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2.結婚相談所ってなに?



エルミーヌは、驚きながらも話の輪に加わった。



「結婚相談所…?なあにそれ?」



彼女は訝しげに眉をひそめる。

結婚相談所という言葉は怪しげな響きを持ち、貴族社会にはあまり馴染みのないものだったからだ。



「なんでも専門家が、自分に合った結婚相手を紹介してくれる場所だって聞いたわ。

庶民の間で話題になっているらしいのだけれど、最近だと貴族が使うこともあるらしいの」



相手を紹介してくれる、という制度に、エルミーヌは怪訝な顔をする。



結婚とは、家同士の結びつきであり、上流階級の人間にとっては家を繁栄させるための契約のようなものだった。



そんな重大な決断を、親族でもない見知らぬ他人に任せるなど常識では考えられない。



「不思議な場所があるものね。まあ私達には関係ないでしょうけど」

エルミーヌはさして興味をもたず、ぼんやりと話を聞いていた。



しかし、エルミーヌの興味とはうらはらに、相談所の噂はその後も何度か彼女の耳に届いた。



意外にも利用者が多いのか、それとも同じ話に尾ひれがついてめぐっているのか、エルミーヌにはわからない。



とにもかくにも、今注目の話題らしかった。



相談所という響きにも慣れてきたころ、特にエルミーヌの心を揺さぶる話が聞こえてきた。



「ねえ、ベルヴィル様ってご存じ?最近元気そうだと思ったら、彼女も結婚相談所を利用したのかもしれないって聞いたわ。もしかしたら、いい人ができたのかも。」



「本当!よかったわ。彼女、ずっと落ち込んでいたものねえ」



エルミーヌは驚いた。

ベルヴィルといえば、婚約者から「君のような女を連れているとみじめな気持ちになる」とひどい言葉を浴びせられて破談になった婦人だ。



確かにベルヴィルは際立って美しい容姿ではなかったが、けなされるほどの外見では決してなかった。



しかし、彼女はその言葉で深く傷つき、周囲の目が気になってしばらく人前に出ることもできなかったと聞いている。



その婚約者の言動に対しては、貴族の女性たちの間でも「なんてひどい男だ」とベルヴィル様を擁護する声が多かったが、当のベルヴィル様にとっては何の慰めにもならなかっただろう。



彼女の受けた心の傷は深かったに違いないと、エルミーヌは思う。



(……そんなベルヴィル様が立ち直るきっかけになったなんて!)



エルミーヌの心の中で、「結婚相談所」というものへの興味が湧き上がってくる。



もちろん、婚約破棄の話を他人に打ち明け、今よりもさらに自分の名前が知られることは気が進まない。

それに、そんな怪しげな機関を訪れることは自分の品位にも関わると思った。



だが、正直に言えば、まだ失望と孤独の中にある今の自分にとって、少しでも暇を潰す手段になるのなら幸いだ。

しかも、貴族の利用者がすでにいるというのも背中を押される。



(……一度、調べてみてもいいかもしれないわね。)



エルミーヌはようやくその機関への興味がわくのを感じた。



***



それから、エルミーヌは慎重に結婚相談所についての調査を始めた。



噂にすぎない情報ばかりで、実際のところがよく分からなかった。



そのためエルミーヌは思い切って、相談所を利用したと噂されている貴族に手紙を書き、その真偽を確かめることにしたのだ。



最初に手紙を送る相手は慎重に選んだ。結果、エルミーヌはベルヴィルに手紙を送ることにした。



ベルヴィルは、今回のエルミーヌの婚約破棄の話について、落ち込んでいないか手紙を送って来てくれていたのだ。



その時は心配してくれたことに対する感謝を伝えて終わってしまったが、改めて手紙を送っても良いだろう。



婚約破棄をされた同志であるということも、エルミーヌの決断を後押しした。


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