11
カジノで爆死、無一文からの、路銀のために町長からの魔物退治の依頼を受ける。シナリオどおりに動くわたしたち。
“そこそこ強い人間と同じくらいの魔力”に調整したこの体で魔法を使うのは、正直結構楽しい。足手まといにならずに戦えている。
……わたしは中身がただの異世界人だから抵抗ないけど、本来なら魔王が魔物に攻撃魔法を撃っているわけで。
うーん、鬼畜。
でも魔王は同族だからと情を感じるタイプじゃない。人のフリしてこっそりジェイドくんに嫌がらせしたり、弱体化した自分がどこまでやれるかを、純粋に楽しんでいる。
ジェイドくんに「お前ってなんなの?」って言われたので、『才能と知性に溢れ最年少で大賢者になった男の子』ということにしておいた。実際に魔王がジェイドくんにした説明もこうだった。
本当は『クソガキ系鬼畜魔王』のくせに。
「そもそも元の物語ではなんでオレとお前は一緒に魔王討伐の旅するんだ」
……痛いトコついてくるなあ。
「賢者のボクがジェイドくんの追放現場を目撃して、ひと目でジェイドくんが魔王を倒す勇者になるって見抜くんです。これはまあ……大賢者だけの特別な予見の力みたいなやつで、ちょっとご都合主義なんですけど」
「で、親切な大賢者は追放された斧使いの能力を解放して、旅にまでついてきてくれると」
「そ、そうです……」
……納得していなさそうな顔をしている。
そりゃ、いくら才能と知性に溢れていようが、理由もなく魔王討伐についてくる男の子とか、不自然だよねぇ……。
気まずそうなわたしを見て呆れたようにため息を吐いたけど、ジェイドくんはこれ以上は触れなかった。ジェイドくんの中のわたしのポンコツ作家度が上がったのを感じる……ぐぬぅ……。
「にしても、斧使いと賢者の二人旅ねえ。ヘンな組み合わせ」
……は? 聞き捨てならないが?
「な、なんでですか! 物理攻撃型と万能魔法型はバランスいいでしょ!」
「いやそれなら普通、剣士とか」
はぁー……ジェイドくん、君もか。これだからデカい武器のロマンを理解できない素人は困る。
「何言ってんですか! 斧、デカくて強くてカッコいいじゃないですか!」
わたしだってこんなクソデカい斧、現実では扱いにくいだろうなって想像はつく。でも創作でそういうことを考えるのは野暮だと思う。
遠慮なく自分の好きなもの、憧れを詰め込むのこそ、創作の醍醐味でしょうよ。
だからわたしは、デッカい斧を使いこなして戦うジェイドくんがカッコよくて、大好きなんだ。
「お前ってさ、自分と真逆のヤツ書こうとしてたろ」
「……真逆?」
「チビ、泣き虫、非力、敬語。全部オレと逆だもんなァ?」
「……本当のことだけど悪口に聞こえます」
むしろ本当のことだから刺さるんですけど。
「ふん。オレみたいなイケてる大人の男に憧れてんのかー?」
「ジェイドくんはまだ十九歳です。……まあ、そりゃ、憧れは大いに……盛り込みましたけど」
ついさっきジェイドくんがカッコよくて大好きだと思ったばっかりだけど、本人から言われるとなんか……負けを認めるみたいで悔しい。
「なあニト。お前オレみたいになりてえの? オレのどういうとこが一番好きだよ?」
ニヤニヤしながらわたしの顔を覗き込む。調子に乗るな。
「うわー……鬱陶しい。あ、魔物がいましたー。さっさと戦闘準備してくださーい」
「なあどこだよ?」
……うるっさいな。全部だよ。
―――
「なあ、なんでお前がいないみたいな扱いなわけ?」
小声でわたしに耳打ちをする、めちゃくちゃ不満そうな顔のジェイドくん。
魔物退治を終えて町長に成果を報告しに行くと、ものすごい勢いで町長がジェイドくんを褒め始めた。
ジェイドくん、だけを。
それに困惑したジェイドくんがわたしに耳打ちしてきたのだ。
「……あー、多分ボクが『ジェイドくんヨイショエピソード』にするためにジェイドくんを褒めるセリフしか書かなかったからじゃないですかねー」
……この点に関しては魔王の思惑もクソもない。本当にただわたしがそれしか書かなかったせいだ。
「不自然だろうが」
「いやー、文字だとあんまり気にならないんですよね」
わたしマジで本書くセンスないな。
その後しばらく町長の『マシンガンヨイショ』を浴びせられながら欠伸をしているジェイドくんを、わたしは壁に寄りかかって眺めていた。さっき調子に乗ったバチが当たったんだよジェイドくん。
にしても、自分の書いたキャラクターが褒められているのを聞くのは良い気分だ。
ふふふ……ヤツはワシが創った。おっと、うっかり声に出た。
その後、宿でまたベッドがひとつしかなくてわたしは絶望した。
わーわー騒いでいたらジェイドくんにベッドに投げ飛ばされて、顔からめり込んだ。
調子に乗ったバチがあたった……。




