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生徒会役員が席についた後、今度は反対側からやはり風紀委員に付き添われた椿木が姿を見せた。
その途端に先ほどまでの声援や拍手がやみ、シンとなった会場を気にもせず壇上をゆっくりと歩き、一度も会長達の方を見ることなく黙ったまま席に座る。
先導した風紀委員が不測の事態に備えてそれぞれの席の後ろに立つ。
そうしてようやく風紀委員長の佐野が登壇し、中央の席に着いた。
「ではこれより、生徒会役員、書記椿木侑士に対するリコール請求について反論集会を行う」
重々しい口調で佐野が開会を宣言する。
「これから行われる討議については全て記録される。双方ともに嘘のない発言をすること。まず、生徒会長桜木悠馬、副会長野々瀬三月、会計小田島恒由によって、請求されたリコール内容について桜木会長」
指名された生徒会長がすっと席から立ち上がる。
風紀委員長の佐野が豪奢な獅子であるとするならば、生徒会長の桜木は精悍な黒豹であろうか。
マイクを手に、まずグルリと会場内を見まわす。
歓声を上げていた親衛隊たちもその瞬間黙って会長の姿を見つめた。
「まず、自分たちが不甲斐ないために、同じ役員をリコール請求する事になってしまったことを全生徒に謝罪する」
そう言って会長が頭を下げると、後ろに座っていた他の役員も立ち上がって一緒に頭を下げた。
「かいちょー、頭を上げて~っっ!!」
「小田島書会計~っ!!」
「みなさまは悪くありません!」
親衛隊達だろうか、悲鳴が上がる。
それを手を挙げて制するとまたぴたりと声が止まった。
相変わらずパフォーマンス凄いなぁ、とボンヤリと椿木はそれを見つめる。
「今回、書記の椿木をリコールしようと思った点について
一つ、生徒会室を私物化し、役員以外の生徒を連れ込みいかがわしい行為を行ったこと。
一つ、それにより、他の役員が生徒会室に入れず、したがって生徒会運営に支障をきたしたこと。
一つ、何もしていない一般生徒への暴力行為等の指示を行ったこと。
以上の点において、生徒会役員であるにふさわしくないと判断し、リコールを請求する」
壇上の巨大スクリーンに3つの請求理由が映し出される。
「この訴えについて、椿木から反論はあるか?」
桜木が席に着いたのを見計らって、佐野が椿木に反論を促す。
「はい、反論をさせていただきます」
椿木が立ち上がって佐野に答える。
「座ったままでかまわない」
「はい、では失礼します」
「では、まず一つ目について反論…というか質問させていただきます。
生徒会を私物化し、役員以外を連れ込んでいかがわしい行為を行ったという事ですが、それであれば、当然僕の相手をしたという人がいると思われますが、個人を特定してありますね?全校生徒の前で晒さなくてもいいですが、風紀には証人の氏名は報告して確認できているのでしょうか」
椿木がそう尋ねると、佐野はそれを首を振って否定した。
「いや、そういうった報告は来ていない」
「桜木生徒会長、証人についての書類を提出してくれ。ここで全校生徒に晒す気はないが、そういう事実があった事をこちらとしても確認していないので、正式に確認させてもらう」
生徒会室に連れ込んだ方も、連れ込まれた方も違反で処分されるべきものなのだ。
椿木だけ処分となれば片手落ちというものだろう。
「異議あり。個人のプライバシーです」
副会長が立ち上がって反論する。
「ここで生徒会室でいかがわしい行為を行ったと、椿木のプライバシーを侵害してるのはまずそちらだ」
「相手は関係のない一般生徒ですよ?」
「関係者以外立ち入り禁止となっている生徒会室に入り込んだ以上、その者も風紀の処罰対象であり、それを理由にリコールを請求するのであれば確固たる証拠がなければただのいいがかりだぞ?」
噂や見たという証言だけを鵜呑みにするのは冤罪のもとだ。
複数の人物が見たというのならば別だが、生徒会室である以上目撃者は少ないだろうが、「見た」と言ってるのが今回リコールを請求している利害関係者のみなのであれば、尚更第三者をも納得する何某かの証拠がなければ、名誉棄損と逆に訴えられても仕方がない。
「そんなのおかしいだろ!三月たちが見たっていうんだから、それが証拠じゃないか!」
講堂の中から大声が響く。
見ればもじゃもじゃの頭をした蝶徳寺だ。
その周囲から同意の声があがるのは、おそらく生徒会以外の取巻き達だろう。




