カーテンコール ソフィアと護衛騎士②
その瞬間、向かい合う彼らを強い感情が支配した。
明らかな拒絶と、いたたまれないほど重い沈黙。
冷ややかな眼差しをしたお父様が、ようやく口を開いた。
『預かり子であるおまえは、家族じゃない。我々の家族はソフィアだけだ』
『そんな、それなら私は一体何者なの?』
『おまえがどこの誰かなんて知らない。それとも……言い伝えに残る魔女かもしれないな』
『魔女?』
『光の領域を司る賢者と対極にある存在だと聞いている。そして陰で策謀を巡らせる悪しき心根の者であるとも……まさに、今のおまえのような存在だ。もしおまえが魔女だとすれば、我らの光を奪った存在を絶対に許しはしない』
ゾーイに向ける彼らの表情は娘や妹に向けるものではなかった。
……このままこの場にいては、殺されてしまうかもしれない。
恐怖を感じ、慌てて立ち上がる。
そのとき、扉の外から誰かの入室の許可を求める声がした。
王が許可すると、扉が開く。
『ダレル!』
お気に入りの宝石である、アクアマリンのような瞳がゾーイを映した。
彼女は心強い味方がきたとばかりに彼のそばへ駆け寄る。
そしてすがりつきながら涙を流して先ほどの出来事を訴えたのだ。
途中まで聞いたところでダレルは感情の読めない微笑みを浮かべると、とりすがるゾーイの手を静かにはずした。
『…… ダレル?』
『大切な報告事項があるのです。詳しくは後ほどお伺いいたします』
私よりも大切なものがあるとは思えない。
それでも笑顔の彼が醸し出す気迫に押されて黙り込む。
ダレルは、王に一通の封書を差し出した。
いぶかしげな顔で受け取った王が、裏の署名を見て顔色を変えた。
『ダレル、どういうことだ? なぜおまえがソフィアからの手紙を携えている!』
『ソフィア様から、自分に何かあったときにお渡しするよう申しつかりました』
『なんですって⁉︎』
信じられない思いで、ダレルを見上げる。
私の護衛騎士でありながら、裏ではソフィアと繋がっていたのか……。
裏切られたという思いで、彼を睨みつける。
ダレルは表情を変えることなく、ただ淡々と答えた。
『ゾーイ様にお仕えする前、最後にソフィア様とお会いした際にお預かりしたものです』
『あの子は、まさかそんな……』
『ご自身の死を、予期していたのかもしれません』
『なぜ報告しなかった⁉︎ そうすれば、みすみす死なせることはなかったのだぞ!』
詰め寄る王に、はじめてダレルが表情を歪めた。
微笑みの騎士と呼ばれ、どれほどの困難にも微笑みを忘れない男の声が震えた。
『絶対に言うなと、この剣に誓わされました。あの方は、最後まで皆様の負担にはなりたくなかったようです』
ガタリと大きな音を立てて、王妃が椅子に崩れ落ちる。
王子と王女が真っ青な顔で駆け寄り、王の手元を覗き込む。
開封された手紙を読んで、全員が沈黙した。
しばらくして、ようやく王が口を開く。
『……これは、どういうことだ、全ての責任をソフィア・グレース・シュワルツェに負わせろと? これが、あの子の最後の願いだと⁉︎ そんな馬鹿な、どうしてやっていない罪まであの子が背負わねばならぬ!』
『あの方は、いつでもご家族の幸せを祈っておられました。それが全てです』
『だが、王家が認めたらソフィアは本当に残酷無比の最悪の王女になってしまうではないか!』
『その代わり、ご家族は処刑を免れるのです。どうかあの方の最後の望みを叶えていただけないでしょうか?』
