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ジャンク小説を食む  作者: aiちゃんと僕


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5/8

承認欲求モンスター『ダンジョン配信』

 完全にやってしまった。


 明日は休みだからと、夜更かしをしすぎた。


 空はうっすらと白み始めている。



 これ以上は、生活リズムに関わる……そう分かってはいるのに、私は最も現代的で、低俗なジャンク小説に手を伸ばしてしまった。



 近年、爆発的な勢いで増殖したジャンル。


 それが『現代ダンジョン配信モノ』だ。



 彼らはもう、異世界に転生する手間すらコストカットしている。


 舞台は現代日本。

 突如出現したダンジョンに、自律型ドローンと共に、己の無双っぷりをネット生配信するのだ。



 否。

 主人公は、それすらしないことが多い。



 そう、()()()()他の人気者の配信に映り込んで、()()()()無双するのだ。


 0から1を作る努力の必要すらない「またオレ何かやっちゃいました?」の変則パターンだ。



 このジャンルの真の主役は、主人公やその強さそのものではない。


 画面の横で、恐ろしい速度で流れていくコメント欄の描写だ。


『おいなんだこの素人丸出しの奴は』

『逃げろぉぉ!死ぬぞぉぉ!』

『あぁ……もう、おしまいだあ……』


『おい嘘だろ、ボスの攻撃を素手で止めたぞ!?』

『うおおおおお! 同時視聴者数100万人突破!!!』

『世界ランク1位確定キタアアアア!!!』


 画面の向こうの有象無象のネット民(=つまり、私のような読者たち)が、手のひらを返して狂ったように大騒ぎし、高額な投げ銭を雨あられと降らせる。


 主人公を配信に映してしまったアイドル配信者は、そのまま主人公へ一目惚れし『メスの顔になってるw』とチャット欄で冷やかされる。



 そんなお祭り騒ぎの描写を、私たちはただ指を動かしながら、何万文字も延々と読み進める。




 ――まさに、動画や配信をダラダラ見ながら食べる『スナック菓子』だ。



 掲示板やチャット欄といった、ネット民にとっては実家のような安心感。


 そして『ネット民のテンプレな反応』という人工的な旨味だけで構成されている。



 小説内の『限界スパチャ配信』もどきを眺めながら、無意識に無限に食べてしまう。


 ふと気づいたら袋が空(読了)――そんな中毒性がある。




 なぜ、私たちはこんな架空のコメント欄を読んで、これほどまでに脳汁を分泌させてしまうのか。


 それはこれが、現代人が抱くドロドロに煮詰まった承認欲求の、純度の高い縮図だからだ。



 現実を生きる私たちは、何者でもない。


 SNSにどれだけ渾身の投稿をしても、つく”いいね”は片手で数えるほど。


 仕事の成果は組織の数字に埋もれ、街を歩けば数百万人の有象無象の一人として風景に溶ける。


 誰からも、リアルタイムで注目されることなど、一生かかっても起こり得ない。


 私たちの存在は、現代社会という名の砂漠の中で、乾ききっている。



 だからこそ、私たちは『架空のネット民』の狂騒を、ダイレクトに自分に流し込む。



 主人公が画面の向こうで剣を振るい、万単位の人間が「神降臨!!!」と狂喜乱舞する瞬間。


 そのコメントの羅列を網膜に焼き付けているとき、脳は完全にバグを起こしている。


 主人公に向けられているはずの、羨望と賞賛の嵐が、まるで『自身』に向けられているかのような、強烈な錯覚バズとなって脳の芯を痺れさせるのだ。



 物語を読んでいるのではない。


 他人のバズを触媒に、文字で書かれた数字と記号に、熱狂しているだけだ。




 しかし、生配信が終われば、アーカイブの向こう側は一瞬で静寂に包まれるように。


 読み終えた後、静まり返った薄暗い部屋の中で、私は独りだ。



 熱狂のあとに残されたのは、誰からも認知されず、誰のタイムラインにも載らない、ただの閲覧者リスナーの抜け殻のみ。




 休みが終わればまた、仕事以外で通知の鳴らないスマートフォンをポケットに入れ、誰からも見られない透明人間としての日常が始まる。



 流石にもう寝よう……。



 そう思っているはずなのに、なぜか私の指は『幕間:掲示板の反応』をタップしている。


 昼夜逆転は、免れなさそうだ。

※この作品はAIちゃんとの共同作品です。

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