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異世界恋愛小説の世界に転生したので、とりあえず当て馬幼馴染キャラは私が幸せにしておきますね!  作者: 篠目いおり


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物語の終わりと始まりⅠ

翌日。私は学園へ向かう馬車に乗っている間、考え事をしていた。


昨日、好きな小説の世界に転生したことに気づいたのは、学園のこと…主に、学園にいる三人の男女について思い出したから。


私は彼らとは全く接点が無かったが、学園で生活していてその噂を聞かない日は無かった。一挙一動がいちいち噂になるくらいにこの三人は有名人だったのだ。


まず一人目。ローズ・リリアン伯爵令嬢。彼女は私より一つ年上の先輩だ。明るくて、誰にでも分け隔てない態度で接する。そして可愛い。


二人目は、キース・クラーク王太子殿下。彼も同じく一つ年上の先輩だ。とにかくイケメンで、なんでもそつなくこなす優等生だけど、人に冷たくて敬遠されがちなところがある。ただ一人、ローズ様を除いて。キース様は彼女を溺愛していて、彼女にのみ蕩けるくらいに甘い笑みを浮かべる。


そして、三人目。私の最愛の人、アーノルド・エルヴィン公爵子息。ローズ様と同い年の幼馴染だ。途轍もない美男美女のローズ様・キース様にも全く劣らないビジュアルを持っている。特に艶やかな黒髪や目元の涙ぼくろは色気が凄くて、最高だ。


キース様とは違い、アーノルド様は人当たりが良い。けど、それはあくまでも外面で、心からの笑みを見せるのはローズ様の前でだけ。彼女が誰かに害されれば、必ず犯人を探し出しどこまでも追い詰め、犯罪に手を染めることも厭わないだろう。それくらいに、彼女を愛しているのだ。


さて、お分かりいただけただろうか。つまり、ローズ様・キース様・アーノルド様は三角関係なのだ。


キース様・アーノルド様は共にローズ様を溺愛。しかし、彼女は二人のうちどちらが好き、というようなはっきりしたことを言うことはなかった。今までは。


「冷酷な筈の王太子殿下が、なぜか溺愛してきます」というタイトルの通り、最終的に選ばれるのはキース様。アーノルド様は振られてしまう。そして恐らくだが、この世界のキース様とローズ様は既に結ばれている。記憶が戻る前の私が、「ローズ様はキース様が好きだった」という噂を同級生から聞いていた。そのことが周りに知られるのはローズ様がキース様に告白した後のことの筈なので、ここは物語終了後の世界という訳だ。


「はあ…アーノルド様…」


アーノルド様は本当にローズ様のことが好きだった。


公爵家の長男として敵を作らないよう上手く立ち回るよう躾けられてきたのに、ローズ様の危機があれば父からの教えに背き彼女を守ろうとしていた。キース様と楽しそうに話している彼女の姿を見て胸を痛めていたのに、それを決して口に出さず、彼女の前では常に笑顔でいた。


…幼い頃に交わした、「大きくなったら結婚しよう」という約束をローズ様が忘れてしまっていたとしても、恨み言一つ言わなかった。その約束はアーノルド様にとってなにより大切な宝物だったのに。


私は、アーノルド様の努力や苦痛を良く知っている。彼のいい所を沢山知っている。前世では、私はただの読者でしかなくて、彼とは住む世界も何もかもが違ったけど、今世は違う。


(私がアーノルド様を幸せにする…!)


アーノルド様の強い姿に、今まで沢山の勇気をもらったから。そう、あのときも…。


「お嬢様、着きました」

「…分かったわ」


コンコン、と馬車のドアがノックされ、ワンテンポ遅れて返事をする。全く気付かなかった。少し考え込み過ぎていたようだ。


馬車から降り、学園の大きな門の前に立つ。私はぐっと拳を握り締め、大きな声で言った。


「待っててください!アーノルド様!!」

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