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19.花嫁と壁直しの天才

***


後日、グレシアナの元にエルミーヌが訪れた。



「これまでいろいろとありがとう。ヴォルガと結婚したの。」



グレシアナは目を見開く。

「おめでとうございます!!うまくいって本当に何よりです!本当に、本当に良かった……。」



グレシアナは報告を聞いただけで涙目になっている。



「大げさね。これ、お礼よ。受け取って頂戴。」



エルミーヌはインクと紙を渡した。



「何がいいか迷ったのだけど、消耗品にしてみたわ」



羽のような細かな細工の付いたガラス瓶に、インクが入っている。紙もしっかりした品で、高級品だろう。



「わー!助かります!紙も安くはないですからね」



グレシアナは目をキラキラと輝かせている。



「ところで、婚約を申し込んだ理由を聞いてみろと以前に言っていたけど、あの人結局話さなかったのよ。」



エルミーヌはため息をついた。



「恥ずかしかったのでしょう。これから時間はいくらでもありますから。聞き出してください」



グレシアナは微笑む。



「ねえ、これからもきっとあの人のことで悩むことがあると思うの。また相談に来てもいい?」



「ええ、もちろん!私に聞けることなら。相談に限らず、なんでもお話に来てください。


私、恋愛小説が好きでこの仕事を始めたので。キラキラした恋愛の話を聞くのが大好きなのです。」



エルミーヌは納得する。こんな変わった仕事をするわけだ。



「貴族の屋敷の壁を直してもいるって言っていたけど、そちらも仕事なの?」



「ええ、相談所が軌道に乗る前は、できる仕事を何でも請け負っていました。

この体格ですから、特に力仕事が多かったのです。


中でも壁直しは才能があったようで、私が壁を直すとその部分だけ壊れにくく、雨にも雷にも耐え、その家に住むものは健康になり、昇進し、モテるようにもなるのだとか。


噂を聞いた貴族様からも依頼をいただけるようになったのです。」



「すごすぎない?そっちを本業にしたらいいのに。」



しばらく話し込んだ後、エルミーヌは踵を返した。



「それじゃあ、また来るわ。何か手伝えることがあれば、手紙を送って頂戴。」



「ありがとうございます!ヴォルガ様とお幸せに!」



エルミーヌが出ていくのを見送ると、グレシアナは手元の書類に目を落とした。



(エルミーヌ様とヴォルガ様との結婚生活が上手くいくといいなあ)



グレシアナは手元にあった書類を伏せ、届いていた手紙を開く。

また誰かが助けを求めている。



グレシアナは恋愛小説が好きだ。

特にハッピーエンドを愛している。



しかし現実では、全員誰もが思い通りの相手と結ばれることは難しい。それでも、少しでも幸せな居場所を目指して、歩んでいければいいなと思う。



誰かの幸せな場所をみつけるため、今日もまたグレシアナ結婚相談所の扉は開く。

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