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第二十八話:クトゥルフとの戦い

 ギャレット商会の連中が玄関前で待ち構えていた。

「よお、マッシモ。やっと見つけたぜ」

 先頭のヤクザがニヤニヤ笑っている。

 

 どうしよう、さっきまであんなに大勢いた警官たちは、国王陛下がいなくなったので全員すでに美文館から退去している。

 すると、マッシモ先生が急に走り出して地下室への階段に向かう。

「先生、どちらへ!」

 あたしも思わず追いかけてしまった。


 地下室へ降りる。

 電灯を点けるがマッシモ先生の姿が見えない。

 ヤクザ四人組も入ってきたが、あたしの事なんて無視。

「おい、マッシモ! 観念しろ」とか叫んでいる。


 すると、奥の方から変な呪文が聞こえてきた。


 クトゥルフ、クトゥルフ、フタグン!

 フングルイ、ムグルウナフ、クトゥルフ、ルルイエ!

 ウガフナグル、フタグン!


 イア!イア!クトゥルフフタグン!


 クトゥルフ・フタグン!

 ナイアルラトホテプ・ツガー!

 シャメッシュ、シャメッシュ!


 どうやら、マッシモ先生が唱えているようだ。

 ヤクザたちがそっちへ向かう。

 確か、その方向はあの『深淵への誘い』が置いてある場所だ。

 あたしも向かうと、絵の梱包が解かれマッシモ先生がその前に立っている。


「何やってんだ、お前は」とヤクザたちが驚いている


 マッシモ先生がニヤリと笑う。

「私は死ぬ。しかし、お前たちも死ぬんだ」


 すると、『深淵への誘い』の表面が動き始めた。

 変な触手が絵から出てきた。

 マッシモ先生の頭をふっ飛ばす。


「化け物だ!」

 逃げようとするヤクザたち。

 しかし、絵の中から怪物が飛び出てきた。

 たくさんの触手をヤクザ目がけて伸ばしてくる。

 

 ヤクザたちの頭を掴んで、次々と頭を破壊した。

 全員、床に血まみれで倒れる。


 どうしよう、次はあたしの番だ。

 怖くて動けない。

 触手があたしの顔面に向かってきた。


 その時、横から人が現れた。

「ローラさん、逃げろ」

 ロベルト調査官が化け物の触手に飛び蹴りする。


 次々と触手がロベルト調査官を襲ってくるが、正拳突きや蹴りでなんとか防いでいる。

 しかし、ついに一本の触手がロベルト調査官をふっ飛ばした。

 倉庫の壁に叩きつけられる調査官。


 化け物があたしに近づいてくる。

 もうお終いかと思ったら、ものすごい銃撃音が聴こえた。

 ルチオ教授だ。


 例の自動小銃を化け物に向けて撃っている。

 化け物がひるんでいる。


「おい、ローラさん、あの絵を焼き捨てろ!」

 教授が叫ぶ。


 焼き捨てろって言われても、どうしようかと思って周りを見回すとあたしは見つけた。

 ベルトランド主任が使っていたガスバーナー。

 あたしは事務倉庫に置いてあるガスバーナーを持って、教授の銃撃で動きが鈍っている化け物の横をすり抜ける。


『深淵への誘い』に向けて火を放った。

 絵がみるみるうちに燃えていく。

 同時に化け物も断末魔の叫び声をあげて燃えあがった。


 ああ、これで助かったと思ったあたしはすっ転ぶ。

 火が他の作品に向けて放たれてしまった。燃え始めた。

 まずい。

 火事になっちゃう。


 しかし、突然、大量の水が天井から降って来た。

 例の主任が言っていた消火装置だ。

 事務倉庫にジュシファーさんがいた。

 どうやら消火装置のボタンを押してくれたらしい。


 あたしやルチオ教授、ロベルト調査官、ジュシファーさんもずぶ濡れ。

 けど、助かった。

 とは言え、所蔵作品が水浸しになってしまった。

 どうしよう。


 その後、ルチオ教授が情報省に連絡。

 担当官たちがすぐに来て化け物の死骸とヤクザの遺体を回収。

 また貴賓室に飾られていたマッシモ先生の作品の台座も回収。

 作品自体はそのまま放置されていた。

 あたしたちは、情報省に連行され緘口令をしかれてしまった。


 表向きは、マッシモ先生を追いかけたヤクザがガスバーナーで先生を脅かしていたら操作を誤って、『深淵への誘い』に火が点いて、焦っていたら先生ともども焼け死んだってことになった。


