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## 第9話「反動」

翌朝。


俺は自分の部屋で目を覚ました。


「うっ…」


体が動かない。


記憶増幅薬の反動は、想像以上にキツかった。


===================================

【朝倉 蒼】Lv.20

職業:記憶喰らい(D級)

HP:160/320(回復中)

MP:75/150(回復中)


状態異常:

・記憶増幅薬反動(残り20時間)

 全能力50%低下

 記憶能力使用不可

===================================


「大丈夫?」


枕元に美咲が座っていた。


「なんで部屋に…」


「鈴音さんに連絡して、鍵を借りたの」


そうか。昨夜は美咲が俺を家まで運んでくれたんだった。


「心配かけて、悪い」


「ううん。私の方こそ」


美咲が俯く。


「私のせいで、巻き込んじゃって」


「それは違う」


体を起こそうとするが、上手くいかない。


「これは、俺が選んだ道だ」


「でも…」


ガチャ


部屋の扉が開いた。


「蒼!大丈夫!?」


鈴音が飛び込んでくる。


後ろには真田先輩の姿も。


「話は聞いた。記憶統制局と戦ったんだって?」


「ああ」


「無茶しすぎよ!」


鈴音が涙目で怒る。


「しかも記憶増幅薬まで使って…」


「でも、使わなかったら」


「わかってる。わかってるけど…」


鈴音が俺の手を握る。


「心配したんだから」


「…ごめん」


「ったく、世話が焼ける」


真田先輩が苦笑する。


「で、体の具合は?」


「最悪です」


「だろうな。その薬の反動は半端じゃない」


真田先輩も昔、使ったことがあるらしい。


「とりあえず、今日は学園を休め」


「でも——」


「でももクソもない」


真田先輩が俺の頭を軽く叩く。


「今のお前じゃ、子供にも負ける」


確かに、その通りだ。


「それより」


真田先輩が美咲を見る。


「お前、何者だ?」


「…………」


美咲が困ったような顔をする。


「話してもいいよ」


俺が促すと、美咲は自分の正体を話し始めた。


人工記憶体であること。


記憶統制局から逃げてきたこと。


すべてを聞き終えた後、真田先輩は腕を組んで考え込んだ。


「なるほど、それで氷室が引き下がったのか」


「知ってるんですか?氷室のこと」


「ああ。あいつは統制局の中でも、特に危険な奴だ」


真田先輩の表情が険しくなる。


「『記憶の処刑人』って呼ばれてる」


「処刑人…」


「気に入らない記憶能力者を、片っ端から『処分』してきた」


ゾッとする話だ。


「でも、大丈夫」


鈴音が力強く言う。


「私たちがついてる」


「そうだ」


真田先輩も頷く。


「仲間だろ?」


胸が熱くなる。


こんなにも、俺を支えてくれる人たちがいる。


「ありがとう、みんな」


その時——


ピンポーン


インターホンが鳴った。


全員が警戒する。


まさか、統制局が——


「朝倉さん、いらっしゃいますか?」


聞き覚えのない、若い女性の声。


「どちら様ですか?」


鈴音が代わりに応答する。


「記憶屋ギルドの者です。朝倉蒼さんに、緊急の依頼があって」


記憶屋ギルド?


「ギルドって…」


「記憶屋の相互扶助組織よ」


鈴音が説明する。


「でも、なんで蒼に?」


とりあえず、ドアを開けてもらった。


現れたのは、20代前半の女性。


===================================

【楓(かえで)】Lv.25

職業:記憶仲介人(C級)

