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第三十九話 回復のち探索、そして

第三十九話 回復のち探索、そして


 僕が目が覚めたときには今回の事件は全て終わっていた。


 あの後、巨人の崩壊を観測した冒険者ギルド各員は、北の草原に駆り出され、防衛戦を展開……とはならず、動くことを放棄したサイレントウォーカーたちの観測に努めたらしい。


 中には何人かまだ息があるものもおり、そういったものたちには可能な限り治療を施し、命を助けることができたそうだ。


 後日、他の街からやってきた冒険者たちがサイレントウォーカーの掃討を行い、彼らは一匹残らず駆逐された。


 かくして流通都市タイズを襲った未曾有の大災害はひとまず幕引きとなった。



「ううん……」


 目が覚めた僕はというと、リスタルと共に毒からの治療と、事件の調書を取るため1ヶ月の待機を言い渡されていた。


 カーネリアが用意した報告書に目を通す。

 カーネリアは「暇つぶしみたいなものよ」とタイズの店をあちこち周り情報を集めてきてくれたようで、その結果、さまざまなことがわかってきた。


 まず、被害の状況だが、今回の災害で一番被害が大きかったのは、伝説の剣が保管されている管理協会らしい。


 そこで働く人たちは管理者のロードクロを始め、全員がサイレントウォーカーになってしまったらしく、現在は無人で、冒険者ギルドが念のため警備を行なっている。

 さらにはそこで管理されていた伝説の剣が全て盗み出されてしまい、今はまさにもぬけの殻状態なのだそうだ。


 火事場ドロボウも確かにいたかもしれないが、リスタルの話ではラズワードと遭遇した地点も管理協会なので、話を統合すると、ラズワードが何か仕組んだのかもしれない。


 スキルが内包された剣が大量に紛失し、その影にラズワードという得体の知れない怪物が見え隠れしている。


 何か嫌な予感がするが、これ以上はどうすることもできない状況だった。


(厄介なことにラズワードの目撃情報はまったくないんだよな)


 ヤキモキした気持ちを覚えたが、さすがにちゃんとした証拠もなしに悪戯に周囲を不安にすることはまずいだろう。

 僕はこの件をギルドに報告こそしたが、あまり言い広めるものではないと胸にしまうことにした。


 その他、町の建物などはさほど大きな破壊はなく、北側の壁の崩落が一番の被害となった。

 この元々サイレントウォーカーは人を襲う習性しかないのが幸いした結果だろう。


 ただそれ故に人的被害は大きい。

 死者、サイレントウォーカー化は合わせて約五千人。

 その内サイレントウォーカーの毒からから助け出せたのは百人余り。

 三万人規模の街なのでおよそ六人に一人は被害を受けたことになる。


 まさに大災害だ。

 冒険者ギルドは今後この事件を記録し、法則性があるものか検証していくらしい。


「これ以上はどうしようもないか」


 せめて何か復興を手伝えればと思うけど、さすがに安静を指示されてる今の僕にできることはない。

 かくして1ヶ月、僕らはタイズから動かずじっくりと休むことにした。


 ――とはいかず、僕にはどうしても確かめておきたいことがあった。


「さて、来たぞ! 遺跡だ!」

「楽しそうねラルド」

「そりゃもう!」

「……ああ、あんたそういう趣味なわけね」


 僕とリスタル、そしてカーネリアは協会地下に隠されていた遺跡にやってきていた。


 現在は冒険者ギルドが護衛している施設だが、頼んでみたらあっさりと協会内の調査を行わせてもらえたのだ。

 もともとあたりを付けていたこともあって、床を破壊したら地下遺跡への入り口はあっさりと見つかった。


 遺跡は縦長の筒状になっているようで、僕らは壁に用意されていた螺旋階段を下っていく。


(やはりここの壁の紋様はあの遺跡の紋様と同一のものだ。ううん、興味が尽きない。)


