3.アリスミリアとエルミーヌ
エルミーヌが見つめた先、アリスミリアのふんわりとした色素の薄い髪は日に透けてきらきらと光っている。
触れればとけてしまいそうな白い肌に、対比でずいぶんと真っ赤に見えるくちびるは、まるでバラの花が乗っているようだ。
同じ女性でも見惚れてしまうような美しさに、小動物を思わせるかわいらしい表情。
たまに見せる満面の笑みは、仲のよいエルミーヌでさえときめくほどだ。
「やだ、何言ってるのよ!」
ふふっとアリスミリアがほほ笑む。まるで花が咲いたよう。
キラキラした瞳に3秒見つめられれば、自分を好きなのではないか、と勘違いしてしまう。
「でも媚びを売った、なんて言われるのは心外よね!まるでアリスミリアが悪いみたいに。そんな覚えないんでしょう?」
「ええ、全く!まあでも、もう起きてしまったことはいいの。新しい縁談を探さないといけないのが大変で、それで困っていたの。」
アリスミリアに縁談の申し込みは来ているものの、そもそもアリスミリアはあまり結婚に興味がなかった。
おかしな相手と結婚しないよう、しっかりと吟味しないといけないと思うと、どうも面倒に感じてしまう。
(その点、エルミーヌはとてもいい相手を見つけたわよねえ。)
アリスミリアはエルミーヌの結婚相手であるヴォルガラスのことを思い出す。
表情は乏しいが、エルミーヌのことを大切に思っていることが言動から伝わる男だった。
今時珍しく武闘派であることも友人を任せるにふさわしい。
それに。今日久しぶりに会ったエルミーヌは、以前にもまして美しくなっている。
少し日焼けした肌と、ゆるく結んだ髪。化粧は前と比べれば格段にうすいことがわかるが、手間暇をかけたおしゃれではないものの、素材の良さがより際立っている。
肌つやはよくなっているし、髪も輝きが増しているように思う。
そしてなにより、表情がやわらかくなった。
以前から、エルミーヌはめんどうみが良く努力家で、人望がとても厚かった。
しかし、自分への厳しさやプライドの高さ、気の強そうな外見から誤解を生むこともあった。
内面を詳しく知らないものからすると、怖い印象が強かったのだ。
それがヴォルガラスと結婚してからというもの、あたたかい表情が多くなった。歯を見せてにっこりと笑うことが増えた。
ともすれば冷たくも見えてしまっていた印象が、表情の変化によってずいぶんと様変わりしていた。
アリスミリアはその外見や言動から男性の注目を集めることが多く、どうしても同性から敵視されることが多かった。
友人と呼べる人が少ないなか、勝手な偏見をもたずに接してくれるエルミーヌは数少ない友人であり、本当にアリスミリアの支えになっていた。
平民出身の騎士と交際すると聞いたときは驚いたが、幸せな日々を送っている様子に、アリスミリアはうれしくなる。
「ねえ、エルミーヌはどうやってヴォルガラスと知り合ったの?」
以前、ヴォルガラスを紹介してもらったときにも聞いてみたのだが、その時はお茶をにごされた。
共通の知り合いがいた、というような事だったが、騎士と知り合う機会なぞ考えがつかない。
エルミーヌは少し考えたような表情をしたあと、「そうね、今なら伝えるべきだわ。」と言って、話し出した。
「婚約破棄をされた貴族御用達の、結婚相談所があるのよ。」
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