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18.

***


「ようこそ……あら?あなた、以前にも来たことがありますか?目の下の三連星、人を狂わせる運命ですね。見たことがあるような。」


翌日フレデリカは占いの館にやってきた。

相変わらず行列だったが、不安を解消したい気持ちでいっぱいで、待ち時間は大して気にならなかった。


「はい、以前も一度見てもらいました。その時は結婚ができるか見てもらって……。今は婚約を申し込んでくれた方がいて、その人ととても順調なんです。」

「それは良かったです!今日は何を知りたいのでしょうか?」

「あの……。最近知り合った他の男性の名前が毎日聞こえるようになったのです。それは空耳なのだけど、でもなぜか名前や顔や、その人に関係するものが毎日見えたり聞こえたりするようになって……。全部見間違いや聞き間違いばかりだけれど、おかしいでしょう?これは呪いなのではないかと思って、占ってほしいのです。どうしてこんなことが起きるのかしら?」

「なるほど、それは不安ですね……。その人とはどういった関係なんですか?」

フレデリカはドキリとした。関係も何も、二度会っただけのそれだけの人だ。

「関係というのは、特にはありません。ただの知り合いですし、きっともう会うこともありません。」

「仲がいいわけではないんですね。わかりました。占ってみましょう」


占い師はカードを混ぜ始めた。さらさらとした指の動きは水面をなでるようでもある。ゆったりとした動きを見ていると眠たくなってくる。


「占いたい内容を考えながら、あなたがカードを混ぜてください。」

フレデリカは占い師の声にはっとし、カードを混ぜ始める。

(これが呪いなのかどうか知りたい、呪いなのかどうか知りたい……)

占い師がカードをまとめ、並べ始める。


過去のカード、現在のカード、未来のための対処のカード、未来のカード。

占い師は順にカードをめくると、少し顔をしかめた。

「……結果が出ました。呪いではないようだけど、その男性に一度会ったほうがいいようです。そうしないと結婚がうまくいかないかもしれない、という未来が出ています。」

「……えっ。そんな、困ります。もう彼には会う予定はないんです。」

「もう亡くなった方なの?」

「いえ、そういうわけではないのですが……。」

「住んでいる場所が遠いくらいだったら、できれば会うことをおすすめします。そうすれば、もう同じ現象も起こらないでしょう」

「……そんな……。」


せっかく公爵様との関係が良好なのに、他の異性と会って誤解を招いてはいけない。

フレデリカは気乗りしなかったが、仕方なく再度ディートリヒと会うべく準備をするしかなかった。


***

また別の問題が起きた、と手紙を送ったところ、ディートリヒは意外にもすぐに会う約束を立ててくれた。

本当に謎の解明については熱心な人なのかもしれない。

論文を書くとも言っていたし、おそらくフレデリカのことは実験対象扱いなのだろう。


ディートリヒの屋敷を訪れる途中、また天気が怪しくなってきた。

厚い雲が現れ、空が灰色になっていく。

やはりフレデリカが異性に会いに行くと、どうも天気が悪くなる気がするのだが、こればかりは解決できないらしかった。


フレデリカは慣れたものなので、念のため従者にたくさんのハンカチをもたせてある。

これで大雨に降られても安心だろう。


ディートリヒの屋敷につくと、廊下の向こうからディートリヒと誰かが歩いてくる。どうやら来客があったようだった。

「ありがとうございました、ディートリヒ様のおかげで本当に毎日楽しいです。」

「君なら主席も目指せる。怠けず学ぶように」


話している相手は少年だった。

ほつれの目立つ薄手の衣服をまとっている。貴族ではないだろう。

平民が豪華な屋敷を歩いている様子は、なんだか違和感があった。

フレデリカに気がつくと、少年は目線をうろうろさせた後、ぺこりと頭を下げ、足早に去っていった。

「ありがとうございました、ではまた!」

「ああ、また来月。」


ディートリヒは少年を見送ると、フレデリカの方を見る。

「また何か問題があったらしいな。立ち話もなんだ。こちらへ」


フレデリカは応接室に案内された。

以前とは異なり、お茶が出される。最低限のもてなしをしてくれるようになったのか、来客があったせいで準備が済んでいたためか。

何にせよ、前よりは歓迎されているような気がして嬉しくなる。


「で、何があったんだ」

「ええと……、おかげさまで公爵様からの婚約のご提案があったのです。まずはそれを報告させていただきたくて。」

「すごいじゃないか。完璧な相手だ。知性もある、彼なら妬みなどどうとでも対処できるだろう」

「ええ、そうなんです。ただ、そこで問題がありまして……。」

フレデリカは言いよどむ。『いないはずのあなたの名前や顔が何度も頭をよぎる』なんて、こんな相談内容を本人にするのはおかしいかもしれない。



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