7.商人とのデート
あたりは雑貨や屋台でいっぱいだった。
何か植物で編まれた籠や小さなアクセサリ―。子供向けなのか、小さな盾と弓など、見慣れない物がひしめき合っている。
そのうちの一つに、アクセサリー屋が見えた。エルミーヌはふと足を留める。
木彫りの模様のついた、これは髪飾りだろうか。
エルミーヌが興味を示したことに気がつき、マルケセインが声をかけた。
「気に入ったのですか?よければプレゼントしましょう」
エルミーヌは驚く。
「いえ、いいのよ!髪飾りなんて、赤毛には似合いませんし」
その瞬間、しまった、と思った。
普段父に貶されているため、とっさに自分を卑下する言葉がでてきてしまう。
いつもなら卑屈なことを言わないよう気を付けているのに、普段見れない光景を前に気が緩んでしまった。
さぞ困っているだろうと思ったところ、すぐさま予期しない返事が返ってきた。
「何をおっしゃるんですか。赤い髪はよく目立つ。商売人ならお客に覚えてもらうのにぴったりですよ!」
マルケセインは快活に笑った。
「あなたにとって価値が低いものが、他人にとってもそうとは限りません。醜い顔でも太った体でも、使いようはあります。何もかも売り込んでこそ商人ですよ。」
当然だというようなその物言いに、エルミーヌはあっけにとられ、そしてつられて笑ってしまった。
「まるで商品みたいに言うのね」
「そう考えた方が楽しいじゃないですか。
価値のない商品と思っているのなら、それをどう言いくるめて売るか。それこそが腕の見せ所です。」
あまりの言いように、またエルミーヌは笑ってしまう。
「そんな風に考えたこと、なかったわ」
ずっと髪の色がコンプレックスだと思ってきた。
だけど、彼の理論で言えば色のせいではなく、エルミーヌの口が十分に達者ではないことが問題だったといえる。
「……髪飾り、やっぱり買っていただいてもいいかしら?」
エルミーヌは今日の感動を覚えておきたいと思った。
その場で髪飾りを付けて、目的のカフェへ移動することにした。
***
到着したカフェは、予想外の豪華さだった。
店内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは、壁に飾られた優美な天使の絵画。
その精巧な筆致と柔らかな色彩は、店の雰囲気を一層格調高いものにしている。
庶民たちが貴族にあこがれ、こうした高級感のある店が人気を集めているという話はエルミーヌも耳にしていた。
しかし、ここまでの完成度には驚かされた。
(なるほど、これなら評判になるでしょうね)
二人は木目の美しいテーブルに案内された。
注文を取る店員も、落ち着きのある丁寧な接客で、店の高級感に見合ったものである。
二人は紅茶を頼み、待っている間にゆったりとした時間が流れる。




