ヘェリモンドの冒険《遭遇》
12話目です。
今回は比較的動きが多い話かと思います。
この話は11話から読んで頂けたら分かりやすいと思うので読むならぜひ11話からどうぞ。出来れば最初から読んで頂けたら幸いです。
俺たちの住む組織の所長である灰蛇からの連絡が切れた後、凛はうつ向いて数秒考えたがすぐに顔を上げた。
「凶弥ここから北に行き森を抜けた所に次元を繋ぐヒビが出現しました。説明は移動しながらするので着いてきて下さい。」
凛は、いつもより少し早口で俺にそう伝え、森に向かって走りだした。
俺も凛に言われたように後ろを走っていく。
「凶弥、今から次元を繋ぐヒビの修復方法を説明するので聞いて下さい。」
「分かった、分かりやすく頼む。」
俺がそう言うと凛は服のポケットに手を突っ込みいくつかの釣りのウキのような小さな機械を取り出して俺に渡してきた。
「この機械は次元修復機と言います。凶弥はこれをヒビの周り四方の地面に刺し込んで下さい。」
「分かった、差し込んだ後はどうすりゃいい、そのままか?」
「刺し込んだら自動でヒビが修復されます。修復してる間は機械が光るので、光が消えたら全て地面から抜いて下さい。」
「ヒビの周りに刺し込んで終わったら抜けばいいんだな。」
俺が、凛の説明を確認すると凛は「はい」とだけ答えて黙ってしまったが唇を少し噛み、険しい顔をしている。
何かまだあるのだろうか?灰蛇から連絡を切られた時から少し様子がいつもより焦っているというか気が動転してるというか変だった。
「なあ凛、大丈夫か。さっきから変だぞ。」
「・・・すいません。凶弥はその機械でヒビを修復するだけでいいですから。それ以外は全部…私がしますから。」
凛は呟くように謝り、弱々しくそれでいて力強く言葉を発した。
何故だろう、凛の言葉からは決意、怖れ、責任
そんな様々な思いを感じる。
凛はこれまで、俺の前だけかもしれないがほとんど欠点のようなものもなく、いつでも余裕を持っており、可愛らしい一面もある強い人だった。
でも今の凛は焦りからか弱さを感じる。このままじゃ理由は無いが駄目な気がする。
頭の中で一抹の不安を抱えながら走っていると森を抜けたのかゴツゴツとした岩が乱立した大地に出てきた。
「ハァハァ、穴は何処に。」
着くと同時に凛は周りを見回し始めた。
「凶弥も探して下さい!ここに来たときと同じ感じのです。」
「分かった。」
俺も言われた通り、周りを探し始めた。
岩の裏など、様々な場所を探す。
探し始めて少し経った頃、俺は空間にはいった
ヒビを見つけて凛を声を上げて呼んだ。
「それでは凶弥は急いで修復して下さい。」
「分かっ…凛!向こうに何かいるぞ!」
俺が機械を設置しようとした時、凛の向こうから動く異形なものがこちらに歩いて来ているのを見つけた。
それは獅子の頭、山羊の体、蛇の尻尾を持っていてその姿はゲームやアニメで見る“キマイラ”そのものだ。
「くっ…、キマイラですか。どうしてこんなときに限ってこんな奴が…」
「凛、どうするんだ。一旦逃げるのか、それとも
戦うのか。」
俺は目の前のキマイラに怯みながらも凛に判断を求めた。
「ここで逃げれば奴はヒビから人間界に入ってしまいます。私が応戦するので凶弥は修復を終えたら
すぐにこの場を離脱して下さい。」
「でも、凛一人じゃ…」
俺が反論しようとすると俺と凛の間に氷の壁が
現れた。
「凶弥、絶対逃げて下さいね。」
氷に挟まれていたので表情は見えなかったが、
凛の言葉には、有無を言わせぬ気迫があった。
どうすればいいんだ。このまま凛に任せて良いのか?でも俺が出て何になる、凛の邪魔になるだけ
