表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

第二十七話:授賞式

 ルチオ教授と話してたら、午前十一時の十分前。

 入口の受付台などは全て片付けて赤絨毯を床にひく。

 お偉いさんがずらりと並んで陛下を待っている。

 時間通り、国王陛下が乗っている馬車が美文館前にご到着。

 追っかけおばさんたちがキャーキャー騒いでいる。

 

 静々と国王陛下が美文館の中に入って来た。

 玄関で整列している皆さんに、にこやかな笑顔を見せながら貴賓室に向かう。

 その後ろを護衛官がぞろぞろとついていく。

 あたしも一番奥の方から陛下を御拝見。

 陛下って、ほとんど足音を立てないで歩くんだなあとあたしは思った。


 これから、国王陛下は一旦、貴賓室で休憩。

 その後、展示室で受賞者の解説を受けながら作品をご覧になる。

 それが終わると、講堂へ入り、一番前に置いてある豪華な陛下用の椅子に座って授賞式に御列席。


 さて、あたしは事務室の壁にある鏡でもう一度、化粧や髪形をチェック。

「ねえ、ジュシファーさん、あたしの服装おかしなとこない」

「大丈夫ですよー、素敵ですよー、国王陛下もかすんじゃいそうですよー」

 それは言い過ぎだって、ジュシファーさん。


 よし、そろそろ講堂へ行って準備をするかと思っていたら、警官が事務室に飛び込んできた。

「陛下の護衛官二名が貴賓室で突然倒れました。病院に連絡して下さい」

 ジュシファーさんがすぐに病院へ電話する。

 え、まさかクトゥルフの攻撃なの。


 あたしはどうしようかと思っていると、

「陛下はどうなんだ」とルチオ教授が警官に聞いている。

「陛下は特に問題ありません。もう貴賓室を出られて展示室に行っております」


 教授があたしに聞いた。

「もう、陛下は貴賓室には戻られないんだろ」

「そうですね。展示室へ行って、その後、講堂の授賞式に御列席、それが終わったら宮殿に戻りますので」

「よし、じゃあ、ちょっと貴賓室に行ってくる」

「あの、銃は置いておいた方がいいんじゃないですか」

「さすがに持っていかないよ」


 二名も護衛の方が倒れるなんて、あたしも貴賓室の状況が心配だが、もう講堂に行かなくてはいけない。


「ジュシファーさん、ごめんなさい。あたしはもう講堂へ行くので、後はまかせます」

「わかりました」


 ニコニコ顔であたしに答えるジュシファーさん。

 なんか平然としてるなあ、この娘。

 実はかなり度胸があるんじゃないかな。


 さて、講堂へ行くと、すでに招待者の皆さんはすでに椅子に座っている。

 講堂の中は満席状態。

 後方には報道陣が大勢きている。

 

 前方でドメニコ係長がわき机に置いてあるお盆の上の賞状を確認していた。

「あ、ローラさん、今日はよろしくお願いしますよ」

「はい、わかりました。ただ、陛下の護衛の人たちが二名倒れたって聞きましたけど」

「うん、私も聞いたんだよ。こんなことは始めてだな。しかし、国王陛下は全然大丈夫みたいだ」


「あの、ルチオ教授が貴賓室に確認に行きましたけど」

「え、ローラさん、あの人呼んだの」

「いや、勝手に来たんですよ。そして警察も入れちゃったんですよ」

「何か変なトラブルを起こさなきゃいいけどなあ」


 あたしは緊張して賞状が置いてあるお盆を持つ。

 講堂の扉が開いた。

 国王陛下が入ってこられた。

 そして、その後ろから館長、事務長、受賞者の方々。

 

