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原作者を殺したい  作者: 鈴井 六
原作者を殺したい

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2/9

「つまりお前は別の世界の人間でー?」

「……ハイ」

「この世界はお前が書いた物語の中でー?」

「……ハイ」

「オレがその物語の主人公でー?」

「……ハイ」

「オレがガキの頃からの付き合いの幼馴染に急にクビ切られたのも“物語の強制力”のせいだってー?」

「……ハイ」

「やっぱお前殺すわ」

「ひぃぃぃ! ごめんなさいっ!!」


 あの後、オレの「殺していい?」にビビり散らかしたチビが泣き喚いた。

 ガタイが良くて人相の悪いオレと、泣き喚くチビ。

 そりゃあもう、そこら中から冷たい視線がオレに向けられた。

 仕方なくチビを米俵みたく担いで町のはずれまで走った。この世界に米俵ってあったっけ。


 いい感じの切り株の上にチビを座らせて聞き出した話が、これまた意味不明だった。


「あーもう、うっせえなぁ。で、お前の物語の中ではオレはこれからどうすんだ?」

「えっと……魔王を、倒します」

「なんでわざわざ六人パーティーから離脱して一人で魔王倒すんだよ」

「すみません……追放モノ流行っていたので。あと、ボクも一緒なのでふたりです」


 追放流行るってなんだよ。こいつのいた世界イカれてんのか。

 しかもこんなチビが一緒とか。戦力にならんどころか、お守りしながら魔王倒すのかよオレ。


「だ、大丈夫です! 追放後の定番といえば能力の覚醒! ジェイドくんもちゃんと最強の能力に目覚めます!」


 グッと拳を握って力説するチビ。


「ふーん。どんな能力だ?」

「そ、それは――」



  ―――



 紫色のデカいトカゲみたいな魔物に斧を振り下ろす。

 自分で言うのもアレだけどそこそこ強いオレなので、このくらいなら一撃だ。

 絶命した魔物をナイフで解体する。緑色の血が手に流れてきて気持ちわりぃ。

 後ろから「うへぇ……」とチビの情けない声が聞こえた。

 適当な大きさにした肉を適当な棒に指して熾しておいた火に焚べる。


「オレはさっき食堂でしこたま食ったからお前が食えよ」

「ええええ!?」

「お前が考えた設定ではこれで最高にウマい肉になるんだろ」


 なにせオレが目覚めたのは“料理スキル”なんだから。

 しかも素材がどれだけ悪くてもオレが作った料理なら絶対にウマくなるらしい。

 焼くだけって料理っていうのか。

 しかも目覚め方がチビがオレの額に手をあてるだけっていうお手軽さ。

 ホントに目覚めたかピンとこない方法だったから確かめるためにこうして魔物狩りをしている。


「ホラ食え」

「うえぇぇん……」


 外側は紫、内側は緑のどう見ても食い物の見た目じゃない肉を渡す。

 オレなら絶対食わねえ。


「うぅ……おいしいです……」

「マジだったのか。オレの最強の能力が料理って」


 魔王討伐に必要なんですかねえ。


「オレ斧使いの最上位スキル全部習得済みなんだけど、そのオレに料理スキル必要だったか? なあ?」

「ひぃぃぃ……! ごめんなさい。ちょうどこの辺りの設定考えてたときに読んでたのが料理スキルでスローライフする小説だったんで、影響されましたぁ……」

「しないよな? オレ、スローライフしないよな?」

「しないです……」

「魔王討伐に使うか? このスキル」

「……今後物語の中にジェイドくんが料理をするシーンはないです」

「やっぱ死ねお前」

「ううう……」


 思いつきで物語を書くんじゃねえ。

 チビは三角座りでシュンとしながら肉をモソモソ齧ってる。

 さっきまで被っていたローブのフードはとっている。

 改めて顔を見るとだいぶ子どもっぽい。十三とか十四歳くらいか?

 髪と同じ薄い茶色のクリクリした目に涙が滲んでいる。

 ……また泣き喚かれても面倒だ。あんまイジメないでおくか。


「あー……名前は?」

「えっと、ニト……です」

「元の世界ではなにしてたんだよ」

「高校生……いや、学生……いやいや、高校生って学生じゃなくて生徒だっけ? まあその、普通の学生、です」

「お前の世界では、普通の学生はよく別の世界に行くもんなの?」


 追放が流行る世界なんだからオレの思う普通ではないんだろ、きっと。


「実際に行く人はいないと思います……。そういう物語はたくさんありますけど」


 まーた物語かよ。


「おま……ニトは、来たくてこっち来たわけ?」

「そういう妄想はたまに……でも本当にそういうこと起きるとは考えたことなかったし……ボク、高熱出して死んじゃって……気がついたらこっちに……」


 話しながらどんどん声が震えてきてる。

 ……これはアレか。


「うっ……うわあぁぁぁん! おとーさんっ……おかーさん……! しっ……死んでごめんなさい……!」


 ……やっぱり泣いた。

 泣かれるのは嫌いだ。

 頭にも耳にも響くし、なんか心臓の辺りもキリキリする。

 だから黙って背中をさすっておいた。



  ―――



 ニトが泣き止む頃には日が傾きかけていた。

 どうせ急いで向かう目的地もないし、町に戻って適当な宿に入る。

 多分行き場がないだろうから、ニトも一緒に。

 こんなチビほったらかしにできねーし。


「……ジェイドくん、ありがとう」


 ベッドにちょこんと座ったニトが言った。


「赤の他人のボクなんて放っておいてもよかったのに、一緒にいてくれて」

「お前みたいなチビをひとりにできるかよ」

「……ありがとう。あと、ごめんなさい」

「最強スキルが料理だったことへの謝罪か?」

「そ、それも、ですけど……」


 顔を上げて真っ直ぐこっちの目を見てくる。


「ボクが安易にジェイドくんが孤児っていう設定にしたせいで、天涯孤独にしてしまって」


 ……自分だって死んで家族にも友達にも会えなくなったくせに。


「オレは途中で別れたんじゃなくて最初からいなかったから、さみしいとかなかったし。それに、アッシュもいたしな」

「でも……」

「チビのくせにいっちょ前に後ろめたさ感じてんじゃねーよ」


 雑に頭を撫でて黙らせる。


「ふふ。ジェイドくんは優しいですね。ちゃんと、ボクが書いた通りのジェイドくん」

「原作者サマはオレの全部を知ってるってか?」

「黒い無造作ヘアーに、金色の瞳。身長183センチ、イイ感じに鍛えられた筋肉。ちょっと鋭い目つきと、ちょっと乱暴な言葉遣い」


 ちょっと得意気にペラペラとオレの情報を羅列する。……全部、合ってる。


「ちょっと短気で不器用だけど、根は優しい頼れるおにいさん。全部ボクが考えたジェイドくんです」

「丈夫さだけが取り柄のバカにしてくれてありがとうございまーす」

「ボクが言ったこと聞いてました? ジェイドくんはやさ……」

「オレ、疲れたから先にシャワー浴びてくる」

「照れてますー?」


 別に照れてねーし。


 シャワーから上がって腰にタオルだけ巻いて部屋に入ったら、ニトが真っ赤になって


「わわわっ……! わっ、ボクもシャワー浴びてきましゅっ……!」


って飛び出して行った。

 ……まさか、な。

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