第17話:商館の会計
商館での生活が始まって三日目の夜。静寂を破る足音が、俺たちの館へと近づいていた。
「……レン。来る。五人だ。あいつらから、ベンバルと同じ……死んだ人たちの匂いと、焼け付くような薬品の臭いがする」
ドットが書斎の窓際で毛を逆立て、低く唸る。俺は手帳を閉じ、立ち上がった。
商館の重厚な扉が、外からの力で叩き割られる。侵入してきたのは、徴税局の制服を着た五人の男たちだった。先頭に立つ男が、嫌らしく口角を上げる。
「ここだな。ベンバルを殺したガキ共の屋敷というのは。俺たちは徴税局だ。不審な資産の調査に来た。……大人しく差し押さえに応じれば、命までは取らねえよ」
男たちが抜き放った剣からは、明らかに毒か魔薬を塗ったような異様な光沢が放たれていた。俺は彼らの剣を一瞥し、冷たく言い放つ。
「……不審な資産か。お前たちのその剣、随分と高くつきそうだな。……街から徴収した税金を私的に横領して、そんな凶器を買ったのか?」
男たちの顔が険しくなる。俺は迷わず腕をかざした。
「トア、頼む!」
筋肉質なトアが杖を掲げる。彼が放ったのは、俺の神経系を強制的に活性化させ、筋肉の反応速度を限界まで高める『生命活性の祝福』だ。強靭な魔力が神経伝達を数倍にブーストした瞬間、俺の視界の中で刺客たちの動きが止まったかのようにスローモーションへと変わった。
「……動きを止める。ハル、今のうちに」
俺が空間に念じると、刺客たちの眼前に一円玉が数千枚の単位で具現化し、空中で結合して巨大な「硬貨の壁」となって立ち塞がった。
男たちが力任せに振るった剣は、分厚い硬貨の壁に弾かれ、凄まじい衝撃を伴って跳ね返る。物理法則を無視して出現した圧倒的な質量を前に、刺客たちは成す術もなく動きを封じられた。
背後で杖に魔力を溜め終えたハルが、その先端を硬貨の壁に押し付けられた刺客たちへ向ける。
杖の先から放たれた極小の魔力塊が、彼らの足元の床板を正確に撃ち抜き、周囲の空気を急速冷却する。氷結の拘束魔法が刺客たちの足を床に完全に固定した。
商館の床を一切傷つけることなく、敵だけを確実に縛り上げる。
「……よくやった、ハル。おかげでこの商館を汚すことなく、スマートに捕らえられたな」
硬貨の壁が霧散し、そこに現れたのは、身動き一つ取れずに床へ縫い付けられた五人の刺客たちだった。俺は倒れた男の耳元で冷ややかに囁く。
「……ゲイボルグに伝えろ。お前の不正の証拠は、全部俺が持っている。次は俺が、お前の汚職を暴いてやるとな」
「トア、頼む!」
筋肉質なトアが杖を掲げる。彼が放ったのは、俺の神経系を強制的に活性化させ、筋肉の反応速度を限界まで高める『生命活性の祝福』だ。強靭な魔力が神経伝達を数倍にブーストした瞬間、俺の視界の中で刺客たちの動きが止まったかのようにスローモーションへと変わった。
「……動きを止める。ハル、今のうちに」
俺が空間に念じると、刺客たちの眼前に一円玉が数千枚の単位で具現化し、空中で結合して巨大な「硬貨の壁」となって立ち塞がった。
男たちが力任せに振るった剣は、分厚い硬貨の壁に弾かれ、凄まじい衝撃を伴って跳ね返る。物理法則を無視して出現した圧倒的な質量を前に、刺客たちは成す術もなく動きを封じられた。
背後で杖に魔力を溜め終えたハルが、その先端を硬貨の壁に押し付けられた刺客たちへ向ける。
杖の先から放たれた極小の魔力塊が、彼らの足元の床板を正確に撃ち抜き、周囲の空気を急速冷却する。氷結の拘束魔法が刺客たちの足を床に完全に固定した。
商館の床を一切傷つけることなく、敵だけを確実に縛り上げる。
「……よくやった、ハル。おかげでこの商館を汚すことなく、スマートに捕らえられたな」
硬貨の壁が霧散し、そこに現れたのは、身動き一つ取れずに床へ縫い付けられた五人の刺客たちだった。俺は倒れた男の耳元で冷ややかに囁く。
「……ゲイボルグに伝えろ。お前の不正の証拠は、全部俺が持っている。次は俺が、お前の汚職を暴いてやるとな」
その時だ。
先ほど部下たちが強引にこじ開けた入り口から、さらに濃密な「死」の悪臭が流れ込んできた。
砂塵の中から現れたのは、部下とは比較にならないほど強烈な悪臭を放つ男――武闘派徴税人、ゲイボルグその人だった。
あまりの早すぎる到着。奴は最初から部下の始末を見届け、即座に踏み込む算段だったらしい。
ゲイボルグがゆっくりと剣を抜く。
戦いは、休憩の暇もなく、最強の監査官とのフェーズへと突入した。
(第17話 完)




