19.花嫁と壁直しの天才
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後日、グレシアナの元にエルミーヌが訪れた。
「これまでいろいろとありがとう。ヴォルガと結婚したの。」
グレシアナは目を見開く。
「おめでとうございます!!うまくいって本当に何よりです!本当に、本当に良かった……。」
グレシアナは報告を聞いただけで涙目になっている。
「大げさね。これ、お礼よ。受け取って頂戴。」
エルミーヌはインクと紙を渡した。
「何がいいか迷ったのだけど、消耗品にしてみたわ」
羽のような細かな細工の付いたガラス瓶に、インクが入っている。紙もしっかりした品で、高級品だろう。
「わー!助かります!紙も安くはないですからね」
グレシアナは目をキラキラと輝かせている。
「ところで、婚約を申し込んだ理由を聞いてみろと以前に言っていたけど、あの人結局話さなかったのよ。」
エルミーヌはため息をついた。
「恥ずかしかったのでしょう。これから時間はいくらでもありますから。聞き出してください」
グレシアナは微笑む。
「ねえ、これからもきっとあの人のことで悩むことがあると思うの。また相談に来てもいい?」
「ええ、もちろん!私に聞けることなら。相談に限らず、なんでもお話に来てください。
私、恋愛小説が好きでこの仕事を始めたので。キラキラした恋愛の話を聞くのが大好きなのです。」
エルミーヌは納得する。こんな変わった仕事をするわけだ。
「貴族の屋敷の壁を直してもいるって言っていたけど、そちらも仕事なの?」
「ええ、相談所が軌道に乗る前は、できる仕事を何でも請け負っていました。
この体格ですから、特に力仕事が多かったのです。
中でも壁直しは才能があったようで、私が壁を直すとその部分だけ壊れにくく、雨にも雷にも耐え、その家に住むものは健康になり、昇進し、モテるようにもなるのだとか。
噂を聞いた貴族様からも依頼をいただけるようになったのです。」
「すごすぎない?そっちを本業にしたらいいのに。」
しばらく話し込んだ後、エルミーヌは踵を返した。
「それじゃあ、また来るわ。何か手伝えることがあれば、手紙を送って頂戴。」
「ありがとうございます!ヴォルガ様とお幸せに!」
エルミーヌが出ていくのを見送ると、グレシアナは手元の書類に目を落とした。
(エルミーヌ様とヴォルガ様との結婚生活が上手くいくといいなあ)
グレシアナは手元にあった書類を伏せ、届いていた手紙を開く。
また誰かが助けを求めている。
グレシアナは恋愛小説が好きだ。
特にハッピーエンドを愛している。
しかし現実では、全員誰もが思い通りの相手と結ばれることは難しい。それでも、少しでも幸せな居場所を目指して、歩んでいければいいなと思う。
誰かの幸せな場所をみつけるため、今日もまたグレシアナ結婚相談所の扉は開く。




