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15.

ふと部屋の入り口を見ると、アリスミリアがこちらを見ているのに気がついた。

今到着したのかもしれない。


フレデリカと目が合うと、アリスミリアはジェスチャーで『どういうこと??』と聞いてきた。


目を真ん丸にしてこちらを見るアリスミリアの顔はかわいらしいが、フレデリカのほうが聞きたいくらいだった。


フレデリカとヴォルカニアは、趣味のことや留学先で見たものなど、とりとめのない話をしばらく交わした。そして、ヴォルカニア公爵は去り際に言った。


「名残惜しいけれど、今日はこの後に用事があるんだ。このあたりで失礼するよ。今度はぜひ屋敷に招待させてくれ。家族に紹介したいしね」


近くで耳をそばだてていた貴族たちが小さくきゃあと声をあげる。

どうやら愛人ではなく本妻として口説くつもりのようだ。


「ありがとうございます。身に余る光栄です......」

フレデリカは言葉遣いに細心の注意を払いながら、敬意を表した。

屋敷の出入り口までヴォルカニア公爵を見送り、サロンの部屋に戻る。


部屋に入った瞬間、フレデリカはアリスミリア含め貴族たちに囲まれた。

「どういうことなの!?知り合い??」

「驚いた。あんなお方のそばにいて、気が気じゃなかったよ」

「彼、あなたを口説くつもりよね!?公爵夫人なんてとんでもないことよ!」


「気が早いわ、まだ何もわからないから……。」


周りは盛り上がっているが、フレデリカむしろなぜ急にこんなお声がかかるのか不気味なくらいだった。

話している間はずっと気を遣っていて疲れ果てた。


そして後日、公爵は本当に屋敷に招待してくれた。

改めてのあいさつとして、手紙が届いたのだった。その場の口約束だと思っていたが、まさか正式なお誘いだったとは。


しかし、公爵様の屋敷へ行くというのはあまりに大きな意味を持ちすぎる。

うっかり無礼があれば処刑されかねない。

まずは何度かフレデリカの屋敷に来てほしい、ということを手紙で伝えた。


屋敷に招いたからには、両親にも伝えなければならない。フレデリカはするすると進んでいく話に、これは現実なのかと疑わしいほどだった。


「公爵様がうちに来る!?」

「冗談ではなくて?公爵様のお言葉を何か聞き間違えたのではないの?フレデリカ、よく思い出して!」


当然のごとく、両親も動揺しきっていた。

屋敷に来たい、という公爵様からの手紙の内容を見せる。

フレデリカ自身も信じられない気持ちだったので、両親に確かめてもらえるほうがかえって安心だった。


両親は何度も手紙を読み返していた。

「間違いない、本当にいらっしゃるようだぞ……」

「家中をピカピカにしなくちゃ!フレデリカ、新しいドレスを仕立てましょ!」

「ずっと呪いだの破滅だの言われていたが、ようやくフレデリカにも幸運が巡ってきたんだなあ」


それからはあっという間だった。屋敷中がばたばたと騒がしく、公爵様を迎えるのに必死になっていた。


公爵様が訪れる当日、フレデリカの屋敷はこれまでにない完璧な清掃が行われ、あらゆる部屋にバラの花が飾られた。


「こんにちは。今日も君は麗しいね、フレデリカ」

「ごきげんよう公爵様、ようこそいらっしゃいました。」

「そんなにかしこまらないでくれ。ご家族へのご挨拶と、君とゆっくり話がしたいだけなんだ」


訪れた公爵様は、応接室に案内された。

フレデリカは今日のために仕立てたとっておきのドレスを身にまとい、発光するような美しさだ。


「これを君に。ささやかなものだけどプレゼントだよ」

「恐れ多いですわ、ありがとうございます……!」

公爵は花束と布で包まれた何かを手渡した。布の中には、時計が入っている。


ささやかなんてとんでもない。時計には文字盤の周りに宝石がはめ込んである。おそらく屋敷の部屋を増設できるような値段に違いないだろう。


出会ってまだ2回目で、こんな大層なものを受け取る常識をフレデリカは持ち合わせていない。とっさに「受け取れない」と突き返してしまいそうだったが、ぐっとこらえた。

贈り物を返されるのは、貴族の恥だ。絶対にあってはならない。


「素敵。ありがとうございます、両親も喜びます。」

「今回はほんの挨拶だけどね。ほしいものがあれば何でも言ってくれ。いくらでも用意させよう。」


「この時計には魔除けの効果があると言われていてね。君は巷では不思議な力があると言われているとか。」

「ご存じなのですね、お恥ずかしながら、そばにいると男性たちに不幸が訪れると言われております……。」

「酷い男たちだね。君を守れない男たちの腹いせだろう。ぼくは不遇な運命からも、君を守りたいんだ。」

「公爵様……。」

「知っているかもしれないが僕はまだ独身でね。率直に言えば、君を妻に迎えたいと思っている。

もちろん、まだすぐには決めなくていい。これからゆっくり仲を深めたいと思っているんだ。

だけど、これまでの男のように僕に不幸が起きるかもしれないという心配はしなくていい。それ以外で心配ごとがなければ、ぜひ前向きに検討してほしい」


「もったいないお言葉です。ありがとうございます。両親も私も、突然の身に余るお申し出に驚いておりまして……」

「もちろんそうだろうね。ご家族でもゆっくり話し合ってくれ。この後時間があれば、ご両親にもご挨拶をしたいんだが……」

「ええ、もちろんです。夕食をご一緒になってください。」



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