13:融合
精霊石と魔石を繋ぐのは、難しいことではないという。ただ問題はその後が安定しないことが問題らしい。
「物質を分解して再構築するのが錬金術師の真骨頂だからね」
基礎にして奥義なのだそうだ。シリル君が説明をしてくれたが私には理解できなかった。私たちは色付きのゴーグルを装着する。
「さて、繋ぐ準備はできた。ここでレオナ様に頼みたいことがあるんだけど?」
「うん。なに?」
「今まで精霊に意思があるのは知られていたけど魔石に意思があるのは知られていなかった。そこで風の精霊石と火の精霊石に魔石を通して繋がるように説得をして欲しいんだ」
「なるほど。人間の魔法で無理やり繋ぐんじゃなくて、精霊たちに話を通しておくんだね」
「うん」
私はまず手元にある風の精霊石に話しかけた。
「精霊様。風の精霊様」
「あら人間……確かレオナだったかな」
「はい。火の精霊様と繋がって頂けませんか?」
「……う~ん。それは無理かな。僕は僕だから」
「えっと、間に仲介者を入れますからお願いできますか?」
「仲介者?」
「はい。魔石の精霊様です」
「魔石の精霊? 魔石……魔石。あぁ未成熟体のことか」
「未成熟体……というのですね。はい。その未成熟体が寂しいと仰っておいでです」
「ふむ……」
「ダメでしょうか?」
「いや。良いよ。未成熟体を間に立て他の精霊石と繋がろうじゃないか」
「あ、ありがとうございます!」
私はシリル君に大きく頷いてみせた。そして火の精霊様にも同様に話しかける。すると先ほどよりもすんなりと話が通った。
「精霊が記憶を共有しているのはほぼ確定だよ。シリル君!」
「そうか。そして繋ぐ許可も出たんだね?」
私は頷く。するとシリル君が目を輝かせて、風の精霊石と火の精霊石と魔石を繋ぐ準備を始めた。理論上では光の属性が生まれるのではと言われている。結果が光るだけでわかりやすいし失敗しても被害がないだろうという判断の下でこの2つから始めることにしたのだ。シリル君が風の魔石を左手に乗せ、そして火の精霊石を右手に握る。フラスコの中には魔石が入れてある。するとシリル君が輝き出した。
「ちょ、ちょちょシリル君が光ってるんだけど!」
「うん。物質を変化させる錬金術師の魔法だね。これからフラスコの中に2つを入れるよ」
シリルくんを覆っていた光が両手へと集まっていく。そして今の今まで丸い石の形をしていた風の精霊石と火の精霊石がドロっとした物質に変化していった。それをフラスコの両端に流し込むと、まるで磁石が惹きつけ合うようにズルズルと魔石へと移動し、そして魔石を中心に緑色の流動体と赤色の流動体が混じり始めた。すると透明の魔石も溶けて一つの流動体へ。そして……3つが完璧に混じって黄色へと変化した。その瞬間。眩い光が辺りを走り抜けた。光量が徐々に落ち着くと、フラスコの中ではユラユラと不安定に光っている少し大きくなった石があった。
シリル君が「成功だ……」と一言だけ呟いた。声が震えている。しかしその瞬間。光量が上がっていく。私は思わず身を守る姿勢を取る。
「ば、爆発する!?」
「そんな!」
叫ぶ私を庇うようにシリル君が私に覆いかぶさった。
次の瞬間。光が大きく弾けた。色付きゴーグル越しでも目を開けていられないぐらいの光量だ。
「いやぁあああああああ!」
「うわぁああああああ!」
お父様!
お母様!
心のなかで二人に助けを求める。が、当然助けになど来るはずもなく……そして同時に目蓋越しにも目を焼くが如き光が数秒間続いた。
眩しいよぅ。すると次第に光量が落ちていく。しばらく目を閉じて大人しくしていると、そこにバンッ!と音がした。体がびくっと強張る。
「シリル君! レオナ君! 今の光は!」
どうやらドアを開けた音のようだ。
そしてこの声はグレン様だ。
「た、助かった……?」
まだ目がシパシパ、チカチカしているが、恐る恐る目を開ける。私の声にシリル君も顔を上げた。
「し、師匠……」
実験は失敗?
私がそう言おうとした刹那。シリル君が叫んだ。
「師匠! 成功です! 融合に成功しました!」
へ?
成功……したの?
意味が分からなくて戸惑っていると、グレン様が目を三角にして怒鳴った。
「この、バカヤロー! 融合そのものは成功したかもしれんが出力制御に失敗してるじゃないか!」
あぁ、そういうことと納得した私は、狂喜乱舞するシリル君と今まで見たことないぐらい怒っているグレン様を見て呟いた。
「あの……私。おトイレに行って来てもいいですか? ちょっとチビりました」
するとドアの前に立っていたグレン様が静かに道を譲ってくれたのだった。




