8.
部屋はキャンドルの明かりのみで薄暗い。その中で一人、女性が座っていた。
口元と頭を隠すベールを付け、目元だけが見える。
女性は手を差し出し、手の動きだけで座るよう促した。
「ようこそいらっしゃいませ。お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「フレ……、フレドールです。」
とっさにフレデリカは嘘の名前を教えた。名前が正しくないと、ただしい結果がでないだろうか?占い師の声は若い。やはり元婚約者の言っていた聖女の可能性がさらに高くなる。
「フレドールね。今日は何について占いましょうか?」
「私がこの先結婚できるかどうか、占っていただけますか?」
フレデリカは最初、呪いが解けるかどうかを占うつもりだった。しかし、占い師が元婚約者とつながりがあるとなると、この相談は身元がばれるかもしれない。
そのため、呪いの次に気になっていることを占ってもらうことにしたのだ。
「結婚についてですね。ではタロットを使いましょう」
占い師はカードを取り出し、机に広げると、ぐるぐると混ぜた後にまとめ始めた。
キャンドルの揺れる明かりの中でその指の動きは幻想的で、眠たくなるような、心地いいような感覚をおぼえる。
「同じように、フレドールもカードをまぜてください。心の中に質問内容を思い浮かべながらやってね」
「こうですか……?」
フレデリカはみよう見まねでカードを混ぜ始めた。ぼんやりとみていたので、やり方があっているかわからない。
「上手ですよ。それでは、カードをまとめてください。」
ばらばらになったカードをまとめると、占い師がそのカードを受け取り、4枚のカードを並べた。左のカードを開ける。
「この位置のカードは過去を表しています。戦車の逆位置ね。過去に恋愛で挫折したことがあると示唆されているわ。結婚し損ねたのでしょうか……」
フレデリカはどきりとした。そこまでわかってしまうのか。
「次にこの位置のカードは現在を表します。運命の輪の正位置です。すでにとてもいい出会いを果たしているようですよ。何か環境の変化があったのかしら。結婚に向けて何か試しているとか……もしそうなら、良い判断です。」
「次にこれが、未来のための対策ね。隠者の正位置、研究者や知恵が助けになってくれそうです。もう良い変化が起きているのにこのカードがでるということは、結婚に向けて何か障害があるのかしら。これから心配事や相談があったら、誰かの知恵を借りるといいかもしれません。」
「最後に結果のカードは……、おめでとうございます。成功すると出ています。結婚は叶うでしょう。それも遠くない未来だと思いますよ。」
過去も現在もあまりにも言い当てられ、フレデリカはぞっとするほどだった。この人は本物かもしれない。これだけ当たっているのだ。結婚ができる未来も本当に当たるかもしれない。
「……すごい。全部当たっています。いったいどうして……?」
占い師はにこりと笑った。
「長くやっていますから。私、占いを通してたくさんの人に会ってきました。その経験からなのですが……あなた、人を狂わせる人相をしているわ。これまで苦労が多かったんじゃない?」
人相。そんなものもあるのかとフレデリカは思った。
「なんでもお見通しなのですね。本当にその通りです。私、これまでずっと運が悪いことばかりだったんです。」
「たまにそういう、不運な星の下の方がいるのですよ。また困ったら占いに来てください。きっと何かの役に立ちます。」
フレデリカは大満足で占いを後にした。結婚ができる可能性を感じ、未来に希望が持てる。




