少し違う朝
18話目です。
今回は主に焔華が出てきます。ついでに色々なキャラも名前だけですが登場したりしてます。
最後まで読んで頂けると幸いです。
最近出会った俺と同じ位の歳の女性“氷室凛”に
食い過ぎで倒れている所を発見され、その後色々とお世話になってから数日後…
ちょうど食い過ぎが原因の腹痛や気分の悪さから
開放された頃だった。
「はぁ、今何時だ…」
やっと見慣れた天井を見ながら目を覚ました。
その天井は良く言えば、大理石のように
綺麗だが、まあ悪く言えば、無機質で面白味もなく無表情だ。
俺の部屋に備え付けられている時計を見ると
ちょうど朝の七時を回ったあたりだった。
俺がこのよく分からない施設に来てからほぼ毎日凛が朝起こしに来てくれるので必然的に生活習慣がよくなっていることを実感している。
たまには自分で起きてみるか。
「よし!」
そう思い俺はベッドの上から降りて外に出ていい格好に着替えた。
実際、寝間着で出てもいいんだけどこの前それをして凛から怒られている人を見たのでちゃんと
着替えなければいけない。
「まあ、こんな感じていいか」
ファッションは全然分からないのでとりあえず
目立たないほぼ無地の服を着てドアを開く
「アイタッ」
開けようとすると何かにぶつかり扉の向こうから声が聞こえてきた。
扉の向こうで後ずさりする音が聞こえたので
ゆっくりと扉を開けると、
先ほど頭の中に思い浮かべていた人物、この前凛に怒られていた人“黄昏焔華”その人が手の甲を
痛そうにしていた。
どうやら扉を勢いよく開けすぎたかタイミングが悪かったのか扉のドアノブが焔華の手に当たって
しまったようだ。
「イテテッ」
「すまん、大丈夫か。」
「大丈夫じゃないって言ったらどうする?」
あまりに痛そうにしているので何が大事が
ないかと思い声をかけると、まるで待っていた
かのように即座に反応して悪戯をするような目で
返答してきた。
「あー、えーと、そうだな……」
いきなり返ってきた予想外の質問に答えが出せずオロオロしていると焔華が堪えられなくなったのか大声で笑い始めた。
「アヒャヒャ、さっくんが本気で考えてる!」
その後もひとしきり俺の“さっくん”という
ニックネームを連呼しながら笑い転げていた。
因みに何故さっくんなのかは俺が“朔野凶弥”と
いう名前だからさっくんらしい。
まあそれはいいとして
「あー、笑い疲れた。あと、全然大丈夫だから。」
「それぐらい今の行動を見たら分かりますよ。」
焔華が笑い疲れるとすぐに素で「大丈夫」なんて言うので軽い皮肉を返してやったが焔華自身はそれが皮肉だとも気づいていないのかスッキリした顔をしている。
「それで、なんで今日は焔華が来てるんだ?」
だいたいいつも凛が起こしに来てくれるのだが、焔華が来るのは初めてだった。
「うーん、やっぱりヒムリンの方が良かった?
ごめんね、今日は私なんだ。」
「いや、そんなわけではないが。」
やっぱりこいつは俺を使って遊んでいる。
それだけは明白だ。
「そうだよね。分かったじゃあヒムリンにさっくんが『毎朝俺を起こしてくれ。君じゃないと一日が
始まらない』って言ってたって伝えてあげる。」
「ちょっと待て!」
遊ばれていると思われた矢先、言ってもない
嘘証言を凛に伝えると言い出し、そのまま多分凛のいる場所に走り出そうとしたので急いで手首を
掴んで焔華を捕まえた。
「頼む、それだけは止めてくれ。色々と恥ずかしいから。」
「やっぱりさっくんは面白いね。本当はね、今日朝からヒムリンが忙しくて今朝食作ってるから
さっくんを起こしに行くよう頼まれたんだよ。」
「なるほど、そうなのか。」
一様、焔華の説明に納得はした。
それからは焔華と二人で部屋と同じく、これまた無機質で面白味のないどこまでも続くような質素な廊下を歩いていた。
「そう言えば、さっくん食堂でこの前倒れてた
みたいじゃん、なんで?」
「・・あれは……」
焔華から唐突に質問を振られて一瞬だけフリーズしてしまったがすぐさま再起動して俺はあの日の夜出会った女の子にしか見えない男の子“湖翼琥珀”君に出会ったことを話した。
すると、
「あー、あの子か。にしてもさっくんよく会えたね珍しい。あの子全然姿見せないからね。」
まあ、会った時もずっとネトゲをやっててお腹が空いたから深夜に食堂に来たらしいからな。
そう思っていると会話が終わっていた。
あれっ、この状況どっかで見た気がするな。
そうだ凛ともこんな状況になったんだよ。あの時は気まずかった。
今回は前回の失敗を糧として会話が失敗させないようにしよう。
「そう言えば、凛っていつからこの施設にいるんですか?」
フッと思いついたように焔華に質問をぶつけて
会話の火種を作ってみた。
「う~ん、それは私も知らないな~、ヒムリンは私が入った時にはもういたし。」
焔華もちゃんと真面目に考えてくれたのか案外
普通に答えてくれた。
凛も焔華も歳は近いと思うのだか二人とも
この施設に入った時期は違うらしい。
だからきっと凛はいつも焔華をあやす母や姉の
ような感じで接しているのだろう。
「それじゃあさっくんが「毎日俺のために味噌汁を作ってくれ」的なことを言ってたってヒムリンに
伝えてくるね。」
「ちょっと待て!頼むから止めろ。
お願いします!」
焔華は、手首を俺に捕まれると悪戯気な目を
見せながら振り払い凛のもとに走って行った。
食堂からはいい香りがしており、俺も食堂に朝食を楽しみにして入って行った。
18話目です。
今回はいつも凛のいるポジションを焔華に演じてもらいました。凛と会話させると必要なことや事務的なこもが多くなるのですが、焔華だと話を色んな方向に飛ばせるので楽しいです。
後書きを含め最後まで読んで頂きありがとうございます。