じゃないのか、それより自分の仕事を全うするべきじゃないのか。
グルグルと頭の中で考えが回っている。
どうすれば良い、どうすれば良い。
考えがまとまらない。どっちを選べば…
それから少し頭を抱えて考えたいたが、こんな
ことをしている内にも凛が頑張っているのだ。
それなら俺も自分の仕事をこなすべきだろう。俺はそう思いヒビの周りに機械を設置した。
機械を設置し終えると機械が光だし、ヒビの周りが結界のようなものに包まれヒビが淡く輝きだす。
「くっ…早く終わってくれ。」
焦りのせいか僅か数十秒がとても長く感じる。
こんなことをしている間にも壁の向こうからは獣の叫び声や岩が崩れる音が聞こえ、凛が頑張っているのが分かる。
「早く、早く!」
もどかしい、自分が出ていっても何も生まず、
むしろ邪魔になるかもしれないと分かっているのに何かしないと落ち着かない。
中々終わらない修復にイライラを募らせていると機械から光が消えた。
それを見るやすぐにヒビの消えた空間の下に設置されている機械を急いで抜く。
「凛、終わったぞ!」
俺は、修復が終わり機械を回収するとすぐに凛に報告し、この場を離れようとする。
しかし氷の壁から出て凛の姿が見えた時そこには、凛は大きな岩の壁に追い詰められており、凛の目の前には余裕を浮かべゆっくりと凛に近づく
キマイラがいた。
凛は致命傷こそ無いが所々から血を流し、逃げ場のない状態だ。
やばくないか、このままじゃ凛が逃げられないんじゃないか。
俺の頭の中はパニックになっておりその場から
一歩も動けなくなっていた。
このままじゃいけない、凛を助けないと、頭では分かっている。けど体が動かない。
俺はまた何も出来ずに自分の無力さが原因で大事な人を無くすのか。またなのか…
その瞬間、キマイラが足に力をいれて凛に飛びかかろうとする。
その姿を見た瞬間、色々なことが頭で渦巻きこんがらがっていた俺の中でも何かが切れた。
キマイラが凛に飛びかかり最後の一撃を与えようとした瞬間、凛とキマイラの間に黒い漆黒の壁が
できていた。
キマイラはいきなり出てきた壁に驚いたようだが勢いを殺せずそのまま壁にぶつかり後退する。
「大丈夫か凛!」
その間に俺は凛の元へ行った。
「早く…逃げて下さい。」
凛は、弱々しく声を漏らすようにそう言う。
だがその体はもうボロボロになっており、もう
戦えるようには思えなかった。
「お前もう戦えないだろう。それに俺だけが逃げてもお前が助からない!」
「私はいいので凶弥だけでも逃げて下さい。」
凛は、強情にもまだ戦おうとしている。ボロボロの体で、だ。
俺だけが助かるなんて論外だ。
助かるなら二人で、死ぬなら二人でだ。
どうせこの組織に拾われなきゃ今でも死ねずに
引きこもってるか死んでるかのどっちかだしな。
そしてもう自分が何も出来ずに大事な人を無くしたくない。
「俺はもう大事な人を無くしたくないんだよ!俺が無能で無力だったから紗智が消えた、もうあんな思いはしたくない!」
俺はもう何も考えずに頭に思い浮かぶあらんかぎりの言葉を吐き続けた。
「凛が何を怖れて焦っているのかは知らないが、
まだ凛が戦うなら俺も戦う。」
自分でも何を言ってるのかは分からない。
普通に考えても俺がここにいてもなんにも意味はない、むしろ邪魔になるだろう。
だけれども、何故か不思議と今だけはキマイラにも何にでも負ける気がしないのは確かだった。
12話目です。1ダース目です。
今回の話はこれまでの話と比べるとバトル物ぽいと思います。次の話はもっと盛り上げたいなと思っています。
後書きを含め最後まで読んで頂きありがとうございます。




