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原作者を殺したい  作者: 鈴井 六
原作者を殺したい

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1/4

「あのさジェイド。パーティーから抜けない?」

「は?」


 フォークに刺した肉を口に運ぼうとして――止まった。

 安食堂にしちゃ上出来な肉が、ポトリと皿に落ちる。

 それよりこいつなんて言った?

 今の今まで普通に飯食って、次の町どうするーとか、装備どうするーとか、そういう話してたんだが?

 で、いきなりこれ?


「……オレ、なんか嫌われるようなことした?」

「いやちがうんだ! ジェイド、君のこと嫌いになんてなるかよ! 一番の親友だと思ってる!」

「じゃあなんでクビ切ろうとしてんだよ、親友」

 

 こいつ――アッシュとはガキの頃からの付き合いだ。

 孤児院で一緒に育って、一緒に旅に出て、気付いたら仲間も増えて、今は六人パーティー。

 で、その初期メンを?

 なんの前触れもなく?


「急に思いついて?」

「雑すぎんだろ理由」


 思わずフォークを逆手に持つ。頭のテッペンに突き立ててやろうか。


「さっきから、なんかそうしなきゃいけない気持ちに駆り立てられて?」


 すると他の連中も同調するように頷く。せめてなんか言えば?


「なにこれ集団いじめ?」


 いや違うな。

 なんつーか、全員「理由はないけどそうしなきゃいけない気がする」って顔してる。気持ちわる。


「せめてもうちょいマシな理由ないのか」


 するとアッシュが「あっ」って顔をした。


「最近さ、槍使いのランス加入したじゃん」

「おう。ネーミングが雑な槍使いのランス」

「前衛多すぎかなって……」

「じゃあなんで入れたんだよ」

「見たことない職業がいたら捕まえたくなるじゃん」

「図鑑でも作ってんの?」


 もしそうなら初期メン切ってまでやらないでほしい。


「大体よぉ、この町もう魔王城の近くだぞ」


 肉を咀嚼しながら言う。


「ここまで来るのにどんだけやってきたと思ってんだ。オレだってそれなりに腕上げてるし、決戦前なんだから人数は多い方がいいだろ」

「ぐぬぬ……」


 アッシュは露骨に詰まって、視線が泳いでいる。

 さっきからこいつ、“追い出す理由”を後付けで探してるだけだ。

 とりあえず皿の肉を全部片付けて、空になった皿を重ねる。

 それを見たアッシュが、


「……あ」


間抜けた声を出した。今度はなんだ。


「それだ」

「なにが」

「ジェイド。君は食費がかかりすぎる」


 肩に手でも置きそうな勢いで言ってきた。

 しかもなんか、いいこと思いついたみたいな顔してる。


「そこまで言うほど……」


 積み上がった皿を見る。


「……オレが一番デカいんだから燃費悪いのは仕方なくね?」

「それはわかってる! わかってるけど多いんだよ!」


 その他どもにもめちゃくちゃ必死に頷かれた。


「君の一食、他のメンバーの一日分くらいあるんだよ!」

「マジで?」

「マジだよ!」

「またまたご冗談を」


 言われてもう一回皿見る。

 ……まあ、そうかもな?


「最近装備更新も増えてるし、金いくらあっても足りないんだ! 実際、依頼挟んで金稼いでるだろ!? その分進みも遅れてるし!」

「ぐぬぬ……」


 今度はこっちが詰まった。

 言われてみれば、思い当たる節はある。あるけど。


「いやでも、それで切るか普通?」


 するとアッシュは一瞬だけ顔を曇らせて、


「ああ……ジェイド。俺は別に君が嫌いなわけじゃないんだ」


 出たよ。


「本当だよ! 目つきも口も悪いけど、仲間想いでいいやつだってわかってるし!」

「フォロー下手か」


 でも、そのあとが変だった。


「君は大事な幼馴染だし。でも……どうしても、一緒にいちゃいけない気がするんだ」


 ピタッと、空気が揃う。

 その他どももまた、同じタイミングで頷いた。寒気がする。


「……あーもう、いいや」


 アホらし。


「抜けりゃいいんだろ」


 アッシュの顔がパッと明るくなる。


「わかってくれたか!」

「わかったのは、お前らが“なんとなく”オレを追い出したいってことだけだよ」


 それで十分だ。

 別にオレは絶対魔王倒したいマンではない。

 あれはどっちかっていうと、アッシュの夢だ。ガキの頃から一緒にいたから付き合ってただけで。

 オレはまあ、飯食えて生きてけりゃいい。

 そのために旅して、強くなって、ここまで来ただけだ。

 だからまあ。

 その当人にいらないって言われたら、ここで終わりでいい。


「じゃあな」


 ご親切に金もきっちり分けて渡してきたし、回復薬もやたら持たされた。

 ついでに抱きつかれて「平和な世界でまた会おう」とか言われた。涙目で。

 嫌われてもいないのに追放されるとは。

 しかも理由が『燃費の悪さ』だし。


 食堂を出て町の出口に向かって歩き出す。これからどうしようか。


「あ、あのっ……!」


 背後から声。振り返る。


「ンだよ」


 そこにいたのは、フード被った小さいの。


「ひぃっ……! ご、ごめんなさい……!」

「なんだ、迷子か」

「ち、ちがくて……あの……さっき、パーティー……」

「ああ。抜けたけど」


 見てたのか。あんま触れてほしくないんだけど。

 するとそいつは勢いよく頭を下げた。


「それ……ボクのせいなんです!!」

「は?」


 ……今日は意味わからんこと言われてばっかりだ。

 チビはオレの目つきの悪さに怯えながら声を絞り出す。


「わわっ……ボクが……この物語の原作者……なんですっ!」

「……えーっと」


 よくわからんけどとりあえず、


「殺していい?」

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