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声フェチ令嬢と魔石の声  作者: 月城キナ


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12/16

12:魔石の声

 グレン様が魔道具の拡声器を持って工房をでて来たのは、2日後だった。


「あたたたた。体の筋肉がこわばってしまった。レオナ君。ちょっと私の肩を揉んでくれるかい?」

「はい。喜んで!」


 というわけで食事を温めながら、合間にグレン様の肩を揉む。


「お客さん。凝ってますねぇ」


 もみもみもみもみ。


「だれがお客さんだ」


 ふふ。


 と、まぁ冗談は横において本題だ。


「拡声器は完成したんですか?」

「あぁ。出来たよ。さっそく確かめに─」

「グレン様は食事をしていて下さい。2日もろくに食べてないんですから」

「あぁ。そうだな。しょうがない。すぐに食べ終わるから君たちだけで確認をしておいてくれ」

「はい」


 グレン様に温めた食事を出して、私とシリル君はさっそく拡声器を手に資材室置き場へ直行した。


「ドキドキしますね」


 シリル君から話しかけてくるとは、よっぽどだな。


「シリル君も?」

「はい。レオナ様もですか?」

「それはもう」

「じゃあさっそく試しましょうか」


 というわけで、魔石と魔石を隣り合わせて拡声器も置いてみた。すると……確かに声がはっきりと聞こえるようなった。


「き、聞こえる! 聞こえるよシリル君!」

「そう? 僕には耳鳴りがするだけだけど?」

「なるほど。たぶん人が聞こえるか聞こえないかのギリギリのラインなのかも?」

「なるほど。で、魔石はなんて言っているんだ?」

「うん。どっちも『つながりたい』とか『さびしい』『たりない』って単語を繰り返しているだけだね。それもはっきりそう言っているわけじゃなくて音が割れてる? 掠れているというか……とにかく、とても聞き取りづらい」

「なるほど。発声が不明瞭で小さかったから意味が分からなかったのか。それにしても……繋がりたい。寂しい。足りたいって、まるで何かを求めているようだ」


 なんだろう。何を繋げばいいんだろう?


 私が首を傾げていると、シリル君が何かを閃いたようだ。


「もしかして!」


 風の精霊石を手にとって隣に置いたようだ。私はその様子を見て、ドキドキしっぱなし。一体何が起きるんだろう?


 すると喋る内容が変わった。


「シ、シリル君。内容が変わったよ! 魔石の方は『つながる。つながりたい』って喋ってるのに対して精霊石は『接続する?』『接続できる?』って言ってる!」

「やっぱりか。でもそれって……」


 戸惑う私にシリル君。


「師匠を呼んできて!」


 言われた私は即座に食堂へ走った。そうしたらグレン様が机の上で突っ伏しているのが目に入った。


「ちょ! グレン様。大丈夫ですか?」


 倒れたのかと思って、駆け寄ると小さな寝息が聞こえる。


「食事中に寝落ちしちゃったのか」


 そりゃあね。ここのところ食事も睡眠も、ほとんど取ってなかっただろうからね。


 私一人では、どうしようもない状態なのでシリル君を呼びに行く。


「グレン様。食堂で寝てるんだけど?」

「そっか。じゃあそのまま寝かせておこう。どっちみち僕ら2人じゃ動かせないから」

「そう、だね。で、こっちの方はどうする?」

「うん……僕らだけで接続とやらをやってみない?」

「大丈夫なの?」

「たぶん……」

「精霊石って接続したら爆発が起きるんでしょ?」

「僕の推論が正しければ、たぶん大丈夫だよ?」

「推論?」

「そう。どう言ったらいいかな……」


 少し考えてシリル君。


「うん。これかな」


 そう言って話し始めた。


「以前に精霊石や魔石を細胞に見立てたよね。あの理屈で行けば精霊石は骨や血管といった完成された細胞なんだろう。そんな細胞を融合しようとしたって融合するわけがない。全然別の役割を持った器官だから。だから精霊石同士は爆発という現象を起こしていたんだ」

「うん」

「でも魔石は、きっと完成していない細胞……幹細胞なんじゃないかなって思ったんだ。それ単体では意味をなさない細胞。そこで彼らの『つながりたい』という言葉だ」


 なるほど。


「つまり精霊石と魔石は互いを求め合っている?」

「そういうこと。求め合っている者同士なんだ。だからきっと大丈夫なはずだ」

「そっか。じゃあ……やっちゃう?」

「うん。やろう!」


 シリル君主導の下、実験の準備を始める私達。


「もしこれが成功すれば……きっと世界が変わる!」


 彼の言葉が私の耳に残った。歴史が変わる瞬間をこの目にできるかもしれない。

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