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声フェチ令嬢と魔石の声  作者: 月城キナ


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11/16

11:声

 私が2人にとって衝撃発言をした日から10日が過ぎた。時折2人に協力をして精霊石の声に耳を傾け、色んな質問をした。私はその内容のほとんどを理解できなかったが、2人が満足そうに研究室から出入りしているので余計な口は挟まず通訳に徹した。


 そんな次の日。夏真っ盛りの今日。部屋の中は暑かった。日頃は送風の魔道具が動いているのだが、ちょうど3等級の精霊石が切れて送風装置が止まっているためだ。そのため昼間なのに家の中は誰も居ないかのように静か。家の外では時折、人々の交流する喧騒が聞こえる程度。私は3人分の昼食を載せた皿を用意していた。そろそろお昼の時間だ。2人を部屋から引っ張り出さないといけない。


 私が研究室へと足を向けて歩いていると、その手前の部屋から何か聞こえた気がした。


「ん?」


 耳を澄ませると確かに資材室から声が聞こえる。


「どろぼう?」


 たしかに精霊石は高価な品だ。泥棒が居てもおかしくない。


 私は近くにあった箒を手に取り握りしめた。すぐに男共に頼ろうかとも思ったが、彼らが頼りになるとは思えない。


「とにかく確認しないと」


 まずはそこからだと、自分に言い聞かせて資材室のドアの取手に手を掛けて、カチャリと開く。ヒソヒソとした声はまだ聞こえる。そっと部屋へ入って見回すが人がいる様子はない。


「あれ?」


 でも未だに小さな声は聞こえている。何を言っているかまでは聞き取れない。私は声のする方へ、そっと足を進めた。そうしてたどりついたのは大きな箱。その中から声がするのだ。そっと開くとそこには魔石が大量に入っていた。


「魔石から声がする……?」


 どうして?


 この家には幾つか魔道具があってそれらを見てきたが、そのどれもに魔石は使われていた。にも関わらず声が聞こえたなんて初めてだ。実際に魔石コンロから声が聞こえたなんてことはなかった。魔石に精霊が宿っているなら今までに何処かの時点で聞こえていたはずだ。


 どうして?


 シィンと静かな室内。私は動きを止めている送風装置に目を向けた。そして聞こえる小さな声。もしかして送風装置の音にかき消されていた?


 何となく原因を突き止めた気がしたので、魔石の声に耳を傾けてみた。すると色んな魔石が会話らしきやり取りをしているのだ。


「魔石同士が会話をしている……?」


 試しに魔石を一つ取り上げてみた。すると静かになったのだ。


「あれ?」


 魔石を再び箱の中に戻す。するとまたお喋りが始まった。それを何度か繰り返したが、どの魔石も魔石同士では会話をするのに単体では会話をしないのだ。


「どういうこと?」


 試しに話しかけてもみた。しかしやはりこっちには意識を向けてくれない。そこで一つ気になった。


「精霊石同士って会話をしたりするのかな?」


 私は思いついたことの答えが知りたくなって、資材室の中の3等級の精霊石2個を隣り合わせに置いてみた。


「会話をしない……」


 こっちが話しかけると、会話はするのに、それ単体同士では会話をしない。なら魔石と精霊石はどうだ?


 すると魔石と精霊石は会話を始めた。というか魔石が語りかけ精霊石はそれに答えている関係のようだ。


 何かを発見してしまったかもしれないということが嬉しくて、私は研究室に居る二人の下へ向かった。


 そしてドアをコンコンコンとノックする。しかし中に2人とも居るはずなのに返事がない。


 まぁね、知ってた。なので勝手にドアを開けて室内に入る。


「グレン様……シリル君も。ちょっといいかな?」


 グレン様が顔を上げた。シリル君は何やら書付をしているようだ。まぁいい。


「実はちょっと面白い発見をしたかもしれません」

「面白い発見?」

「はい」


 さきほどの魔石と精霊石のことを話す。すると……。


「一個取り出すと静かになる? ふぅむ。それは面白い発見かもしれません。が……」


 シリル君が顔を上げた。


「それを確かめるすべがない……ですよね?」


 グレン様が頷く。


「そうなんですよ。それを知ることが出来るのは、あくまでレオナ君のみ。我々では確認しようがない」


 3人で何とかこの発見を形として再現できないかと考えてみた。魔石同士は喋るが声が小さすぎて何を言っているのか分からない。そして私が話しかけても答えない。魔石と精霊石も喋る。ただし魔石が話しかける形でだ。精霊石はそれに答えているだけのように聞こえる。ちなみにこの時の魔石の声も小さすぎて不明瞭で聞こえない。精霊石の声ははっきりと聞こえるけどね。そして精霊石同士。これは全然しゃべらない。ただしこっちが話しかけたら答えてはくれる。


 グレン師匠の目がキラキラと輝いている。


「ふぅむ。面白いな。この現象。シリル君はどう思うね?」


 するとシリル君が小さく叫んだ。


「あっ、師匠!」

「どうした?」

「声が小さすぎるなら、拡声器を作るのはどうでしょう?」

「魔道具か!」

「はい。あれなら」

「ふむ、ふむ! いいぞ。シリル君。ナイス、アイディアだ! よし、ちょっと私が作ってこよう。少し工房に籠もるから何かあったら呼んでくれ」


 そう言っていそいそと工房へ。私は不思議に思った。


「そんな簡単に作れる魔道具なの?」


 シリル君が頷く。


「師匠なら2日もあれば作れるはずです」


 ふぅん。


「あっ、そうだ。昼食ができたんだけど……グレン師匠は行っちゃったね」

「ああなったら工房から出てきませんよ」

「そっか。しょうがないシリル君だけでも食べちゃって」

「……そうですね」


 2人で食堂へ移動する。


 そこでシリル君と2人で食事をするのだが、食事中も何故、魔石は勝手に喋って精霊石は話しかけない限り喋らないのかの考察を行った。そして最終的に拡声器で魔石が何を喋っているのかが分かれば良いよね。という結論で話は締めくくられたのだった。

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