 あたしやルチオ教授、ジュシファーさんは怪我はなかったが、ロベルト調査官は足を捻挫したらしい。そのまま入院。


 館長や事務長も情報省に呼ばれたらしい。

 その後、館長と美文館の廊下で会った。

 いつもは微笑んでいた館長が、厳しい顔をしていて、「ローラさん、大変だったね」と言っただけで去っていった。

 館長や事務長にも緘口令がしかれたらしい。


 係長や主任には表向きの情報しか知らされてないようだ。

「アホなヤクザのせいで大変だよ。作品修復に何千万エンってお金がかかるらしい」と主任がぼやいている。


「けどまあ、文化芸術庁が出してくれるらしいから、修復はゆっくりやればいいか」とかまたヘラヘラしている。


 そして、あたしに主任が言った。

「ヤクザからローラさんを助けるために怪我して入院したロベルト調査官の見舞いに行ったら。チャンスじゃないか。あの人独り者だからなあ。看病でもしてあげたら」


 え、そうなの。

 あたしでいいのかしら。

 と思いつつ、お見舞いにいくことにした。


 白いスカートに白いセーター。

 化粧は大人しめに。

 髪形は一本結にした。清楚な感じ。

 家の鏡で自分の顔を見て、よし! と気合を入れてガッツポーズ。


 ロベルト調査官の入院先に行く。

 ドキドキしながら部屋に近づく。

 調査官がベッドで寝ているのが見えた。

 しかし、その横には若い女性が。


 なんだあ、がっかり。

 恋人がいるじゃない

 主任にあおられてしまった。

 お花だけ渡して帰ろうかなあ。


「ロベルト調査官」とあたしが声をかける。

 すると、調査官の横に座っていた女性がびっくりとした表情を見せた。


「何だ、お兄ちゃん、彼女いたんじゃないの」

 え、お兄ちゃん?

 妹さんか。

 調査官に似て美人さんだ。


「いや、違うよ。この人は美文館の職員の方なんだ」


 やたら焦っているロベルト調査官。


「すごい綺麗な人じゃない。何よ、私に世話させることないのに。私、心配してたのよ。もう三十才超えて、どうするつもりなんだろうって」

「いや、だから違うって」


「あの、美文館のローラと申します」

「よろしくお願いしまーす。お花の水換えてきますね。お二人、ごゆっくり」

 微笑みながら病室を出ていく妹さん。


「しょうがないな、あいつは」とかロベルト調査官がぶつくさ言っている。


「あの、ロベルト調査官、お怪我の方は」

「いや、大した事ないよ。すぐに治るさ」

「あたしに出来ることがあれば、何でも言って下さい」

「いや、いいって。妹がいるからさ。ローラさんに迷惑かける気はないよ」


 ますます焦っているロベルト調査官。

 これは脈ありかなあ。


「それにしても、あんな化け物がこの世にいるとは思わなかったなあ」

「あ、それは口にしないって話ですが」

「わかってるよ、妹にも言ってない。ただ、あのクトゥルフ爺さん、じゃなくてルチオ教授はクトゥルフは世界を崩壊させるとか言ってたことがあるけど、俺の素人拳法でもそこそこ戦えたんだから大したことないんじゃない」


 ロベルト調査官はそんな風に考えているようだが、あたしにはわからなかった。

 それに、あたしには確認しなくてはいけないことがある。

 帰り際に、ロベルト調査官の妹さんに小声で言われた。


「ひねくれ者の兄をよろしくお願いしますね」


 うーん、あたしでいいのかなあ。

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