06:没落
事件から季節を一つ跨いで、そろそろ夏になる頃。傾いた御家の姿にもしかしたら祖先たちはあの世で貴族にあるまじき行為として怒っているかもしれない。それでも私はあの時のお父様の姿が頼もしかったし尊敬もしている。
多額の賠償金で家の中の色んな物を売った。使用人を解雇したりもした。足りない分はパンハーニ商会から借りた。かろうじて領地だけは残ったが風前の灯だ。領民からも多額の税金を取る事になるので、さぞや恨まれていることだろうと思ったらパンハーニ商会が今回の事の顛末を領民に周知して回ったらしい。その結果、領民からは一定の支持を得られた。少なくとも暴動の類は起きていない……が。
「でもそれもいつまで持つか……」
すっからかんの城。本当は城も売りに出したいが、こんなの売りに出しても買う人が居ないからと突っぱねられた。使用人も居ないのに、こんなデカい家に居ても維持できないので、結局住みやすい小さな家に引っ越した。それもこれもパンハーニ商会の伝手とお金だ。
「何でこんなに良くしてくれるの?」
お父様に聞いてみた。
「昔に先代様がパンハーニ商会の長のムソリーニが魔物に襲われているところを助けたことがある。その時、まだムソリーニは行商人でな。それからなんだかんだで縁があって引き立てて今に至るらしい」
なるほど。お祖父様からの繋がりか。
「でも何時までもその恩に縋っているわけにはいかないんでしょ?」
「当然だ。だが、なぁ……」
そう。手がないのだ。もともと特産のない領地だ。木を売る。毛皮を売る。それぐらいしかない土地。
「開拓って出来ないの?」
「出来ないわけじゃない。ただ短い夏の間に、わずかばかり開拓しても、な」
焼け石に水ってわけね。
「お父様」
「なんだ?」
「とりあえず自立するところから始めましょう!」
「うん?」
「まずは生活費を自分たちの手で手に入れるところから始めるべきです!」
「おぉ。そうだな」
「働き口は……」
「ムソリーニへ頼むことになるのか……借りばかりが増えるな」
「辛抱ですわ。お父様」
その後、ムソリーニおじさまに頼んで仕事を斡旋してもらうことになった。
その結果。私は、とある工房へ家政婦として出向くことに。ちなみにお父様とお母様はムソリーニおじさまの下で雑用を任されるのだそうだ。貴族が雑用……普通なら屈辱だ侮辱だと怒るところをそれでも父は胸を張って雑務を行っている。母はしょうがないわねって感じだ。でも意外に活き活きしているのはどうしてだろうかと尋ねてみたら「なんか……刺激的なんだもの。新鮮だし!」と言って私の頭を撫でながら笑った。ごめんなさい。そしてありがとうございます。
だからこそ。ここで挫けて負けるわけにはいかないのだ。泥水を啜ったって生きて、生きて生き足搔いて幸せになってやるんだから!




