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7.見逃して


いつもは昼過ぎてから到着していたのだが、今日はグレシアナに会えることが待ちきれず、早く着いてしまったのだ。



「ちょうどよかった。これからイノシシをもらいにいくところなのです。一緒にいらっしゃいますか?」


「ええ!?行きたい!いいの?」


「ええ、ぜひぜひ!罠にかかったイノシシを分けていただけるそうなので、新鮮なものが食べられますよ!」


「ロディお願い、見逃して!!」


アリスミリアの食事は両親によって厳格に制限されている。


毒などが混入されれば問題であるし、おかしなものをアリスミリアに食べさせるわけにはいかないからだ。



もし両親がこの場にいれば、大切な一人娘にそこらの田舎で捕れたイノシシなど食べさせるわけもない。



しかしアリスミリアはもうイノシシ肉に興味しんしんである。


頑固なアリスミリアを説得するのは至難の業だろう。


「……ひとくち、ひとくちですよ!!私も毒見をしますからね。」

「やったー!」


グレシアナに連れられ、2人はイノシシの元へ向かった。



荷車を持っているからにはそう遠くないだろうと思ったが、その場所は相談所から30分ほど歩いたところにあった。


「おおー、グレシアナ。よく来てくれたね」

「こんにちはおばちゃん、イノシシどこにいる?」

「裏にいるよ。悪いねえうちのじゃ捌けなくてさ」


どうやらこのご家族の家の罠にかかったらしい。


家の裏に回ると、イノシシが倒れていた。縄に金属が付いたような器具があり、イノシシの足がくくられている。



「よし、始めましょう」


グレシアナはおばさんの家の火を借りて持ってきたナイフをあぶると、イノシシの位置を整え、ナイフをのど元に突き立てた。



ナイフを引き抜くと、勢いよく血液がとび出す。

そのままするするとイノシシの腹を開き、何かを体の外に出すと、そのまま腹の肉を割いていった。


「うう……。」

アリスミリアはグロテスクな光景に目をそらした。



鴨狩りなどで鳥を仕留めたところは見たことがあるが、内臓の処理まで見たことはなかった。

こんなにも残酷な工程をしないといけないとは。



グレシアナは手慣れた様子でそのままザクザクと内臓をとり、皮をはいでいった。



「骨と内臓は火をつけて燃やしてしまおう。焼いても残った分は深く穴を掘って埋めておきます。おばちゃん、キッチン借りていい?」

「早いねえ、ありがとうよ」



グレシアナは取り出した内臓に火をつけ処理を済ませると、キッチンを借りてイノシシ肉を洗い始めた。



肉を捌くと、ごりごりとすり鉢で岩塩を砕く。塩をかけて焼き始める。



「おばちゃんも食べる?」

「私はいいよ、全部持っていきな」

「いいのー?」



グレシアナは焼いた肉を皿にのせると、アリスミリア達に差し出した。


「どうぞ、お試しください。」


まずはロディが一切れ持ち上げると、毒見をした。


「……毒はないようです。」



アリスミリアはおそるおそる肉をフォークにさすと、ゆっくりと口に入れた。



(……お肉がかたい。とてもかたい。)



グレシアナはそれを知っているのか、できる限りの薄切りになっているようだ。しかしそれでもイノシシ肉はおいしいとはいえなかった。


「どうですか?」


グレシアナが様子をうかがう。


「……あまり好きな味ではないわね」


「そうでしょう、追加はいりませんか?」


「……もう一切れだけがんばるわ。」


身体づくりに良いと聞いたからには、食べるべきだろう。



アリスミリアは苦い顔をしながらも ぐみぐみと嚙み切れない肉を咀嚼し続けた。

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