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『古いカメラ』
夜。
高瀬明雄は部屋の片隅にある小さな棚を整理していて、ひとつの小さな箱を見つけた。
中に入っていたのは、黒い小さなカメラ。
オリンパスペンEFだった。
「……まだ残っていたのか」
手の中にすっぽり収まる大きさが、手に馴染んで心地よかった。
***
翌日。
仕事帰りに電池とフィルムを買って帰った。
カメラを手に取り、準備を整える。
ひとつひとつ確認していく。
シャッターを切ると、乾いた音がした。
「……まだ使えるな」
その感触を確かめるように、もう一度カメラを眺めた。
***
翌朝。
いつもより少し早く家を出て、海へ向かう。
まだ車も少なく、風が心地よかった。
朝の海には、まだ人影も少なかった。
ペンEFを取り出し、ファインダーを覗く。
朝の光を受けた海が、静かに広がっている。
シャッターを切る。
乾いた音が、朝の海辺に小さく鳴る。
もう一枚。
撮った写真を見ることは、まだできない。
それでも、少しだけ気持ちが弾んでいた。
ペンEFをポケットにしまう。
「よし」
明雄はエンジンをかけ、職場へ向かってセローを走らせる。
その口元には、わずかな笑みが浮かんでいた。