 陛下が椅子にお座りになった。

 受賞者の方々も前方の席に座る。

 目の前に陛下。

 あたしはものすごく緊張。


 館長があたしに近づいてきて囁く。

「ローラさん、よろしくお願いいたします」

「はい、わかりました」

 館長もやや緊張気味。


 ん? 何か視線を感じる。

 扉の方からだ。

 そっちを向くとロベルト調査官が立っていた。

 たしか扉の開閉と陛下の護衛の任務もあるんだよなあ。

 ロベルト調査官はさっと目をそらす。


 なんだろう、あたしを見ていたのかなあ。

 ドキドキしてきた。

 おっと、賞状を渡す任務に集中しなきゃ。

 

 事務長が受賞者の名前を読み上げる。

 受賞者が立ち上がり、前方へ歩いて行き、陛下に向かって深々と頭を下げる。

 陛下の方も頭を下げる。


 そして、右へ向いて館長の方へ近づく。

 あたしが賞状を館長に渡す。

 館長が読み上げて、受賞者に賞状を渡す。

 講堂に列席している方々が全員拍手。

 報道陣がやたらフラッシュをたくので、少し眩しい。


 そんな感じで、十名の人に賞状を授与。

 ロベルト調査官が扉を開けた。

 陛下がお立ちになった。

 講堂の扉の外に立っていた護衛の人たちを引きつれて帰って行った。

 最後に館長が皆さんに挨拶。

 授賞式終了。

 よかった、無事に終わった。


 その後、受賞者の皆さんとその親族は陛下のお茶会に参加するため、そそくさと講堂を出る。

 報道陣もさっさと撤退。

 ミケランジェロ館長からは笑顔で、「ローラさん、ご苦労様でした」と声をかけられた。

「はい、ありがとうございました」とあたしも頭を下げる。


 館長は事務長や係長、それから主任を引きつれて、お茶会に参加するため美文館を出て行った。


 あっという間に美文館がすっからかん。

 いつもの静かな美文館になった。


 あたしは事務室に戻った。

「ああ、緊張した。ほんの二十分くらいの時間なのに」

 

