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1.イケメン令嬢アランジェール

「アランジェール、君には僕は必要ないと思う。それに女性として見れないんだ。自分より男らしい人と結婚は考えられない。婚約を破棄しよう。」


周囲はさざめきが響いている。それでも、男の声はしっかりとアランジェールの耳に届いた。


いつか言われるだろうと、予想していた言葉だったからかもしれない。


美しい螺旋を描く階段、まぶしいほど輝くシャンデリア。

アランジェールは舞踏会の景色の中にいる。


目の前には自分より少しばかり背丈の低い、こぎれいな衣服をまとった男と、それに絡みつくように抱き着く女。


「ごめんねぇ、アランジェール様。彼は私を選んだみたぁい」


甘えるような声とともに、女は婚約者だった男、サペルミウスの腕を引いた。


男はアランジェールの婚約者だった。

そう、今の瞬間までは婚約者だったはずの男だ。


腕にべったりと絡みついている女は見知らぬ顔だった。

柔らかそうな体に、大きく胸元の開いた女性らしいドレス。


私とは真逆だ、とアランジェールは思う。


ヒールを履いているに違いないのに、彼女はアランジェールよりも頭1つ以上背が低い。


勝ち誇ったように見つめてくるその顔は、意地の悪い目つきではあるものの、愛らしさすら感じる。


「そうか。私より、君のほうがよほどお似合いだよ。身長の釣り合いも取れているしね。」


アランジェールは単に思ったままを言っただけだった。


サペルミウスは身長の低さを気にし続けていた男だった。もし背の低い女性と並んでいれば自信が持てるのならば、それもいいのではないかと、アランジェールは本当に思ったのだ。


しかし男は、その言葉を嫌味と受け取ったようだ。


「こんな時まで可愛げがないとはね。さすがは『みんなのアラン様』だ。」


背の高いアランジェールに対し、背の低い二人が見上げながら啖呵を切る様子は、少し滑稽だ。


その自覚があるのか、サペルミウスと女は、捨て台詞を吐いた後、逃げるようにアランジェールの元を去っていった。


様子を見ていたどこかの令嬢が、背後からおずおずとアランジェールのそばに来る。


「あの、アランジェール様......?大丈夫ですか?」


アランジェールはなんだか疲れてしまった。ふぅ、と1つため息をつく。


その姿は憂いを帯び、独特な色香をまとっている。見つめていた令嬢の頬が赤くなる。


アランジェールは急いで気持ちを切り替え、令嬢に微笑んだ。


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