1.あざと令嬢アリスミリア
「アリスミリア、婚約を破棄してほしい。君は誰にでも媚びを売りすぎだ。
浮気をするような女とは結婚できない。僕だけを見てくれる、本当の愛を見つけたい。」
そういって、フミレール公爵家子息であるブライドネンは婚約破棄を言い渡した。
にぎやかな舞踏会、きらめくドレス。
衝撃的な言葉の矛先は、美しく着飾った令嬢に向けられている。
「そう……。わかりました!今までありがとうございます。さようならブライドネン様」
「いや、君の気持はわかるけ……え?」
すがりついて涙されるかと思っていたブライドネンは、あっさりと納得する令嬢、アリスミリアに肩透かしをくらった。
「だけど最後に一つだけ。再三、遠回しにお伝えしていましたが、笑顔で異性と会話をしているだけのことを『媚を売っている』とか『浮気だ』と判断なさるのは、やはり人生経験が浅すぎるのではないかしら?」
「えっ……!?」
「ブライドネン様は笑顔で話しかけられただけで、自分に気があるとお考えになるのかもしれないけれど。それってただの社交術ですもの!
どちらにせよ、そのお考えの方と一生を共にするのは難しかったですねっ」
アリスミリアは最後ににっこりと最大級の笑みをみせた。
天使と形容されることもある、愛らしい笑顔。
立ち去るアリスミリアの表情は、婚約破棄をされたとは思えないご機嫌なものだった。
言いたいことを言ってスッキリしたのだろう。
予想外の反応にブライドネンの理解は追いつかない。ぽかんと口を開けたまま固まってしまう。
踊るような足どりで、アリスミリアは会場を後にする。
すれ違う男達の目は思わずその笑顔に惹きつけられ、アリスミリアはそのままダンスにでも誘われそうだった。
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