 壁には以前見た遺跡と同等の幾何学的な模様が刻まれている。

 よく見ると少し形が違うものもあり、この一辺一辺、何かしらの意味があるのだろうかと、僕の興味を刺激してくる。

 だが、その意味を考えてみるのもいいが、今はそれよりもこの遺跡を探索することが先決だ。


 伝説の剣を補完していた協会の地下に隠された遺跡。

 ここならば、ガネットを直すヒントや、何かしらの歴史的発見が見つかるかもしれない。


 小一時間ほど下り続け、僕らは遺跡の底へやってきていた。


「これは……」


 遺跡のそこには三つの出入り口があった。

 誰かが生活していたのだろうか、そのうち二つの部屋はキッチンのような設備と、食事を食べていたであろう机の残骸が転がっていた。


「なんか生活していたのかしら」

「ここにカビが枯れているし、おそらくはこの部屋で食事をとっていたんだろうね」

「何をしていた人?」

「それは最後の部屋を見てみないと」


 そういって僕らは最後の部屋をのぞいてみることにした。


 そこは小さな本棚が一つ置いてあるだけの部屋だった。

 棚の中には古びた本が数冊立てかけられており、とりあえず僕は一冊手に取ってみることにした。


 それはここの住人の手記の様だった。


――女神歴1230年4月28日

  妙な剣の研究を依頼される。

  なんとしゃべる剣だ。


――女神歴1230年4月29日

  剣には【オリジン】というスキルが宿り、どうやらその作用でしゃべることができるらしい。

  剣はラピスと名乗り、世界を守るために自身を完成させてほしいと願い出てきた。


――女神歴1230年5月30日

  【オリジン】の完成のため、様々なものを用意し、私が研究していた合成魔術を試みていく。

  結果、ラピスは以前よりもかなり流暢にしゃべることができるようになった。


――女神歴1231年4月30日

  研究結果を知った王国が彼女と合成魔術に興味を示す。

  王国の宝物庫に入れられたらおそらく二度と彼女に自由はないだろう。

  私は彼女の移送を決心した。 


 『女神歴』ガネットと出会ったときに彼女が言った単語であった。

 それにこの内容は、どう読んでも彼女の記述だ。


(この遺跡にガネット、いやラピスがいたのか)


 手記の最後にはガネットと書き手の名前が記載されていた。


(なるほど、君がガネットと名乗ったのはそういうわけか)


 ほかの本も読んでみたが剣のガネットのことは記載されてはいなかった。

 僕らはここにある本を回収し、宿屋に持ち帰ることにした。


「さてと―――」


 宿屋に戻った僕はさっそくガネットを抜き、彼女をじっくり観察する。


―――――――――

?????


【オ◆ジ●】

―――――――――


 正体不明のスキルが一つ見えてくる。

 あの手記によればこのスキルがガネットの本体なのだろう。


 なるべく欠落させることなく、このスキルだけを抜きだし新しい剣に移植する。

 これまではそれができなかったが、図らずもロードクロとの戦いで、コツはつかんでいる。


 僕は細心の注意を払い、【オリジン】の移植を行うことにした。


 極限抽出、再構成―――。


 ガネットの器であった剣は形を崩さず、白い透明な水晶が僕の手の上に現れていく。


「よし、あとはこいつを……!」


 加工、結合――――。


 カーネリアの剣に水晶を加工した透明な回路図がすっと剣に吸い込まれていく。


「できた……」

「お、おオ!?」

「ガネット!」

「こ―――」

「??」

「殺ス気カアーーー! 今回ばかりは死ぬかと思ったゾ! 私を抽出なんて無茶ヲ!」


 それは無機質な声であった。

 だが抑揚の付け方がおかしく、どこかコミカルな声ーー。


「は……はは……! ガネットだ!」


 僕は喜びのあまりガネットを振り回した。


「や、やめ、ヤメローーーー!?」


 この日、『金緑石の集い』にガネットが復帰した。

これにて第三章完結です。


いろいろ生活のリズムが変わり、定期的な更新ができなくなってしまったことをお詫び申し上げます。

それでもなおここまで読んで頂いた方には感謝の気持ちでいっぱいです。


しばらくは更新を控えます。

一度読み返しながら、文の修正や、次章の展開をまとめるのでご了承くださいませ。


改めて、ここまで読んでいただきありがとうございました。


2022/02/22

3万pv行きました!

ありがとうございます!

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