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第三十八話 ジャイアントキリング

第三十八話 ジャイアントキリング


 僕はリスタルに彼女の剣と回復のスキルがある枝を渡した。


「僕が先に出て、時間を稼ぐ。まずはリスタルは回復を」

「分かった」


 リスタルが一歩引き、自身の治癒を始める。

 それを確認した僕は怪力のスキルを起動し前に出た。


 ロードクロを眺める。

 サイレントウォーカーの集合体であるこいつに生半可な攻撃をしてもダメージはほとんどないのだろう。

 胸に穴をあけても死ななかったのだ、それこそラズワードのように首を落としても死なないのかもしれない。


(だけど、確かにこいつは【サイレントウォーカー】スキルを介して、僕に命令を送ってきた)


 つまるところどこかにいるはずだ。

 この無数のサイレントウォーカーたちを操っている者が。


「リスタル、僕が前に出ている間に周囲を確認して、こいつを操っているやつがいないか探してほしい」

「分かった。やるわ」

「それじゃ、いくよ!」


 僕はリスタルに指示を出し、四つん這いのロードクロに目がけ走りだした。

 ロードクロは僕の進路に向けて先ほど同様、自身の手をたたき落としてきた。

 衝撃音と揺れが僕を襲う。


「おっと……!」


 それを僕は素早く膝をつき、転倒を防いだ。

 そして再び接近を試みる。


(ロードクロの本体はおそらく頭か外部にいる)


 ヒントはいくつかあった。

 僕が背中に駆け上がろうとしたのを嫌がり腕を振ったこと、顔への攻撃を嫌がったこと、背中に目がけた僕の攻撃に対応ができたこと、そのことを考えると体全体を見渡せる部分にいないとつじつまが合わない。

 頭頂部ならそれは可能のはずだ。

 もしかするとロードクロの本体はこの草原のどこかに潜んでいて、あの巨人の中にはいない可能性も考えられるがそうであった場合はリスタルがきっちりと見つけてくれるはずだ。


(予測し、その可能性を検証していく!)


 僕は意を決して飛び出し、地面を叩いたまま戻されていないロードクロの手に飛び乗る

 また腕を振り回されないように今度は【切れ味強化++】を起動させた右手の剣を地面に突き立て、ロードクロの手を地面に釘付けにする。


「アアアア――!!」


 効果はあったようで、ロードクロは腕が上手く動かせないようだ。

 引き抜かれるまでのわずかな時間に僕は一気にロードクロの腕を駆け上がった。

 途中何本かの腕が、ロードクロの腕のから生え僕の進路を塞ぐが、僕は剣を振り、それらをすべて切り払う。


(邪魔をしてくるということは、登った先に本体があるということだ)


 僕は自分の考えが当たっている予感を覚えつつ、腕を登り切り、背中に到達する。

 すかさず巨人の頭部を振り返った。


 同時に、魔力素を感知するために目に魔力を込める。


「見つけた」


 ちょうど頭頂部。

 そこに青い光を放つ魔力素が一番集まっている。

 周囲の魔力素も青く輝いているがそこだけ色が深くが輝きが違って見えた。


 僕はすかさず駆け出した。

 しかしその行く手を肩や首から生えてくる腕が妨害してくる。


「リスタル、本体はおそらく頭頂部だ! 援護を頼む!」

「任せて」


 リスタルの声が聞こえるとほぼ同時に周囲の気温が急速に落ちていく。

 彼女の剣のスキル【氷結華】の効果が発動したのだろう。

 対象の熱を奪い、凍らせるシンプルだけど強力な能力だ。


 さすがにこの巨人を凍らせるまでには至らないが、腕を駆けあがるときと比較すると、腕の生えてくる頻度が落ち、生えた腕も動きが鈍くなっていく。


(これならいける)


 僕は肩甲骨のあたりから、首へと駆けあがり、妨害してきた腕を切り払う。

 腕は瞬く間に地面に落ちていく。


 僕はそれを最後まで確認することなく、すぐに後頭部から頭頂部へと駆け上がった。


 そうしてついに本体のところへたどり着いた。

 そこでは頭から上半身が飛び出た、男が一人、天に手を組み、何者かへ祈りをささげていた。


 別に何に祈っているのか知りたくもなかった。

 こいつは、僕の大切なものを奪おうとした怪物なのだ!


