11.
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そこから1ヶ月間、フレデリカは侍女ではなく男の従者をつれて出かけ、呪いが起きないかをひたすら試した。
頭にはつばの長い黒いボンネット、口元はハンカチで隠し、服装は体型が出ないよう黒いローブを羽織ることにした。遠目から見れば魔女のようだろう。
以前やけどをしかけた露店、泥をかぶった通り、不幸な思い出のある場所を従者とともに一通り歩きまわってみた。
視界の悪いボンネットのせいで何度かつまづきかけたが、不幸といえるのはその程度だった。おおむね無事に、誰も怪我一つなく外出を終えることができたのだ。外見を隠す限り、1ヶ月の間はずっとそうだった。
(すごい!すごい!!)
フレデリカは、異性と外出をして、何も問題が起きないのは久しぶりだった。
いつも今日はどんな迷惑をかけるか、命の心配はないかと不安に駆られながらのデートばかりだった。
まさか本当に、目立つ外見によるものだったとは。
まったく予想もしなかった方法での解決に、これは自分では気が付けなかっただろうと考える。
「フレデリカ様、最近ごきげんですね!」
マーガレットが言った。
「ええ、従者と出かけても、何も事故がおきなかったの!奇跡よ!」
「おめでとうございます~。フレデリカ様が喜んでいると、わたしもうれしいです!」
「しかしフレデリカ様、こういった場合は、何人か別の相手とも試した方がよいですよ。」
「そうかしら?」
「ええ、従者はあくまで従者ですし、これまでのように結婚を見据えた関係ではありませんから。それに、結婚相手とのデートでは、真っ黒のお洋服で出かけるわけにはいかないでしょう。」
そう、それが問題なのだ。
全身を覆う衣服では問題が起きない、というのも大きな一歩なのだが、これではデートの服装としてはお粗末すぎる。さすがに魔女のような格好で会い続けてくれる男性はそういないだろう。
「そうだ、せっかくだし、ディートリヒ様でも試させてもらおうかしら。おかしな格好をしている説明もいらないし、結果に興味がありそうだったから、協力してくれるかも。」
「いいですね!」
「あいさつもそこそこに追い出されましたし、断られる可能性のほうが高いのでは?」
「まあ、そうだけど……。彼が一番誘いやすいわ。」
フレデリカはディートリヒに手紙を書いた。
『ディートリヒ様、以前はご意見をいただきありがとうございました。
全身を見えないようにして出かけたところ、呪いが起きなくなりました!けれど、誰が相手でも有効か確認したいので、外出に付き合っていただけませんか?』
返事は意外にもすぐに届いた。
『おもしろそうだ。いいだろう。』
心配に反して、存外乗り気なようだ。
フレデリカは黒ずくめの異様なかっこうで、ディートリヒの屋敷に向かった。
出迎えたディートリヒの従者は、フレデリカの姿を見て引きつった笑みを浮かべた。
それも仕方ないだろう。フレデリカは目元まで隠れるフードをかぶり、口元はあて布、全身を包むようなローブをまとっている。
魔女か黒魔術師としか思えない服装だ。しかも、空は雲り、ごろごろと遠くで雷が鳴っている。怪しい外見がより怪しく見える。
やはりフレデリカがデートに向かおうとすると天気が崩れる。こればかりは、服装ではどうにもならないようだった。
「ディートリヒ様、お久しぶりです。以前はありがとうございました。」
「来たか。いいじゃないか、完璧な衣服だ。」
従者と違って、ディートリヒはフレデリカの姿を見ても少しも動じなかった。
「馬車を準備してある。さっそく出かけよう」
外に出ると、ディートリヒは馬車にのりこむ前、自ら車輪を点検し、ドアの開閉を確認し、馬の状態を確かめた。特におかしな細工はされていないようだ。
長い長い屋敷への道を、また引き返して出かけていく。
馬車の中にはフレデリカ、ディートリヒ、ルチルとディートリヒの従者が乗り込んだ。
「本当にこんなことで、呪いが起きなくなるとは思いませんでした。教えていただいてありがとうございます。」
「変化があったようで何よりだ。馬車のドアが外れる、泥をかぶる、火傷をする、他に発生した事故はあるか?」
「私の知っているのはそれくらいです。他には婚約者が一人になった後もいろいろと問題が起きたようですが、詳しくは知りません。」
「そうか。馬車に関しては先ほど入念に状態を確認した。事前に細工はされていないようだったが、これでも何か起きるようだったら対策を考えなければならない。」