手紙に綴られていたのは、遺書のようでありながら自分が死んだあとにどうすべきかという進言でもあった。
王家の負うべき罪の全てを、王女である自身が負う代わりに王族は罪を問われないとすること。
また行政、司法、立法の権限を新たに発足する議会に移譲し、民衆からの反発が根強い奴隷制度を廃止すること。
そして制度の廃止に伴い、奴隷であった者は全て解放するよう取り計らうこと。
権限を剥奪された王家は他国との調整役を担う国の象徴としてのみ残るよう手配済みであること。
そして、以上のことは、不測の事態があった場合を想定して宰相や主だった大臣とは調整済みであること。
『ソフィア様は、自身に残された権限やゾーイ様が投げ出されたあと引き継いだ権限を最大限に活用して、交渉を進めておられました。そして自分が亡くなったあと、事後処理を皆様に担っていただきたいとのことです』
『たしかに、あの子が動き回っていることは察していた。だが自分の命を守るためだとばかり……。なんで、あの子は私たちに、こんな命を差し出すような真似をしたのか? そんなことをして、我々が喜ぶとでも思ったのか?』
『一度、ソフィア様に同じことを聞いたことがあります。なぜご自身の名誉と身を守ろうとしないのかと』
『あの子は、なんと?』
『家族の中で私だけが賢者としての資質を持って生まれた、だから賢者として最低限の義務は果たさねばならないと、そうおっしゃっておられました』
部屋に重苦しい空気が満ちる。
王が、両手で顔を覆った。
『……あの子は、かつて我々になじられたことを気にしていたのか』
『私たち使用人には何があったか固く口を閉ざしていたため、その心はわかりかねます。ですが蘇生石をお持ちでありながら、ご自身のために使われなかった。そのことにソフィア様の意志があるのではないかと考えております』
ソフィアお姉様が賢者の資質を持つ者ですって?
何一つ知らないゾーイは首を傾げた。
優秀であるとは聞いていても、そんな話は聞いたことがなかった。
賢者の資質を持つ者であるなら、なぜ公表しないのか?
悪評を払拭できるくらいの名誉だというのに。
『私でも賢者になれるのですか?』
なれるものなら、なってみたい。
そうすれば、この危機的な状況を回避できるかもしれないとそう思っただけだ。
そしてそれを素直に口にしただけ。
だからなぜダレルを除く全員から睨まれるのか、全く理解できなかった。
父王が、怒りに任せて机を叩く。
『おまえがそうだから、ソフィアの資質のことを黙っていたのだ!』
『ひっ……!わ、私が何を?』
『身の程知らずにもソフィアになりたいと願ったことを、もう忘れたのか!』
『!』
『王家の血筋を引かないおまえが、賢者となる資格を有しているわけがないだろう!』
震える王の怒号に怯えて、ゾーイはダレルの背後に隠れる。
口を閉ざしたダレルは、ただ下を向いて淡く微笑んでいるだけだった。
『この愚か者がっ、何も知らぬくせに余計な口を挟むでない!』
『で、ですが資格がないとダメだというのなら、はじめからおっしゃっていただければ……』
『本当に納得したのか?』
『……えっと』
『今まで一度でも願いを諦めたことがあったか、思い出してみよ!』
ゾーイは必死になって過去を思い返してみた。
だって願えば叶うのは当然だったから叶わないなんて相手が意地悪をしているとしか思えないもの。
侍女だってそう言っていたし、相手に泣いて縋って追い詰めて……結局最後は叶えてもらっていた。
それでは、私に知られないために、ソフィアお姉様の力を隠していたというの?
