4.
出迎えてくれたその人は、とにかく背が高いことが目についた。
いや、身長だけではない。体の厚みも、常人より何倍も大きかった。
声からして、女性であることは間違いないだろう。
ほとんどが筋肉で構成されていそうなその肉体は、のどかな風景と不釣り合いだ。上品な正装をまとってはいるが、鎧を付けた歴戦の騎士を連想させた。
「わあー、大きい方ですね!」
「こらマーガレット、静かになさい」
言いたくなる気持ちもわからなくはない。フレデリカもその女性を凝視してしまう。
「フレデリカ様ですね。グレシアナと申します。どうぞこちらへ」
案内され近くに立つと、やはり威圧感がある。
「彼女がもし暗殺者なら、勝てないかもしれません。何かあればすぐに馬車に戻って逃げてください」
ルチルがフレデリカにささやく。ルチルは身の安全を心配しているようだった。
確かに3人程度では太刀打ちできないかもしれない。
フレデリカたちはグレシアナを警戒し、少し距離を取りながら後をついていった。
「どうぞおかけください!」
グレシアナは一組のソファーの向かい側に腰掛けると、フレデリカを座るよう促した。
「遠かったですか?道中危険はありませんでした?」
「ええ、大丈夫です。」
「それはよかった。お手紙でお聞きしましたが、男性と婚約をすると相手が不運に見舞われるとか。ずいぶん不思議な体験をされているのですねえ。」
「ええ、そうなんです……。おかけで社交界では不名誉なあだ名が付けられてしまって。運の悪さなど気にしない、屈強な男性や強運な方を紹介してほしいのです。」
「なるほど、苦労されましたね。せっかく相談所を訪れていただいたからには、その決断が正しかったと思えるよう尽力させていただきます。
素敵な相手と出会えるよう、お手伝いさせていただきますので!」
グレシアナの声音は力強いものがあった。
暗殺者ではないか気を張っていたが、その心配はなさそうだ。
「これから相談所のシステムについて説明をさせていただきますが……何か質問したいことがあれば先にお聞きしましょうか?」
「いえ、大丈夫です。教えてください。」
グレシアナはいつもの通り、相談所について説明を始めた。
要するに、お金を払って異性を紹介してもらう場所、ということだった。
「希望をいただいていた、幸運な方と屈強な方、どちらもこころあたりがあります。ただ、そのお相手とうまくいくとは限りません。
相談所でできるのはあくまで紹介と、恋愛の相談です。お相手のお気持ちもありますから、婚約とならなければ他のお相手を探していただくことになります。」
「ええ、大丈夫です。」
フレデリカはグレシアナの慣れた説明と、自信にあふれた言葉に惹かれていた。
「ぜひ登録させてください。」
こうして「破滅を招くフレデリカ」はグレシアナの結婚相談所に世話になることになった。