 すると、ジュシファーさんがニコニコ顔であたしに話しかける。

「ちょっと、講堂を覗きに行ったんですよ。去年と違って、今年は報道陣がやたらフラッシュをたいているんです。ローラさんを撮影してたんじゃないかなー」

「そんなことないでしょ」

「どうですかねー、あと、ロベルト調査官なんですけどねー」

「ロベルト調査官がどうしたの」

「前方に立っておられたんですが、ずーっとローラさんを見てるんですよ。陛下の護衛なんてどうでもいいみたいでしたねー、もうこれは確定ですねー」

「ちょっと、からかわないでよ」


 なにが確定なのよ。

 もっとドキドキしてきた。


 おっと、さっきの陛下の護衛の方が二名倒れた件はどうなったんだろう。


「ルチオ教授はなんて言ってたの」

「そうですねー、やはりマッシモ先生が怪しいそうで、玄関で待ち構えているみたいですね」


 どういうことかなあ。

 やはり貴賓室に置いたマッシモ先生の作品が原因なのだろうか。

 しかし、すでに教授が確認済みなんだけど。

 だいたい、国王陛下は全く元気そうだった。


 そんなとこへ、事務室へ人が入ってきた。

 ロベルト調査官だ。

 ジュシファーさんがあたしに囁いた。


「私は席を外しますねー」


 ちょ、ちょっと、なんで席を外すの。

 事務室にはあたしとロベルト調査官の二人だけ。


「ローラさん、お疲れさん」

「あ、はい」

「えーと、今日は凄い綺麗だね」


 え、凄い綺麗って。

 ああ、やばい。

 ますます胸がドキドキしてきた。

 ロベルト調査官の顔が見れない。

 違うこと話そうっと。


「あの、ロベルト調査官は宮殿には行かないんですか」

「俺はもう美文館の授賞式でお役御免さ」

「そうですか」

「えーと、ローラさん、例の絵は出来上がったの」

「はい、もう少しです」

「そうか、うーん、来週の休みなんだけど」


 来週の休みって。

 な、なんだろう。

 何の話かしら。


 あたしがドキドキしていると廊下をズカズカと歩く音がしてきた。

 ルチオ教授が事務室へ入ってきた。


「おい、ローラさん、大変だぞ。って、お前はヤクザ調査官」

「なんだよ、クトゥルフ爺さんか。なに勝手に美文館に入って来てんだよ」

「ちゃんと許可を得ているよ。それより護衛官が倒れた原因がわかったぞ」


 思わずあたしはルチオ教授に聞いた。

「何が原因だったんですか」

「台座だよ。マッシモ・プピーロの作品の台座。あれにクトゥルフが描かれていたんだ。多分、展示の業者が倒れたのも護衛官が二名倒れたのもそれが原因だ。今、台座の部分は木辺で隠してある。以前、あの作品を確認したときは横に置いてあったが、その下に平らな段ボール箱が置いてあったはず。その中に台座が入ってたんだろう」


 ロベルト調査官が不快な顔をする。

「また、なにをわけのわからないこと言ってんだよ、クトゥルフ爺さんよお」

「うるさいぞ、ヤクザ調査官。運送業者も入れると三名も人が倒れたんだぞ。わかってんのか、お前は」

「じゃあ、なんで国王陛下は無事なんだよ」

「今、調査中だ。それで、マッシモ・プピーロを玄関で捕まえようとしたんだが見つけられなかった。もう逃げたかもしれんなあ」

「ふざけたこと言ってないで、さっさと帰れよ、クトゥルフ爺さんよお」

「なんだと、このヤクザ調査官」


 二人がつかみ合いになりそうなのをあたしがおさえる。


「じゃあ、ちょっと貴賓室に言って確認しようじゃないか、ヤクザ調査官」

「ああ、行ってやるよ。クトゥルフが現れたら俺の正拳突きで倒してやるよ、このクトゥルフ爺さんよお」

 口論しながら二人は貴賓室に向かった。


 ジュシファーさんが事務室に戻ってきた。

「ローラさん残念でしたねー、ルチオ教授も罪な方ですね」

「もしかして、廊下で様子を見てたの」

「そうですねー、ローラさん、緊張してましたね」

「もう、ジュシファーさん、からかわないでよー」


 ああ、疲れた。

 疲れたんで、トイレに行って化粧直し。

 

 回廊に出ると誰も居なくなったはずの講堂に人影が見えた。

 もうみんな帰ったはずなのに。

 気になって講堂へ向かう。

 中に入ると、一人だけ椅子に座ってうつむいている人がいた。

 マッシモ・プピーロ先生だ。


 思わず声をかけた。

「マッシモ先生」

 先生が顔をあげた。青白く生気の無い顔。


「ああ、確かあなたは美文館の職員さんでしたね」

「はい、そうです。あの、先生、授賞式はもう終了しましたけど」

「わかってます。私も二年前は授賞式に出席して、賞状をいただいたもんです。嬉しかったなあ。そして、今年は新会員で出席するつもりだったんですけどねえ」


 何だかしょんぼりしているマッシモ先生。

 この先生が国王陛下に危害をくわえようとしているようには見えないなあ。


「あの、マッシモ先生。会員にはなれなかったようですが、作品は貴賓室に飾られましたよ。国王陛下もご覧になられて、それは名誉なことじゃないんですか」

「いや、陛下はご覧になってないでしょう」


 え、どうしてそう思うのかな。


「さて、私も帰りますか」

 マッシモ先生がゆっくりと立ち上がるが、少しぐらついた。

「あ、先生、大丈夫ですか」

「すみません。ちょっとめまいがして。大丈夫です」

 あたしは心配になり、マッシモ先生を支えながら講堂を出た。

 どうしようかなあ、ルチオ教授を呼んでこようかなあと考えながら、玄関へ向かう。


 そして、玄関前まで行くと、ズカズカと歩く音がしてきた。

 四人組の男たちが美文館に入ってきた。

 ギャレット商会の連中じゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