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「一度だけなら相手が分からない、ということもアリでしょうけど、それが常態化してるって生徒会長たちは言ってるんですよね。それなのに相手が誰だか全然わからないんですか?」
大声を出した黒モジャを完全に無視してさらに椿木はたずねる。
「そんなの…じっと見るモンじゃねえだろ」
桜木会長が勢いのない口調で口をひらく。
「なるほど。じゃあ相手はどんな感じですか?僕より大きい?小さい?毎回変わって僕はどちらもOKな感じなんですかね?覚えてる相手だけでもいいので」
「…………色々だった、と思う」
「そうですか。で、じっと見るもんじゃない、といいつつ、リコール理由にその体格も色々だという相手といかがわしい行為を行ったと断定するにいたったのは、どんな証拠があってですか」
「入れ替わり立ち代り、生徒会室に連れ込んでいたからでしょう」
「それは生徒会に提出する書類を持ってきた風紀委員や各委員達ではない、と断定できる程度には顔を見てるんですよね?でもどんな人かわからない?」
「…それは……」
黙り込む桜木たちに生徒たちの中に静かなざわめきが起きる。
生徒会室には関係者以外立ち入り禁止だ。
だが「関係者」と言っても生徒会役員以外という意味ではない。
風紀から上がってくる書類や、各部から遠征等の申請書類が提出されることもある。
大抵それは正副委員長や正副部長であるが、それ以外の委員が持ってくることも、無いわけではない。
そしてそれらの人物はそれこそ「色々な」体格をしている。
「では、それはまぁ置いておきましょうか。それでは二つ目についてですが。」
カチカチと机の上に置いてあるパソコンを操作すると、パッとスクリーンに表が映し出される。
「こちらの表は僕を含め、生徒会役員の出席簿です。もちろん、今回のために先生方にきちんと許可を貰っているものです」
「これを見てもらえると分かると思いますが、僕は授業を欠席したことはありません。つまり、授業時間は生徒会室は空いているという事です。その間、会長達は生徒会室を使える状態にありました。会長達の、生徒会室を使えない、という状況は成立しません」
「俺たちに授業をさぼって仕事しろっていうのか?」
話題がうつったことで安堵したのか、気を取り直したように唸るような低い声で会長が呟き、鋭い目つきで椿木を睨みつける。
「いいえ。そこでまた質問ですが、仕事をしてないのに、ではなぜ免除特権を利用して授業に出てないんですか?」
椿木は静かに頭を振り、レーザーポインタでスクリーンを指すし示した。
桜木達の出席簿には確かに「免」の文字が書かれている。
「…そんなの、仕方なく授業を欠席して生徒会の仕事をしたからに決まってるじゃないですか」
「そうですか。それではそんな副会長に質問です。生徒会の仕事、つまり処理すべき書類は原則的に生徒会から持ち出し禁止です。どこで執務していたんですか?」
「各自の部屋ですよ。会長の部屋だったり、私の部屋だったり。もともと原則で、絶対に禁止ではありませんから」
「そうですね。でも、その書類って、各委員会や各部から生徒会室に上がってくるんですが…。いつそれを生徒会室から持ち出しましたか?」
「いつ、なんて一々覚えてませんよ。授業中だったり、放課後だったりいろいろです」
次々と質問をされて不愉快そうに野々瀬が眉をひそめる。
「そうなんですか。不思議ですね、これを見ると、ある時を境に三人の入出記録がぱたりと切れてるんですよ」
パッとまた画面が変わる。
生徒会室の入退室記録だ。
IDで管理されているそれを見れば、その奇異な事がすぐにわかる。




