10・フェンリルとの関係
「ごめんなさい。変にテンション上がっちゃて」
「いや……別にいい……」
実際、俺がされたのは、白虎に撫で回されたくらいで、特に実害はないし。
「でも……説明ぐらい……して……」
さすがに、ここまでされて何の説明もなし、は嫌だからな。
「ええ、そうするわ。何から言えばいい?」
うーん。そうだなー……。
「……まずは、フェンリルとの関係……」
さっきの言い方からして、どう考えても、フェンリルと何の関係もなし、という訳ではないだろう。
「じゃあ、それから話すとするわね。私とフェンリルは、いわゆる、同胞っていう感じね」
「どう、ほう?」
えっと、同胞って、どういう意味だっけ。
「私達は、同じ神から産み出されたの。私は、自然を司る四位一体の内の一柱として。フェンリルはその数百年後に、母の守り刀として」
あ、そうだ。確か、兄弟姉妹、または同じ国の民、だっけ。
この場合は、兄弟姉妹の方かな。
それにしても、自然を司る四位一体の神獣で、その一体が白虎か。それってやっぱり……。
「……青龍……朱雀……玄武……」
「……よく知ってるわね」
そりゃまあ、このぐらいは。
というか、やっぱり四神じゃねえか。
それは良いとして。
「守り刀って……」
「その名の通りよ。母の身を守る為の殺戮の兵器よ」
「殺っ!?」
何その物騒な文字面。
「だからか、最初は何をしている時でも、すごく無表情で無口で無愛想だったの。でも、それも感情が無かった訳じゃなくて、その表し方が分からなかっただけでね、私達と過ごしていく内に、どんどん感情を出してくれる様になって!しかも、四人の中で私に一番懐いてくれて、いつも「お姉ちゃん、お姉ちゃん」って付いて来てくれて、本当に可愛かったなー!!」
最初は普通にフェンリルの説明だったのに、何か、途中からのろけに変わったんだけど。
しかも、軽くトリップしながら。
「……はっ!ごほん」
ジー、っとジト目を向けていると、さすがにトリップしている事に気付いたのか、咳払いして誤魔化そうとしている。
けど、そんなんで誤魔化される程甘くないよー?
このままだと話がまったく進まないから流すけれども。
「で、でね。あなた、そのフェンリルにそっくりなのよ」
「……そっくり?……俺が?」
確かに、さっきもそんな事を言ってた気がするけど……。
「ええ。顔だったり、声や口調、ちょっとした仕草だったり、それらが同一人物と言っていい程似ているわ」
え、そうなの?
顔や声は生まれ変わったからだとしても、口調や仕草まで?俺としては、前世から何も変わっていない気でいるんだが……。
「だから、森の中で急に声を聞いた時は驚いたわ。死んだはずのフェンリルの声だったから……あなたを拾って育てた理由も、大半はそれね」
そうだったのか……。
俺を拾った理由、子供と間違えたのか?とか言ってたけど、案外外れてなかった訳だな。子供じゃなくて妹だし、間違えた訳じゃなくて面影を見ただけだけど。
「ついでに言うと、残りの内の半分は魔力にフェンリルの気配があったからで、もう半分はフェンリルを想い出して、もう一度誰かをお世話するのもいいかな、って思ったからね」
つまりは、全部がフェンリル絡みって事じゃねえか。
というか、今更だけど、疑問があるんだが。
「フェンリル……狼じゃ、ないの……?」
そうだよ。フェンリルと言えば、狼。これは鉄則だ。
それなのに、顔とか声が似ているとか、おかしくない?
「よく知ってるわね。そう、フェンリルは神狼よ。でも、これは知らないのかしら?神獣って主に、通常形態と、縮小形態、人間形態の三つで過ごしているのよ?そしてあなたは、フェンリルの人間形態に似ているの」
へえ。神獣って、そんな生態だったんだ……。
「……でも、何で、そこ……人間……?」
ぶっちゃけて言えば、人間なんて肉体的に他の生物に勝っている部分がほとんどない。
速い俊足も、獲物を引き裂ける牙や爪もない。空を飛べる翼もなければ、海を俊敏に泳ぐ為のエラやヒレもないし、寒さを防ぐ毛皮や身を守る甲羅がある訳でもない。
そんな生物を見本にするのは、間違っているとしか思えないんだけど。
「これも知らないの?人間は、他の魔物に比べて、魔力効率が格段に良いの。だからこそ、上位の魔物は人間に化けるのよ」
魔力効率って言うと、多分あれでしょ?魔術とか使う時に、使う魔力の効率とか、そんな感じの。
へー。そんな仕組みがあったのか。知らない事ばかりだな。
「それじゃあ、他に知りたい事はある?」
んー、後は特にないかな。
フェンリルの事も、俺を拾った理由も聞いたし。
何で俺がフェンリルに似ているのか、とか、俺から神獣の気配がするのは何故か、とか疑問はまだ残っているが、それらは白虎も知らなそうだし。
「だったら、私も聞いて良いわよね?」
「……ん?……ああ」
何の事かと思えば、あれか。俺が何者か、という奴。
うーん。説明するには、絶対に前世の事とか、言わないといけないからなー、どこまで言っていいものか。
小説とかだと、転生者だとばれた時の反応として時々、実験台にされたり、追いかけ回されたりする場合あるけど……まあ、ああいうのは人間相手だからだろうし、大丈夫か。
「……じゃあ……話すよ……俺の事……」




