』と」


曖昧な依頼だ。


やはり、罠の可能性も——


ギャオオオオ!


突然、咆哮が響いた。


「来る!」


鈴音の警告と同時に、影が襲いかかってきた。


===================================

【遭遇】

記憶の番犬 Lv.23

HP:500/500

能力:記憶を喰らう牙

===================================


巨大な犬のような姿。


だが、その体は記憶の結晶で構成されている。


「散開!」


俺の指示で、全員が動く。


これも訓練の成果だ。


「記憶調律・束縛!」


鈴音が番犬の動きを封じる。


「今だ!」


真田先輩が斬りかかる。


だが——


ガキィン!


「硬い!」


番犬の体は、予想以上に頑丈だった。


「私が」


美咲が前に出る。


「記憶創造・消去の槍」


美咲の手に、白い槍が現れる。


それを投げつけると、番犬の体の一部が消滅した。


「すげえ…」


さすが、人工記憶体。


でも、番犬もタダではやられない。


ギャオオオオ!


咆哮と共に、仲間を呼ぶ。


次々と、記憶の番犬が現れる。


「5…いや、6体!」


「囲まれた!」


まずい状況だ。


でも——


「落ち着け」


俺は深呼吸をした。


この1週間の訓練を思い出す。


「鈴音、3時方向の2体を」


「了解!」


「真田先輩は9時方向」


「おう!」


「美咲は俺と一緒に正面を」


「うん!」


的確な指示で、混乱を防ぐ。


これも、リーダーとしての成長だ。


「記憶喰らい・範囲摂取!」


新しく覚えた技を発動。


複数の敵から、同時に記憶を奪う。


===================================

【新スキル】

記憶喰らい・範囲摂取 Lv.1

複数の対象から同時に記憶を摂取

消費MP:80

===================================


番犬たちが怯む。


その隙を、仲間たちが逃さない。


連携の取れた攻撃で、次々と番犬を倒していく。


10分後。


「ふう…終わったか」


最後の番犬が、光となって消えた。


===================================

【戦闘勝利】

獲得経験値:1500

レベルアップ!

Lv.22 → Lv.23


ドロップアイテム:

記憶の牙×3

深層界の地図(不完全)

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「地図?」


ドロップしたアイテムを確認する。


不完全だが、深層界の地図のようだ。


「これは助かる」


真田先輩が地図を見る。


「第三層への最短ルートが載ってる」


「でも、なんで番犬が地図を?」


鈴音の疑問はもっともだ。


まるで、俺たちを導いているような——


『罠の匂いがするわね』


Systemも同じことを感じているようだ。


「でも、行くしかない」


依頼を受けた以上、進むしかない。


「ああ」


仲間たちも頷く。


地図に従って、俺たちは先へ進んだ。


### ◆◇◆


第二層への境界。


そこには、巨大な門があった。


「試練の門、か」


門に刻まれた文字を読む。


『記憶を捧げし者のみ、通ることを許される』


「記憶を捧げる?」


「つまり、通行料ってことか」


真田先輩が舌打ちする。


「どんな記憶でもいいのか?」


試しに、俺は昨日の朝食の記憶を差し出してみた。


ブゥゥゥン


門が赤く光り、拒絶された。


「価値が足りないみたいだ」


「じゃあ、もっと価値のある記憶を」


鈴音が言いかけて、止まった。


価値のある記憶。


それは、大切な記憶ということ。


「困ったな…」


全員が悩む。


大切な記憶を失うのは、誰だって嫌だ。


「私が」


美咲が前に出た。


「私の記憶なら」


「ダメだ」


俺は止めた。


「美咲の記憶は、美咲自身だ。それを失ったら」


人工記憶体である美咲にとって、記憶を失うことは存在の消失に繋がる。


「でも、他に方法が」


その時、俺はあることを思いついた。


「そうか…記憶を『捧げる』か」


「蒼?」


「ちょっと試してみる」


俺は門の前に立った。


そして、記憶喰らいを逆に使う。


自分の記憶を、門に『喰わせる』のだ。


選んだのは、辛い記憶。


両親を失った時の、悲しみの記憶。


「これを、捧げます」


記憶が、門に吸い込まれていく。


すると——


ゴゴゴゴゴ


門が、ゆっくりと開いた。


===================================

【試練の門通過】

捧げた記憶:悲しみの記憶(A級)

