海とリュウノスケ、運命の出会い③
マンションのエントランスを出ると、空はすでに夕焼け色に染まっていた。
オレンジ色に染まった道には、木々の枝が濃い長い影をのばしていた。
(村田元気かなあ。春休みは毎日塾っていってたっけ)
ひとけのない緑道を歩きながら、ぼくは4年のクラスで仲良くなった村田のことを思いだした。
性格は全然ちがうけど、図鑑が好きという共通点があって仲良くなった。
ひとりでも気の合うヤツがいると、だいぶ息がしやすくなる。
新しいクラスにもそんなヤツがいればなあ。
うっかりぼっちになっている自分を想像してしまった。
その想像をふっきるためにぼくは全力でダッシュした。
ゼェゼェ。すこし走っただけで息があがる。
「ほんと、転校生向きじゃないよなあ」自分でも笑ってしまう。
「テンコウセイってなんだ?」
突然、声がした。
周囲には誰もいない。
「なあ、テンコウセイって、おまえの名前?」
子どもみたいな声が植えこみの下の方から聞こえた。
植えこみの中に誰かいるんだろうか? こんな時間に? 子どもがひとりで?
ふりかえると外灯のあかりが誰もいない道をてらしていた。
風の音がいつの間にかしなくなった。
ぼくはマンションに引きかえそうとした。
すると、ふいに植えこみから何かがとびだしてきた。
足もとに灰色の毛玉のようなものが転がっている。
悲鳴をあげなかった自分はえらいと思う。
毛玉は猫だった。
野良にはめずらしい灰色一色の猫だ。
「なあ、おまえの名前なんていうの?」
ぼくは頭がおかしくなったんだろうか……猫がしゃべってる。
「オレ、おまえのこと毎日見てた。友だちになりたいと思ってたんだ」
灰色の猫はエメラルドみたいな目をキラキラさせてぼくを見上げた。
これがぼくとリュウノスケの出会いだ。