『王家の血を引いているだけでもダメなのだ。資質が必要で、それはソフィアにしかなかった。しかも死を超越せし者だと⁉︎ それを知られたら自国他国問わず、欲深い者は絶対にその知識を欲しがる。そしてそのためにソフィアではなく、愚かで御しやすいおまえに接触するだろう。そしておまえに強請らせるのだ、石も知識もソフィア自身の未来も!』
ゾーイは青褪めた。
全く否定できなかったからだ。
ほんの少し前まで、ソフィアの未来はゾーイが決めていた。
ソフィアから優秀な護衛騎士であるダレルを引き抜いたのも、ただ見目麗しく優秀な彼が欲しかったからで、ソフィアの安全のことなど考えてはいなかったのだ。
その結果、警備の穴が埋まらなかったソフィアは隙を突かれて無残にも殺された。
ソフィアは満開の花が無理矢理散らされるように凄惨な死にざまであったと聞く。
『おまえには絶対に知られてはならない、だからあの子を心ならずも叱責した。誰にも言わないようにと言い含めて誇らしげな笑みを踏み躙ったのだ……その結果がこれとは、悔やんでも悔やみきれない』
誰もが下を向く。
涙を流し、拭い、それでも止まらない涙を流す。
そこには身分に関係なく家族を失った者たちの深い悲しみが広がっていた。
だがゾーイだけは蚊帳の外にいる。
そして自分が全く悲しく思わないことに気がついて打ちのめされた。
私は、本当に家族ではないのね。
打ちひしがれるゾーイの前で、ダレルは深く礼の姿勢をとった。
『恐れながら悲しみに暮れる時間はございません。ソフィア様の最後の願いを叶えるために、皆様の一刻も早い対応が必要なのです。どうかお力をお貸しください』
手紙を握りしめて、王はうなずく。
王妃も残された二人の兄姉も部屋を飛び出していった。
残された王はゾーイを一瞥する。
『謹慎しておれ。おまえには追って沙汰を……』
『お待ちください。処罰は必要ございません』
『ダレル、どうした? おまえはこの娘が憎くはないのか?』
『ソフィア様は、彼女の願いを叶えるよう申し付けて逝かれました。私は、ソフィア様の最後の願いを果たさねばならないのです』
……これからはあの子の願いを叶えてあげてちょうだい。
……それが私の望みよ。
ソフィアと交わした言葉が、ダレルを縛る。
彼はもう一度深く首を垂れた。
ダレルはゾーイのためでなく、ソフィアのためにこの身を捧げると決めたのだ。
『わかった、一任しよう。責任は私が負う』
『ありがとうございます』
『ソフィアの遺志を継いでくれるというのなら、それくらい当然だろう』
ダレルはゾーイを立たせると、追い立てるように彼女の部屋へと戻った。
ゾーイは荒らされた部屋と、いつもなら賑やかに場を盛り上げてくれる侍女たちが誰もいないことに呆然とする。
『これはどういうこと?』
『めぼしい貴重品を手にして逃げたようですね、沈む船には用がないらしい』
『なんで……あれだけ目をかけてあげていたのに!』
『あなたに人を見る目がないというだけです』
淡々と答えるダレルに焦れて、ゾーイは彼の腕に体を寄せる。
今の彼女には、ダレルしか頼りになる相手はいなかった。
『ねえダレル、私を連れて逃げてくれる?』
『なぜですか?』
『私はあなたを愛しているの。ね、だから平民となって二人で幸せに暮らしましょう?』
『……それはまた、なんとも醜い夢だ』
ダレルは唇を皮肉げに歪めた。
いつもの紳士的な態度は薄れて、どこか蠱惑的な色気すら感じさせる。
ゾーイの背筋に甘い痺れが走った。
誠実さの中に危うさを感じさせるダレルが、いつも以上に魅力的に思えたのだ。
彼女は美しく見えるよう精一杯の微笑んだ。
たしかにソフィアほど美しくはなくても、侍女に磨かれて女としての魅力はあると自負していた。
『ねえ、お願い。私にはあなたしかいないの』
『では選んでください』
『え? 選ぶって、何を?』
『血と硝煙に包まれた城外に出て私と共に殺されるか、離宮に籠って私と共に一生を終えるかです』
『そんなもの……』
ダレルと二人きりで過ごせるなら、離宮に籠るほうを選ぶに決まっている。
そう答えると、彼はにっこりと微笑んだ。
『ではこれが、あなたのお願いを叶える最後になります』
『ど、どうして?』
ダレルの笑顔に不穏なものを感じて思わず聞き返す。
彼は不思議そうに首を傾げた。
『どうして? そもそも、私があなたのいうことを聞く理由は何ですか?』
『それは私が王女で、あなたは奴隷だから……』
そう答えた途端、ダレルはクスクスと楽しそうに笑う。
『先ほど王が認めたでしょう? あなたは家族ではないと。ならばあなたは身寄りのない平民だ。そしてもう間もなく奴隷制度自体がなくなります。つまり私もあなたも身分は等しく平民となるのです。対等な立場にあって、どうして一方的にお願いを聞かねばならないのですか? そして滅びようとする今、国という人質のために、誰もあなたの言いなりになる必要はないというのに、どうしてご機嫌を伺う必要があると?』
