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原作者を殺したい  作者: 鈴井 六
原作者を殺したい

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4/10

「ジェイドくーん、魔法撃ちまーす」

「ん」


 ニトの掛け声に合わせて横に跳ぶ。

 直後、火の玉が通り過ぎて前の魔物を焼いた。


 シナリオどおりにカジノで爆死したオレらは、シナリオどおりに金稼ぎで魔物討伐している。

 依頼主の町長曰く『最近町の周辺で魔物を見かけることが増えて困っている』って話だったが、どっちかっつーと少ないほうだからさっさと終わりそうだ。

 ニトは町に置いてきてもよかったけどゴネるから連れてきた。

 正直戦力としてアテにはしてなかったんだけど。


 ひ弱そうな見た目に反してこいつの魔法は普通に強い。


「……お前ってなんなの?」

「学生です」

「前世じゃなくて、今のお前のこと」


 そんな話をしながらまた魔物を探して適当に歩き回る。


「ここでのボクは『才能と知性に溢れ最年少で大賢者になった男の子』って感じです」


 言ってて恥ずかしくねーのか、こいつ。


「賢者だからオレを料理に目覚めさせられたのか?」

「あれはその人の中に眠る潜在的な才能を開花させた感じです。……それが料理だったのはボクが思いつきで書いたからですけど」

「そもそも元の物語ではオレとお前はなんで一緒に魔王討伐の旅するんだ」


 今は、起こること全部知ってるなら一緒にいたほうが都合いいからだけど。


「賢者のボクがジェイドくんの追放現場を目撃して、ひと目でジェイドくんが魔王を倒す勇者になるって見抜くんです。これはまあ……大賢者だけの特別な予見の力みたいなやつで、ちょっとご都合主義なんですけど」

「で、親切な大賢者は追放された斧使いの能力を解放して、旅にまでついてきてくれると」

「そ、そうです……」


 ほんとに賢者をお人好しって設定にしたのか、それともまだオレに言ってない事情でもあるのか。

 もし後者だったら、隠してる時点でロクなことにならなさそうだが。


「にしても、斧使いと賢者の二人旅ねえ。ヘンな組み合わせ」

「な、なんでですか! 物理攻撃型と万能魔法型はバランスいいでしょ!」

「いやそれなら普通、剣士とか」


 アッシュが剣士だ。

 あいつのほうが、ずっと主人公って感じだと思う。なんでオレみたいな主人公にしたんだか。


「何言ってんですか! 斧、デカくて強くてカッコいいじゃないですか!」


 あー、なんとなくコイツがオレを主人公にした理由が読めてきた。


「お前ってさ、自分と真逆のヤツ書こうとしてたろ」

「……真逆?」

「チビ、泣き虫、非力、敬語。全部オレと逆だもんなァ?」

「……本当のことだけど悪口に聞こえます」

「ふん。オレみたいなイケてる大人の男に憧れてんのかー?」

「ジェイドくんはまだ十九歳です。……まあ、そりゃ、憧れは大いに……盛り込みましたけど」


 悔しそうな、照れくさそうな、そんな顔でこっちを見てる。


「なあニト。お前オレみたいになりてえの? オレのどういうとこが一番好きだよ?」

「うわー……鬱陶しい。あ、魔物がいましたー。さっさと戦闘準備してくださーい」

「なあどこだよ?」


 あいつの憧れの要素で構成されたのがオレってことだろ。

 まあ、悪い気はしねーな。



  ―――



 日が暮れたあたりで町に戻って町長に駆除した魔物の数を報告する。

 魔物の体内にある魔石を取り出して、それの数で何体倒したかの証明するってわけだ。

 あんまり魔物が出てこなかったからそこまでの数にはならなかった。にも関わらず町長はオレを褒め称えまくった。


 オレ、だけを。


「なあ、なんでお前がいないみたいな扱いなわけ?」


 そばにいるニトにコソコソ耳打ちする。

 その間も町長はペラペラしゃべり続けてる。


「……あー、多分ボクが『ジェイドくんヨイショエピソード』にするためにジェイドくんを褒めるセリフしか書かなかったからじゃないですかねー」

「不自然だろうが」

「いやー、文字だとあんまり気にならないんですよね」


 こいつマジで本書くセンスねーわ。


 しばらく町長の『オレ持ち上げトーク』を欠伸しながら聞く。

 ニトは後ろで壁に寄りかかって腕組んでそれを聞きながら「ヤツはワシが創った」とか言いながらドヤ顔してる。クソうぜぇ。


 まあ、何はともあれ報酬はきっちりもらった。これで野宿回避だ。

 ニトの叫び声で叩き起こされて、半日歩いてこの町に到着。んで、速攻でカジノ行って速攻で爆死して、魔物退治して、今。

 体力オバケのオレでもさすがに疲れた。まあニトの回復魔法があったから別に体は疲れてない。気分の問題だ。

 熱いシャワー浴びて柔らかいベッドで寝る。それで今日は終わり。



  ―――



「ちょっとー! なんでまたベッドひとつしかないんですかー!」


 宿の部屋に入るなりニトが叫ぶ。


「いいじゃん、デカいし。ふたりでも足りるだろ。男同士なんだから細かいこと気にしすんな」

「そ、そうです……けど。現代日本人は繊細なんですっ」


 ゲンダイニホン人ってなんだよ。


「ジェイドくん、あんまりくっつかないでくださいよ! け、今朝だって起きたら抱き枕にされててびっくりして……!」

「うるせえ寝ろ」

「ヴァッ!?」


 ギャーギャーうるさいから持ち上げてベッドにぶん投げたら、顔から突っ込んで変な声出した。やっと静かになった。

 ってかこのやり取りこれから毎日やるのかよ。めんどくさ。


 ……いや、面倒だからうんざりしてるわけじゃねえ。

 昨日から思ってたけど、この反応は、多分……そういうことなんだろ。

 ってか、オレはオレでふたりで寝るの、結構気ぃ遣ってんだけど。

 こいつ、わかってんのか?

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