2.みんなのアラン様
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数日後。
サロンはいつになく騒がしかった。
「ねえ、聞いた? アランジェール様が婚約破棄になったそうよ!」
「本当!? アラン様が?」
「やった、チャンスが来たわ!信じられない!!」
笑い声とひそひそ話が咲き乱れる。
話題の中心にいるのは、麗しき令嬢、アランジェール・ユルディアだ。
「かっこよすぎるのよね、アランジェール様って」
「分かるわ。アランジェール様に会った後だと、夫の顔を見るのが憂鬱。」
「男の人より素敵ってどうなっているの!?」
アランジェールは困っている令嬢がいればすぐさま手を差し伸べる。剣術も乗馬もたしなみ、礼儀作法も完璧。
背筋をまっすぐ伸ばして歩く姿の凛々しさは、まるで剣を携えた騎士のよう。
その姿に憧れる女性は多く、恋文を送られることが多々あった。
今日もまたアランジェールの周囲には、いつものように色とりどりのドレスを纏った令嬢たちが、蝶のように群がっていた。
アランジェールの前にはスコーンなど、山のような軽食が置いてある。
「わたしのものも食べて!」
「ずるいわ、ぜひ私のも!」
令嬢たちが自分の食事までアランジェールに差し出しているのだ。
「ありがとう、とてもおいしいよ」
「アランジェール様、今日もなんてお美しい……! その鋭い瞳に見つめられると、私、言葉を忘れてしまいそう!」
婚約破棄という致命的なはずの失態を犯してもなお、アランジェールの求心力は衰えない。
むしろ悲劇の貴公子として女性たちをさらに惹きつけていた。
「アランジェール様。婚約破棄にあったと聞きましたが、お気になさらないでくださいね。私たちはみんな、あなたの味方よ!」
「励ましのお言葉、感謝いたします。ですが私はこの通り、至って健在ですよ」
アランジェールを励ます声が次々と飛ぶ。そのどれもが彼女から好かれたいという下心も含んでいた。




