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2.みんなのアラン様

***


数日後。

サロンはいつになく騒がしかった。


「ねえ、聞いた? アランジェール様が婚約破棄になったそうよ!」


「本当!? アラン様が?」


「やった、チャンスが来たわ!信じられない!!」


笑い声とひそひそ話が咲き乱れる。

話題の中心にいるのは、麗しき令嬢、アランジェール・ユルディアだ。


「かっこよすぎるのよね、アランジェール様って」


「分かるわ。アランジェール様に会った後だと、夫の顔を見るのが憂鬱。」


「男の人より素敵ってどうなっているの!?」


アランジェールは困っている令嬢がいればすぐさま手を差し伸べる。剣術も乗馬もたしなみ、礼儀作法も完璧。


背筋をまっすぐ伸ばして歩く姿の凛々しさは、まるで剣を携えた騎士のよう。


その姿に憧れる女性は多く、恋文を送られることが多々あった。


今日もまたアランジェールの周囲には、いつものように色とりどりのドレスを纏った令嬢たちが、蝶のように群がっていた。


アランジェールの前にはスコーンなど、山のような軽食が置いてある。


「わたしのものも食べて!」

「ずるいわ、ぜひ私のも!」


令嬢たちが自分の食事までアランジェールに差し出しているのだ。


「ありがとう、とてもおいしいよ」


「アランジェール様、今日もなんてお美しい……! その鋭い瞳に見つめられると、私、言葉を忘れてしまいそう!」


婚約破棄という致命的なはずの失態を犯してもなお、アランジェールの求心力は衰えない。

むしろ悲劇の貴公子として女性たちをさらに惹きつけていた。


「アランジェール様。婚約破棄にあったと聞きましたが、お気になさらないでくださいね。私たちはみんな、あなたの味方よ!」


「励ましのお言葉、感謝いたします。ですが私はこの通り、至って健在ですよ」


アランジェールを励ます声が次々と飛ぶ。そのどれもが彼女から好かれたいという下心も含んでいた。

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