4.
アランジェールはユルディア家繁栄のため、形だけでも結婚をせねばならないが、相手にあてがないのだった。
男からは尊敬と嫉妬の視線を受けることはあっても、レディとして扱われることはまずない。
「『憧れのアラン様』は今日もモテモテでうらやましいですなあ」
「彼女がいると僕たちは空気のような扱いですよ」
こんな風に揶揄されることはあっても、女性としてアプローチを受けることはないのだ。
(いっそ同じように、誰でもいいからとにかく結婚したい令息を見つけられないだろうか?)
考えることが面倒になったアランジェールは、投げやりになり始めた。
楽な方に流されていくのは、彼女の悪いクセだ。
「アランジェール様!皆さん屋敷に来てくださるそうなので、ぜひ今度『みんなで』遊びに来てくださいまし!」
愛人の提案を断るつもりで適当に言った言葉だったが、どうやら本当に友人たちで令嬢の家に行くことになったらしい。
「いいね、最近おろしたドレスでうかがうよ」
きゃあ、と小さな歓声とともに、周りの令嬢たちが色めき立つ。
恋愛感情ではないものの、女性たちはかわいいと思う。
庭の木に集まるコマドリを見ているようだ。自分の言動に頬を染めて喜んでくれればうれしいし、自分のためにおしゃれをしてくれることも健気だ。
(彼女たちから結婚相手を選べたら楽なのになあ。)
向いていることと好きなことは違うのだ。
アランジェールは人生の難しさを感じながら、令嬢たちとの一時の会話を楽しむことに気を向けた。
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令嬢たちの人気を集めるアランジェールには、途切れることなく手紙が届く。
メルネル嬢からの手紙はいつも愛用の香水をふりかけてあるため、読みながら顔が思い浮かぶし、サルヴァネート嬢からの手紙は超長文で文才を感じる。
みんなそれぞれ個性があり、いつもアランジェールは手紙を読むのを楽しんでいた。
いつも通りアランジェールが手紙のチェックをしていると、見慣れない送り主からのものがまぎれていた。
宛先はアランジェールで間違いないが、その名前はどう見ても男性のものだった。
(誰だろうか?)
不思議に思いながら手紙を開く。
はじめからゆっくりと目を通し、中盤に差し掛かったとき、アランジェールは目を疑った。
同じ行を繰り返し読み、一旦最後まで目を通す。
改めて同じ行を読み返し、見間違いではないかと冒頭から読み返す。
勘違いではない。その手紙は、どう見ても異性、男性からの求愛の手紙だった。
内容はこのようなものだった。
『はじめまして、アランジェール嬢。正確に言うとはじめましてではないのですが、ほとんどあったことがない中、突然の手紙をすみません。
あなたの婚約が白紙になったと聞きました。
あなたにとってはきっと予定外のトラブルでしょうが、僕にとっては神様がくれたチャンスだと思ったのです。
僕は将来、あなたに婚約を申し込みたい。ぜひ婚約を見据えて、僕のことを知ってほしいのです。
私は北方に住むユノヴァン・セレスティアと申します。
以前一度だけ乗馬の会に参加し、あなたに会ったことがあります。
その時からずっと君のことを想っています。
もし少しでも興味がわいたら、手紙に返事を返してほしい。……』
はっきりと『婚約』と書いてある。見間違いかと思ったが、まぎれもなく求婚の手紙と言えるだろう。
たくさんのリアクションありがとうございます!テンションが上がっております♪♪♪大感謝です♪
誤字報告ありがとうございます!しばらく確認できないので、来月以降反映させます!




