表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第二話 Aランク

「――目覚めたか?」


低い声が響く。


まぶたを開いた瞬間、頭に激痛が走った。


「っ……ぁ……!」


喉が焼けるように痛い。


全身が熱い。


顔が、自分の顔じゃないみたいに重かった。


……そうだ。


手術。


麻酔なし。


途中から記憶が曖昧だ。


でも。


これで地上で追われなくて済むんだよな?


白衣の男が、無機質な手鏡を差し出してきた。


「ほら。これが今のお前の顔だ」


俺は震える手で鏡を受け取る。


さて。


Eランクの顔ってのは、どんだけ酷いんだろうな。


鏡を見る。


――数秒、理解できなかった。


「……え?」


そこに映っていたのは。


知らない男だった。


輪郭。


鼻筋。


肌。


映画俳優みたいに整った顔。


どう見ても。


イケメン。


「ば、っ……かな……」


混乱する。


意味がわからない。


いや。


それ以上に。


心臓が嫌なほど跳ねていた。


……なんで俺、ちょっと嬉しいんだ?


白衣の男が口角を上げる。


「気に入ったか?」


「ランクを落とすんじゃないのか!?」


俺は叫んだ。


「ランクを上げてどうする!?」


「“変えてやる”とは言った。下げるとは言っていない」


男は淡々と言う。


「喜べ。今のお前はAランクだ」


背筋が凍った。


Aランク。


この世界で最も狩られる側。


「ふざけんな……! これじゃ地上に出た瞬間、またイケメン狩りに遭うじゃねぇか!」


「不服か?」


「……っ」


言葉が詰まる。


不服。


……の、はずだった。


なのに。


鏡を見てしまう。


こんな顔。


人生で、一度くらいは欲しかった。


街を歩けば振り返られる顔。


誰かに選ばれる顔。


ずっと夢見ていた顔。


「…………」


感情が、ぐちゃぐちゃだった。


このままでいたい。


でも。


このままじゃ、生きられない。


白衣の男が端末を操作する。


モニターに数字が浮かび上がった。


【Cランク:1000万】

【Bランク:500万】

【Aランク:買取不可】


「……なんだこれ」


「市場価格だ」


男は当たり前みたいに言った。


「地上でBランクかCランクを連れてこい」


「……は?」


「Aランクは要らん」


男は淡々と続ける。


「500万 でEランクにしてやる」


頭が追いつかない。


「……連れてくるって、どういう意味だ」


男が笑う。


「お前もされたことだろう?」


頭の奥で、フードの男の声が蘇る。


>「助けてやる。来い」


胃がねじれる。


白衣の男はさらに続けた。


「……もしくは」


「?」


「ユートピアに行くか?」


「ユートピア……?」


白衣の男は意味深に目を細める。


「1000 万でユートピアに連れて行ってやる。ユートピアに行けばもう追われることはない」


その瞬間。


遠くで警報音が鳴った。


【Aランク個体を検知】


俺は反射的に鏡を伏せた。


白衣の男が笑う。


「安心しろ。ここはまだ地下だ」


でも。


その言葉はまるで――


“まだ地獄の入口だ”


そう言っているみたいだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