「お前が!!」


 僕が駆け出すのと同時に、上半身の男はこちらに振り向き、手を伸ばしてきた。

 僕の周囲から、無数に生えてくるサイレントウォーカーの腕、おそらくその一つ一つに例の毒を含み、かすりでもしたら即奴らの仲間入りなのだろう。

 だけれど、それはもうタネが割れている。


 僕は自身の剣で生えてきた腕をすべてうちはらう。

 一撃でも貰ってはいけない状態と、一撃ぐらいなら対処できる状況では取れる選択肢の数が全然違っていた。


 宙を舞う腕、その先にいる男の顔は一度驚愕で目を開き、すぐさま僕に向けて敵意を向けてきた。


「遘√?螂ウ逾槭↓蛻?r蜷代¢繧九▽繧ゅj縺具シ!」

「お前が何と言おうと!」


 もはや人の言葉ですらない何かを叫び、男は再び僕の周囲に腕を生やしてくる。

 先ほどよりも数が多い。

 僕は両手の剣を構え、先ほどと同じように素早く打ち払おうとした。


 しかし、僕が剣を振るうよりも早く腕は凍り付き砕け散った。

 僕の視界に映ったのはこの場に最も似合わない透き通るような銀糸。

 月明りに照らされ、揺れるごとに輝きを変えるそれは気高く、誰に触れることも許されない荘厳さがあった。


 リスタルだ。

 その瞳はまっすぐに僕を見つめていた。


「ラルド、行って!」


 その一言に背中を押され、僕は【怪力】のスキルを起動し、全力で走った。

 

「繝ゥ繧コ繝ッ繝シ繝画ァ!!」


 男が何か言葉を発し腕を僕にけしかけてくるが、僕はそれをことごとく切り落としていった。

 あと一歩、それで僕の間合いに入る。


「これで!!」


 一歩、踏み込む、同時に右手の剣の【切れ味強化++】を起動、僕は男の首に狙いを絞り剣を振るう


「繝ゥ繧コ繝ッ繝シ繝画ァ!!」


 4本の腕が僕の剣と男の首の間に生えてくる。

 だがそんなものは意味をなさない。

 僕はさらに【重量増加】を同時起動させ、斬撃の威力を強化する。


 重い斬撃は生えてきた腕を切り裂き、ブレることなく男の首に吸い込まれていく。


「どうだァァ!」


 鈍い手ごたえを一瞬手で感じたが、迷うことはなかった。

 僕は力の限り振りぬいた。


 男の首がポロリと落ちる。

 瞬間、僕は勝利を予感し、気を抜いてしまった。


(―――いや、違う!)


 念のために確認した魔力素は奴の胸に集中している。

 それに気が付いたとほぼ同時に、僕のすぐそばから新たな腕が生え、僕の顔に目がけ迫ってきた。

 斬撃で崩れた体勢からはかわすのが困難な一撃。


(この程度――)


 僕はとっさに右手の剣を手放した。

 体をそらし致命傷は避けたものの、腕は頬をかすめていく。


 すぐさま毒が体に回り僕の意識が奪われそうになる。

 だが、もう遅い。


 僕は右手を首のない本体の男に当て【合成】魔術を使用した。

 青い光を集め、掃き出し、体の外で再度結合させる。


 ぽとりと青い水晶が落ちたのを見て、僕は左の剣でそれを貫き、砕いた。


「アアァァァァ!?」


 同時に巨人が苦しみ叫び声をあげた。

 命令を送る大元が消えたのだ。やはり効果は絶大の様だ。


 体中のあちらこちらで苦しみの声をあげながら、巨人はボロボロと崩壊を始めていった。


(やった……でも――)


 避け損ねた毒が全身に回ってくる。


 もう、指令を出す者はいないので、それほど強くはない毒のはずだが、僕は毒のしびれから、まとも動くことができず、膝をついた。


(思えば一度目の毒でさえちゃんと抜けていなかったんだ。二度目はどうなるかちゃんと考えていなかったな)


 リスタルが知ったらまた怒られるかもしれない。

 それでもいいか、怒られるということは生きていること。

 それもお互いに、おそらくそれは最善ではないが最良の結末ではないだろうか。


(そのためには――――)


 僕は何とか立ち上がろうと体に力を込めた。

 だが、僕の足場は崩れ、僕はなすすべなく崩落に飲まれていった。


「ラルド!」


 リスタルの声が聞こえた気がした。

 ふわりと落ちていく僕のそばで銀色の髪が揺れる。


「大丈夫、なんとかするわ」


 リステルがそういうのなら大丈夫だろう。

 僕は安心して、意識を手放した。


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