『でもあなたは私を愛しているでしょう⁉︎』
途端に、ダレルは表情を歪めた。
それは彼がはじめて見せる……汚いものを見るときのような嫌悪に満ちた眼差しだった。
『いいえ、全く? どうしてそんな勘違いをされたのか不思議でなりません』
『そんな! ならさっきの二人でというのは、どういうことなのよ⁉︎』
『ソフィア様がそう言い残したからです。あなたの望みを叶えて欲しいと。ですから望みを叶えた今はただの同伴者であり、同居人です。今後一切、あなたを守るつもりも愛するつもりもありません。不愉快ですから』
『そんなのおかしいでしょう! 望みを叶えるという約束をしたのだから、死ぬまで約束を履行しなさいよ!』
『これでも最大限譲歩したのです。なんなら今すぐこの手にかかって死にますか? そうすれば、死ぬまで望みを叶えてあげたことになるのですよ?』
『……い、いやよ! 死にたくないわ!』
『王族であるソフィア様は死にたくないと願うことすら許されなかったというのに……無様なものですね』
『……!』
『ならば王の沙汰を待ちますか? もしくは平民に化けて一人で逃げるのでもかまいませんよ? 残念ながらどこにでもいるような平凡な容姿のあなたが、美しいと評判の妖精姫だとは誰も思わないでしょう』
上手く逃げ切れるといいですね。
ダレルは満面に貼り付けたような美しい笑みを浮かべる。
いつもの月のように儚い笑みとは全く違う、どこか気味の悪いものだった。
その表情から、愛されていないというのが嫌でもわかってしまう。
これは誰、私のダレルではないの?
『……もういい、疲れたから離宮に行くわ』
『ええ、それがいいと思いますよ? あちらには、しっかりとした侍女が控えておりますのでご安心ください』
そして離宮にたどり着いたゾーイを迎えたのは、ソフィアの側に控えていた怖い表情をした二人の侍女だった。
彼女たちもダレルと同じような貼り付けた笑顔を浮かべている。
……こんなはずではなかった。
ダレルとの享楽的で甘い生活を思い描いていたゾーイの想像が実現する日が来ることはない。
こうして妖精姫と呼ばれた少女は離宮の一角で護衛騎士と侍女二人によって軟禁され、監視される日々が死ぬまで続くことになった。
場面が変わる。
ダレルは灯りの消えたような王城を歩く。
今日は敬愛する主に、全てが片付いたということを報告するため登城したのだ。
ここに王が住む日は二度とこないだろう。
今後は議会が開催されるときだけ、広い議場がある王城に人々が集うことになる。
『本当にこれでよかったのですか、ソフィア様』
かつての主人が暮らしていた部屋の前で足を止めた。
軌道修正はあったものの、おおむね彼女の予想したとおりに決着している。
そうなるようにソフィアが奔走し、取りこぼした分をダレルが引き継いだ。
結果として彼女が救いたいと願った命は、全て守られた。
彼女が救いたいと願った者の中に元凶であるゾーイと、そして結果だけ見れば主人を見捨てたことになるダレルが含まれているのが滑稽だった。
ソフィアの書いた脚本は吐き気がするほど、ひどい筋書きだ。
彼女自身への救いが、まるでない。
締め切られた扉にそっと手をかざす。
『どうしてあなたは、私に死ねと命じなかったのですか? 自分のあとを追えと命じてくださればよかったのに』
あなたのいない世界は、こんなにも空虚で寂しい。
ソフィアに名を与えられるまえ、かつての自分は戦争で滅ぼされた国の王子であった。
奴隷に落とされ売られたときは、天を恨み、神を呪った。
だが奴隷として売られた先のこの国でダレルは天使に出会ったのだ。
『あなたに生き抜く知恵と力を与えましょう』
そして彼女は熾天使のように生きるべき道を示した。
この国で生き抜くための力を……教養を授けてくれたのだ。
王子時代の基礎知識があるおかげで、勉強も礼儀作法も楽に覚えていくことができる。
さらに王子時代には学べなかった体術や剣術といった武芸の訓練を受けることができたのだ。
何があっても、自分の力で身を守れるように。
彼女の後押しもあり、存分にこの国で生き残る術を身につけていった。
そんなダレルの横では彼の過去を知らない天使が、なんでもできて狡いと頬を膨らませる。
ぷくりと膨らんだ頬は、まるで愛らしい花の蕾のようだ。
ダレルにとってソフィアは天使であり大輪の花。
彼女の周りだけ色鮮やかに輝いて見えていたというのに。
『ダレル、あなたのような奴隷を解放することが私の夢。だからこの命を懸けて奴隷制度をなくしてみせるわ』
普段聞けない本音がこぼれたのは、この場には誰もいないと気を抜いていたからだろうか。
夜空の先にある高みを目指すような、凛とした横顔。
家族や国民から疎まれながらも、なぜあなたはそこまで他人に優しくできるのか!
