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幕間 夜話

幕間 夜話


 壁の街ニキスに向け出発した3日目の夜、リスタルは魔物の襲撃に備え、火を起こし夜の番をしていた。


「ところで、どうしてあなたが?」

「今更すぎないそれ?」


 リスタルから見て、火の向かい側には呆れた顔をしたカーネリアが腰掛けていた。


「私はね、あなた達のスポンサーなの。旅に同行するのは普通でしょ」


 旧『金緑石の集い』の時も援助者何人もいたが、彼らは旅に同行するなんてことはなかったので、リスタルは首を傾げた。


「……おかしな人」

「あんたが言う?」


 しばらく沈黙が続く。

 リスタルはじっと火を眺め、周囲の音に耳を澄ませた。

 視界は正面しか見れないが、音は自分を中心に全方位の状況を把握することができる。

 

(周囲の音に乱れはない、草が風に揺れ、正面の火はパチパチと少し不規則な音を立てている、風音も異常はない)


 一通りの音を音を探知し終えたリスタルは念のため周囲を見渡し、薪の具合を確かめた。


「そういえばさ、ラルドが使ってた合成術……あれ、リスタルはなんだと思う?」


 そう言いながらカーネリアが枝を火に投げ入れた。

 その疑問に以前ラルドから合成術の原理を聞いていたリスタルは答えた。


「しいていうなら、高度な魔術」

「魔術……ってことはあたしでも使えるようになるのかしら」


 確かに魔術は誰しも訓練すれば使える技術だ。

 だがリスタルは首を横に振った。


「それは、難しい」

「どういうことよ」


 リスタルは言葉にするより見せたほうがいいだろうと、そのあたりに落ちている石を手に取りカーネリアに見えるように持ち上げた。

 魔素をイメージし、石から離散させていく。


 だが、彼女の握った石はパラパラと少しの砂に変わったがそれ以上の変化は見せることはなかった。


 一般的に魔素の操作は魔術の基本だ。

だが専門のロール【魔術師】でもない限り、それを訓練し続ける意義は少ない。


「こういうことよ」

「なるほどね。じゃあそれができるラルドって何者なのよ」


 カーネリアが火から少し離れたところで仮眠をするラルドを見る。

 リスタルも釣られるように彼を見た。


「私もわからないわ。ただ、私が知っているラルドはひたすら真面目に鍛錬を続けられる素敵な人よ」

「惚気てくるわね……はいはいご馳走様」


 カーネリアが軽くため息を吐き「そうなると商売にはならないか」とポツリとつぶやいた。


 ラルドの姿を見て、リスタルは流通都市タイズのことを思い出す。


(彼は私の言葉を聞かずに私を助けに来てくれた)


 ついに追い抜かれてしまったのかと寂しさと嬉しさの感情が入り乱れる。

 彼の伸びしろは異常であった。

 それは初めてあった日から、いつかこうなる日が来ることを予感させるものであった。


「やっぱり目標が高い分、かな」


 リスタルは自身が冒険者を続けている理由を少し考えた。

 一つは実家から離れたかったからだった。


 そして、それを手助けしてくれた恩人は自分を残してどこかに消えてしまった。

 旧『金緑石の集い』のリーダー、ディアンの父、ベリルの行方を調べる。それが彼女の今の目的であった。


 旧『金緑石の集い』に参加していたころに各地を巡ったが、彼の情報は手に入らず、残すは人類未踏の領域を探索するしかなかった。

 そんな折、ラルドからの誘いがあり、ともに旅に同行することにしたのだ。


(これからのことを考えると私ももっと強くならないといけない……それにこの先の街は―――)


 彼女は炎を前に一人決意し、この先起こるであろうことを予測し、ラルドに自分の事情を押し付けることになるのだろうと少し心を痛めた。



※


(これは、もっと強くならないといけないとか考えているんだろうなぁ)


 カーネリアは表情を変えず焚き火を眺めているリスタルをじっと見ていた。


 商売柄、観察眼に長けているカーネリアはリスタルの細かな所作から彼女の考えていることの半分を見抜き、なんと声をかけたものかとしばし悩んだ。


(まあ、どうしてそこまでとは思わなくもないけど、そこまで踏み込むのは野暮、か)


 結果カーネリアは会話を諦めた。

 商売と同じだ。買うかどうか悩んでいる客にあまり訴求をし続けても良い結果は得られにくい。


 カーネリアは一度目を閉じ、意識を切り替えた。

 目を開くと視界は薄く緑に覆われ、リスタルに青い炎のようなものがまとわりついているように見えるようになる。


(それにしても合成術か……。この力のヒントが分かると思ったんだけどね。いやいや、まだまだ機会はあるか)


 物心ついたときから使えるようになっていた謎の力。

 カーネリアはこれを先見の炎と勝手に名付けている。


 この能力のルールは単純で炎が大きいほど、何かを成したときに大成し、至らぬ場合に大敗する。

 色により意味があるのだろうが、黄色の炎が金に絡むこと以外はカーネリアには興味がなかった。


(てっきり、ラルドの炎はタイズの報酬のことかと思ったけど、違うみたいね)


 カーネリアはちらりとラルドを見ると、彼は巨大な黄色い炎を纏っている。


 以前ラルドと話したときにもこの力を使ったが、そのときに見た炎のままだ。


 カーネリアの同行目的は単純だった。

 ラルドに金儲けの話が来たときに、自分が仕切れる場所にいようと考えたのだ。


(それに、あの時のこいつはちょっとかっこよかったしね)


 ふとタイズでの彼の行動を思い出し、カーネリアは微笑んだ。


※


(珍シいスキルの気配がすル。いや、気のせいか?)


 ガネットは木に立てかけられたままリスタルとカーネリアを見ていた。


 ふと、何かスキルの気配を感じて辺りを見渡したのが特に変化はなく。

 気のせいだったかと内心溜息をついた。


 記憶を失ってはいたが、ガネットはさほど不安はなかった。

 どうしてダモンドに行かなければならないのか、また【ラピス】とはなんなのか。


(私はガネットだ。その自覚はあるのダが、うウむ)


 おそらく一本きりなら不安で押し潰されていただろう。

 だが、ガネットには仲間がいる。

 自分を独力で修復した相棒の寝顔を見て、ラルドとならなんとかなるだろうと、ガネットはくすりと笑った。


(ホント、私を見つけてくれたのが、お前でよかっタ。まあ、まズは記憶を取り戻さなけれバ、また明日、日記を読ませてもらウ)


 三者の夜は静かに過ぎていった。

本格更新はまだ無理ですが、少しでも書きたくて短い話ですが更新してみました。


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