11・鈍感
「そう、転生者だったのね……」
俺が、地球と呼ばれる星で人間の“霧島黄金”として十五年間生きてきた事、魔方陣の放った光に呑み込まれてからの記憶が無い事、気付いたら森に居て、この姿となっていた事、を話し終えると、白虎が最初に言った言葉が、それだった。
その口振りからすれば、やっぱりいるのか、転生者。
でも、もしかしたら俺の思っているのと違うかもしれないし、白虎に聞かなければ。
「……転生者、って……?」
「転生者とは、その名の通り、記憶を持ったまま転生した者の事よ。その中でも、異世界で生きた記憶を持つ者を『異世界転生者』と呼ぶわ。君はそれね」
俺の思っていた通りだった。
「なるほど。年齢に相応しない成熟さと知識はそのせいね……」
「……知識は、違う……俺の世界に……そんな言葉は……ない……」
俺の世界には魔獣もいないのに、魔獣語の知識があったらおかし過ぎだから。
ついでに備考として、今日になったら急に成長していた事と、同時に何故か魔獣語の知識を知っていた事も伝えておこう。
「そう……。とすると、その知識は何処から来たのかしら……?急に成長するのも謎だし……」
「神獣の血を、引いていたら……そういう事も、ある……?」
「神獣は、生まれた時から成熟している種族。他種族の血が混ざっていても、子に神獣の性質が色濃く出れば、生まれて数日で一気に成体にまで成長する例も無くはないけど……やっぱり有り得ないわね」
「それは、やっぱり……年代の差の……事?」
幾ら間に十何代挟んでいても、隔世遺伝とかあるし、俺の代で偶々神獣の血が覚醒したとか、そういう事もあるんじゃ……?
「それもあるけど、一番は、あの子が誰かと子を為していたとは考え難いの。あの子の周囲に男っ気がまったく無くて、逆に心配していたぐらいだし。鈍感&仕事優先のせいで、撃沈した神獣・魔獣は数知れず。初恋もまだだったらしいわ」
うん。そういう人いるよね。
端から見ればものすごい分かりやすくアピールしているのに、されている当の本人はまったく気付いていなくて、何の効果も上がらない。
「……けど……兄弟姉妹でも……知らない場合……あるよね……?」
どれだけ仲良しだろうと、ずっと一緒にいる訳じゃないんだし、一人の間にこっそりと会っているかもしれないじゃん。
それに、仲良しだからこそ知られるのが恥ずかしくて、隠しているという場合もあるはず。
「いえ、それもないわ。母が神界に帰った後、あの子はいつも私達四人の仕事の補佐をしていてくれて、ほぼずっと四人の誰かの側にいたの。一人になるのは寝る時か、四人の居場所を行き来する時ぐらい。それも、長くて半日程度。その間に何か出来るはずがないわよ」
そっか……。
とすると、もう考えられる可能性がないな……。
「……まあ、いいや……どうせ……考えても、分からない……」
フェンリルはもう故人だ。本当の事を知るには、それこそ過去を見通す事でも出来なきゃ無理だ。
「それもそうね……いや、でも、あれなら、可能性はあるかしら……?」
「……何か……思い出した……?」
「ええ。昔起きた、とある奇跡のような出来事をね」
き、奇跡とは、大仰な言葉を出してきたな……。
ちょっと聞くのが怖いが……まあ、それが謎を解く手がかりになるのかもしれないし、聞くだけは聞くけれども。




