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3.結婚相談所の主


手紙を送ったあとの数日間、エルミーヌは落ち着かない日々を過ごした。



「もし彼女が相談所を知らなかったらどうしよう?」

「こんな突然の手紙は、ベルヴィル様にとって奇妙に思われるだろうか?」

――そんな考えが次々と頭をよぎり、手紙の返事を待つ時間が、まるで永遠に続くかのように感じられた。



もし情報が得られなければ、他の令嬢たちにも手紙を出すしかない。その準備はしていたが、やはり不安は消えなかった。



そして、ようやく心の中のざわめきが落ち着き始めたころ、ベルヴィルからの返事が届いた。エルミーヌは、緊張と期待で胸が高鳴った。



手紙を開けると、幸運にもベルヴィルは相談所を利用していたことが分かったのだ。



彼女の優しい言葉と共感に満ちた返答に、エルミーヌは感動を覚えた。

一人目の相手からこのような有益な情報を得られるなんて、運が良すぎるくらいだ。内容はこのようなものだった。



『親愛なるエルミーヌ。不躾な連絡なんてとんでもない。



私が婚約を破棄された時、あなたがすぐに励ましの手紙を送ってくださったことは、今でも心から感謝しています。



同じ苦しみを味わった者として、あなたがどれほど悔しく、辛い思いをされているか、痛いほどわかります。



私にできることがあれば、何でもお手伝いしましょう。結婚相談所の話を耳にしたとのことですが、実を言うと、私もその利用者です。…』



ベルヴィルは相談所についての詳細な連絡先と、利用する際の注意点まで、驚くほど丁寧に書き添えてくれていた。



心からの配慮が感じられ、エルミーヌは改めて彼女に手紙を出して良かったと思った。



婚約破棄という苦しい経験の後、エルミーヌは人々の優しさに一層敏感になっていた。



傷ついたことで、かえって周囲の温かさに気づけるようになったのかもしれない。

世界は悲しみだけではなく、こうした思いやりや助け合いもあるのだ――彼女はそう感じていた。



ベルヴィルから教えてもらった相談所の宛先に手紙を送り、いよいよエルミーヌはその相談所を訪れる決意を固めた。


***


指定された住所に向かうと、目の前には、一軒の小さな花屋が静かに佇んでいた。



エルミーヌと従者は馬車から降り、その花屋へと足を運ぶ。



(どう見ても花屋だけれど……)



エルミーヌは場所を間違えたかと心配になる。



その花屋は、どこにでもあるような、ありふれたもののように見える。外壁はレンガ造りで、看板は出ていないようだ。



店内には花よりも植物が多い。森の中のような、澄んだ空気とさわやかな木々の香りが漂っていた。



あたりを見回すと、草花に隠れるようにカウンターがあった。



カウンターの向こう側に座っていた女性が、こちらに気がついて笑顔を向ける。



「いらっしゃいませ」



エルミーヌが静かに一礼し、事前に送られてきた手紙を彼女に手渡す。女性は手紙の内容を確認し、立ち上がった。



「エルミーヌ様ですね!お待ちしていました。」



彼女の全身を見て、エルミーヌは目を丸くした。



これまで見たことがないほど、背が高い。

いや、身長のみではない。

盛り上がった筋肉は服の上からでもわかるほどたくましく、全身がとにかく大きい。



男でも見たことがないほどの大きさだ。

おそらく貴族付きの騎士と戦っても勝てるだろう。



顔と声からして女性だと思うが、思わずまじまじと見つめてしまった。



「相談所所長のグレシアナです!本日はどうぞよろしくお願いします。」



大きな女性はこちらの不躾な視線にも動じず、はじけるような笑顔を見せた。



エルミーヌは自分の失礼な態度にハッとし、急いであいさつを返した。



「連絡させていただいたエルミーヌです。よろしくお願いいたします。」



「お会いできるのを楽しみにしていました。奥へどうぞ」



エルミーヌはグレシアナに案内されるまま、従者と共に店の奥へと進んでいった。



外側からは見えなかったが、思ったよりも広い造りをしているのかもしれない。



狭い通路を抜けると、木製の扉が彼女の前に現れた。



扉を開くと、入り口そばにソファが置いてあるのが目に入る。



「どうぞおかけください」



促された通りソファにかけると、そのソファがなかなかの高級品であることがうかがえた。



エルミーヌに続いてグレシアナもソファに座るが、やはりその体の大きさが目立った。



彼女がもし背もたれに身を任せれば、そのまま後ろに倒れてしまいそうだ。合うサイズのソファがないのだろう。



部屋を見渡すと、そこは書斎と応接室が組み合わされたような場所だった。



2組のソファが向かい合わせになっており、その間には長机が置いてある。



奥の壁には大きな本棚があり、本が一面に詰まっている。部屋の隅には作業机が置いてある。執務用の机だろう。



花屋の隣だからか、森の中のようなさわやかな香りがする。



本は庶民では買えないほどの高級品だと聞いたことがあるが、ずいぶんな数の本だ。そんなに裕福な暮らしをしているのだろうか。



「場所はすぐにわかりましたか?」

グレシアナが声をかけた。



「ええ、到着まではすぐに。お花屋さんかとは思ってしまったけれど」



「皆さんそうおっしゃるんです。説明しておくべきでしたね。」



グレシアナは困ったような表情を向けた。




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