所属:記憶屋ギルド東京支部

===================================


「初めまして。記憶屋ギルドの楓と申します」


楓と名乗った女性が、丁寧にお辞儀をする。


「朝倉蒼さんですね?」


「はい」


「実は、あなたに指名依頼が」


「指名依頼?」


「はい。それも、かなり高額な」


楓が書類を取り出す。


===================================

【特別依頼書】

依頼人:匿名

内容:とある記憶の回収

場所:記憶の深層界

報酬:500万メモ

条件:朝倉蒼限定

===================================


「500万!?」


全員が驚きの声を上げる。


「なんで俺に?」


「依頼人曰く、『記憶喰らいの能力が必要』とのことです」


記憶喰らい。


俺の能力を知っている人物からの依頼。


「怪しいな」


真田先輩が警戒する。


「罠かもしれない」


「でも、500万メモ…」


葵の治療費の半分だ。


これを逃す手はない。


「受けます」


「蒼!」


鈴音が止めようとする。


「今のあなたじゃ無理よ」


「でも——」


「待ってください」


楓が口を挟む。


「実は、依頼の実行は1週間後です」


「1週間後?」


「はい。それまでに、準備を整えてください、と」


なるほど。


1週間あれば、反動も治る。


「それなら…」


「いや、それでも危険だ」


真田先輩がまだ反対する。


「記憶の深層界なんて、A級でも危険な場所だぞ」


記憶の深層界。


この世界の記憶が堆積する、異次元空間。


確かに、危険な場所だ。


「でも、行きます」


「蒼…」


「妹のために、俺は強くならなきゃいけない」


それに——


「これは、きっと試練だ」


次のステージへ進むための。


「…わかった」


鈴音が諦めたようにため息をつく。


「でも、条件があるわ」


「条件?」


「私も同行する」


「俺も」


真田先輩も手を挙げる。


「私も」


美咲も。


「みんな…」


「当然でしょ」


鈴音が微笑む。


「仲間なんだから」


楓が困ったような顔をする。


「あの、依頼は朝倉さん限定で…」


「サポートメンバーは別でしょ?」


「それは…まあ…」


「決まりね」


鈴音が勝手に話を進める。


楓も諦めたようだ。


「わかりました。では、1週間後に」


詳細を伝えて、楓は帰っていった。


### ◆◇◆


その日の夜。


俺はベッドで休んでいたが、眠れなかった。


記憶の深層界。


そこで何が待っているのか。


『不安?』


Systemの声が響く。


『まあね』


『でも、行くんでしょう?』


『ああ』


『その意気よ』


Systemが優しく言う。


『あなたなら、きっと大丈夫』


『根拠は?』


『勘よ』


適当だな。


でも、なぜか安心した。


『ねえ、System』


『なに?』


『お前の正体って、何なんだ?』


今まで、ちゃんと聞いたことがなかった。


『さあ?』


『さあって…』


『私にもわからないの』


Systemの声が、少し寂しそうだった。


『気がついたら、あなたの中にいた。それだけ』


『そうか…』


『でも、一つだけ確かなことがある』


『何?』


『私は、あなたの味方よ』


『…ありがとう』


温かい気持ちになった。


目に見えない存在だけど、確かにそこにいる。


それだけで、心強い。


コンコン


ドアをノックする音。


「入っていいよ」


入ってきたのは美咲だった。


「眠れない?」


「まあね」


美咲がベッドの横に座る。


「ごめんね」


「何が?」


「私がいなければ、こんなことには」


「だから、それは違うって」


俺は微笑んだ。


「美咲がいてくれて、よかった」


「え?」


「一人じゃ、きっと乗り越えられなかった」


美咲の顔が赤くなる。


「そ、そんな…」


「本当だよ」


しばらく、静かな時間が流れた。


「ねえ、蒼」


「ん?」


「未来は、変えられると思う?」


美咲が真剣な眼差しで聞いてくる。


「変えられる」


即答した。


「絶対に」


「どうして、そう言い切れるの?」


「だって」


俺は天井を見つめた。


「未来が決まってるなら、今頑張る意味がない」


「…………」


「俺は信じる。努力すれば、運命は変えられるって」


美咲が小さく微笑んだ。


「うん。私も信じる」


「ああ」


「一緒に、頑張ろうね」


「もちろん」


美咲が立ち上がる。


「じゃあ、おやすみ」


「おやすみ」


部屋を出ていく美咲。


一人になって、俺は葵のお守りを握りしめた。


1週間後。


記憶の深層界で、何が待っているのか。


不安はある。


でも、それ以上に。


強くなれるチャンスだ。


葵のために。


みんなのために。


そして、自分のために。


俺は必ず、乗り越えてみせる。


===================================

【特別依頼受諾】

1週間後:記憶の深層界へ

報酬:500万メモ


準備期間開始

===================================


窓の外で、月が静かに輝いていた。

【更新予定】

毎日更新を目指します!

最低でも週5は更新したいと思ってます。

【お願い】

★(評価)や感想をいただけると、作者のMPが回復します!

特に感想は、次話を書くエネルギーになります。

「ここが良かった」「ここはこうして欲しい」など、どんなことでも嬉しいです!


批判的な意見も大歓迎です。

初心者なので、皆様のご意見で成長していきたいと思ってます。

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