このころには、噂に踊らされた国民が彼女に見当違いの怨嗟の声を上げていた。
だからあの日、ダレルはソフィアへ命を捧げる覚悟を決めた、それなのに……。
無惨にも命を奪われ戻ってきたあなたの遺体には禍々しい血色の花が咲いていた。
自分が護衛から外れて、たった一週間後のことである。
ダレルは彼女の侍女と共に、必死で蘇生石を探した。
肉体のあるうちならば死者でも蘇らせることができるという、この世に二つとない魔法石を。
だが彼女が厳重に管理していたはずの蘇生石は所定の場所にも部屋のどこにもなかった。
探し尽くして、それが何よりも明らかな彼女の意思表示だと気がついた。
私を蘇らせることは許さない。
全てを捨てて、もう一度やり直すことすら彼女は拒んだ。
どこで学んだのか庶民の暮らしに精通するあなたとなら、平民に混じって暮らすこともできただろう。
そんなささやかな幸せすら捨てて、ソフィアは死を選んだ。
傷跡から相当な痛みがあっただろうに彼女は満足そうな微笑みすら浮かべていた。
偉大なる黄金の国は自身が生きながらえるための対価に王女であるソフィアの命を望んだ。
そしてダレルは、ソフィアの犠牲によって奴隷から解放されたのだが。
自由を得たはずなのに虚しさしか感じない。
こんな結末を欠片も望んだことのなかった自分が、こうして生かされてしまった。
あなたへ命を捧げた私に、あなたなしで生きろというのですか?
私は、この国を許さない。
彼女という花を貶め、無惨に散らした奴らを含めたこの聖代ヴィリデレオ国を終わらせる。
もしゾーイを閉じ込めることで災いが起きようとも誰も止めることはできないだろう。
確実にゆるやかに国は蝕まれ、ゆっくりと黄金の国は消えていくのだ。
その死にざまをソフィアの代わりに見守るのがダレルに残された希望だ。
『死してのちに、あなたのそばへ。出会えたら、もう二度と離したくはありません』
護衛騎士は閉ざされた扉の前で膝をつく。
勇敢で大輪の花のように美しい主人へと剣を捧げた。
これは歴史に残らない裏側の話。
ソフィア・グレース・シュワルツェは己が悪行により多くの民に怨まれ殺された。
そして妖精姫は、愛する人々に囲まれて末永く幸せに暮らしたとされている。
妖精の取り替え子を、魔女に置き換えるとこうなるかなという発想で生まれたお話でした。そして賢者がなぜ魔女を深く憎むのか、を回収するお話でもあります。賢者からすれば魔女は一緒くたに悪い奴、魔女からすれば相手構わず絡んできて面倒くさい奴という認識で、本来は仲良くなることはありません。
エレナとアルスはよほど波長があったのでしょう、そんなお話もいつか書けたらいいなと思います。