代償:精神耐性-10%(一時的)

===================================


「開いた!」


「でも、蒼…大切な記憶を」


鈴音が心配そうに言う。


「大丈夫」


俺は微笑んだ。


「悲しい記憶なんて、無い方がいい」


嘘だ。


悲しみも、俺を作る大切な一部。


でも、前に進むためなら。


「行こう」


門をくぐり、第二層へ。


そこは、第一層とはまったく違う世界だった。


### ◆◇◆


第二層。


ここは、記憶が具現化した世界。


街があり、人がいる。


だが、すべて過去の記憶の再現だ。


「これは…」


「東京?」


見覚えのある風景。


だが、どこか違う。


「30年前の東京だ」


真田先輩が気づく。


「MEMTECHが開発される前の」


記憶技術がない時代の東京。


なぜ、ここに?


「気をつけて」


美咲が警告する。


「ここにいる『人』は、記憶の残留思念。下手に関わると——」


「おい、そこの兄ちゃん」


声をかけられた。


振り返ると、中年の男性が立っていた。


===================================

【残留思念】

??? Lv.30

状態:不安定

危険度:不明

===================================


「珍しい格好してるな。コスプレか?」


残留思念が近づいてくる。


無視するべきか、でも——


「ああ、まあ…そんなところです」


とりあえず、話を合わせる。


「そうか。最近の若者はよくわからん」


男は笑った。


普通の人のようだが、これが残留思念。


「ところで」


男の表情が変わった。


「お前たち、『記憶』を探してるんじゃないか?」


ドキリとした。


なぜ、知っている?


「まあ、そんな顔するな」


男は肩をすくめる。


「ここに来る奴は、みんなそうだ」


「みんな?」


「ああ。特に最近は、統制局の連中がウロウロしてる」


統制局!


やはり、罠だったのか。


「で、何を探してる?」


「それは…」


言うべきか迷う。


でも、情報が欲しい。


「第三層にある、特別な記憶を」


「第三層か…」


男の顔が曇る。


「やめとけ」


「なぜ?」


「あそこには、『アレ』がいる」


「アレ?」


「記憶を喰らい尽くす、化物さ」


記憶を喰らう化物。


嫌な予感がする。


「詳しく教えてください」


「…まあ、いいだろう」


男は語り始めた。


第三層にいる化物の話。


それは、かつて人間だったもの。


記憶を求めるあまり、自我を失い、化物になった存在。


「名前は、『記憶の暴君』」


「暴君…」


「レベルは60を超える。お前たちじゃ、勝てない」


レベル60。


確かに、今の俺たちでは——


「でも」


男が続ける。


「一つだけ、方法がある」


「なんですか?」


「暴君の『核』となっている記憶を見つけ出し、それを」


その時だった。


ブォン!


男の姿が歪む。


「ちっ…時間切れか」


「え?」


「俺も、ただの残留思念。長くは保たない」


男の体が、透けていく。


「最後に一つ、忠告だ」


「はい」


「第三層の中心部。そこに、お前が探してるものがある。だが——」


男の姿が、完全に消えた。


最後の言葉は、聞き取れなかった。


「行こう」


真田先輩が言う。


「ここにいても仕方ない」


「そうね」


鈴音も頷く。


でも、俺は不安だった。


レベル60の化物。


そして、未だ正体不明の依頼。


これは、本当に大丈夫なのか?


『大丈夫よ』


Systemの声が響く。


『あなたには、仲間がいる』


そうだ。


一人じゃない。


「よし、第三層へ行こう」


仲間たちと共に、さらに深部へ。


記憶の深層界の、最深部へ。


そこで待つものは、果たして——

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