7.
「奥の占いの間には1人ずつお入りください。」
「じゃあ私からいってくるね!」
まずは提案したアリスミリアが先に入ることになった。
順番は馬車の中で待っている間に決めたのだが、その間アランジェールと二人になってしまうことを失念していた。下手に仲良くなってしまうと、今後話しかけられた時が怖い。
「これは何に使うんだろうね?」
フレデリカの心配をよそに、アランジェールは不思議な道具を手に取り、話しかけてきた。
「全く予想がつかないわ。だけどきれいね」
「そちらはペンデュラムです。なくしものを探す時や、相性を確認するために利用します。」
店のスタッフらしき人が説明してくれた。
「目的によって使う道具が違うんだね」
「ええ。当館の主は以前はセントリアに住み、幸運の聖女と呼ばれたお方です。主は人々の苦悩を取り除くため、様々な占いの手法を学ばれてきました。目的によって占いの方法も使い分けているのです。」
(幸運の聖女?)
なんだか聞いたことのある単語だ。フレデリカは嫌な予感がした。
「……セントリア。このあたりに来たのは最近なのですか?」
「はい。その才能を貴族様に買われまして。去年こちらへ引っ越してきたのです。」
(間違いない気がする。)
2年前破談になったザイオンの新しい婚約者ではないだろうか。
こんなところで占いをしているとなると、まだ結婚まではしていないのかもしれない。
なんにせよ、さすがに気まずい。どんな顔をして会えばいいかわからない。
フレデリカは急に胃が痛くなってきた。
こんな偶然があるだろうか?やはりフレデリカは呪われているのかもしれない。
アランジェールがのんきに店員と話している間、フレデリカは内心冷や汗をかいていた。
しかし幸いなことは、館の主側はフレデリカが元婚約者であることを知らないことだ。
こちらが無反応をきめこめばばれないはずである。
うっかりフレデリカの身元がばれないよう、話す内容は細心の注意をしなければならない。占いを楽しみにしてきたのに、何だか余計な心配をしなくてはならなくなった。フレデリカはアリスミリアの提案に乗ったことを後悔していた。
そんな時間を過ごしていると、アリスミリアが占いを終えて戻ってきた。
「たのしかったー!ねえ聞いてよ、本当にすごく当たったの!」
「身長は伸びるって?」
「肉と野菜をバランスよく食べると幸運があると言われたわ。」
「それはたぶん占いじゃないね」
「他のお客様もお待ちですので、次の方はすぐにお入りください。」
「やだ、すみません。」
「あの、アランジェール、わたしが先に入ってもいいかしら?」
「?いいよ、どうぞ」
アランジェールは珍しく積極的なフレデリカを不思議に思った様子だったが、快く順番を譲ってくれた。
このまま順番待ちをし続けていたら、胃がもたない。心配なことは急いで終わらせてしまいたかったのだった。
フレデリカはベルベットのカーテンを抜け、占い師のいる薄暗い部屋に入っていった。




