第二話:爆発の始まり
第二話も第一話に引き続いてAIの手を借りています。不自然な部分があるかもしれませんがどうぞご容赦を。
この小説にはたくさん暦が登場することとなりますが基本的に作中で使っている「西暦」は現実の西暦2100年を基準として1年を360日、1ヶ月を30日とした星雲中で共通の暦です(これを標準暦といいます)。惑星固有の時刻を指す時は「□□星系惑星〇〇、△現地時間xy時z分」みたいな感じで書きます。わかりにくくてすみません。
西暦22611年2月9日 午前10時
ソソリア星系惑星ソリア 惑星首都ソリアン中心広場
その日、首都ソリアンの中心広場は、身動きが取れないほどの群衆で埋め尽くされていた。
理由はただ一つ。惑星代表者による、全土に向けた緊急演説が行われるからだ。
広場に集まった人々は、微かな、しかし切実な期待を胸に膨らませていた。
「もしかしたら減税の発表かもしれない」
「もしかしたら軍縮の発表かもしれない」
「もしかしたら、生活が少しはマシになる政策が打ち出されるのかも……!」
――午前九時、期待を胸に家を出た『父親A』もまた、その群衆の中にいた。
今度こそ、今度こそ、苦しい生活が変わるのではないか。そう思わなければ、やっていられなかった。しかし同時に、彼の冷めた半分は、その希望を否定していた。どうせ、また裏切られるのだろう、と。
実際、一部の市民はネットのニュースサイトや掲示板、SNSを通じて、最悪のリークを知っていた。
『ほぼすべての税率が、さらに一五%引き上げられる』
知る者たちは必死に周囲へ訴えたが、多くの民衆は「まさか、そこまで酷いことはしないだろう」と、その不都合な真実から目を背けていた。
午前十時。
一日が地球時間でおよそ二十二時間のこの惑星では、そろそろ昼食の支度を始める者もいる時間帯だ。
その頃、舞台裏の控室で、惑星代表者(行政長官)――黒田政近は、緊張と恐怖のあまり激しい胃痛と下痢に襲われていた。
本国の高官たちに脅され、民衆を裏切る演説をしなければならない。
(私はまた、彼らに増税を告げるのか。……今回ばかりは、本当に殺されるんじゃないか)
だが、本国に逆らえば本国の艦隊がこの星を灰にする。彼に拒否権はなかった。
午前十時一分。
黒田政近は青ざめた顔で、覚悟を決めて壇上へと進み出た。
ざわついていた広場が、一瞬で静まり返る。黒田は震える声をマイクに乗せた。
「――再来週より、さらに、ほぼすべての税に対して一五%の増税を行う。また、新たな地上部隊一個師団分を、この惑星から徴兵することとなった」
広場が凍りついた。黒田は視線を落としたまま、非情な条件を読み上げる。
「徴兵基準は今まで通り、一八歳から三百歳までの、高卒認定を所持し、持病および食物アレルギーを持っていない者とする。志願兵が不足した場合、市民の中からランダムで電子抽選を行う」
チッ――。
誰かが激しく舌打ちをした。それは広場のあちこちへと伝染していく。
だが、黒田の口から出た追撃は、さらに市民の逆鱗に触れるものだった。
「また、増税の対象は消費税、所得税、相続税、法人税、水道使用税など多岐に及ぶ。……さらに、今回新たに『飲酒税』が増税される運びとなった。飲酒税は通常の消費税に上乗せされ、一律で酒類の価格の二十%を徴収する」
市民から、言葉にならない怒りの呻きが漏れる。
娯楽すら、完全に奪う気か。
その怒号の隙間で。
カチャッ、カチン――ジャコッ。
金属質の冷たい、何かが装填される音が響いた。
「……詳細な数値は、惑星ソリアのホームページ、または各種ニュースサイトを参照されたい。今回の演説は、これで終――」
――ドン! ドゥン! ドンドン!
激しい破裂音が広場に轟いた。
「カッ、……カハッ!?」
黒田政近の言葉が途切れる。彼は自身の身体の至る所から鮮血を噴き出し、操り人形の糸が切れたように、ドサリと壇上に崩れ落ちた。
悲鳴が上がるより早く、硝煙の立ち上る銃を掲げた一人の男が、狂ったように叫んだ。
「もう懲り懲りだ!! これ以上の星雲共和国の横暴にゃ耐えられねえ! 今すぐ独立だ! 俺たちには、あの腐った本国から独立した政権が必要なんだよ!」
その叫びは、限界を迎えていた民衆の心に、完璧な火をつけた。
「独立を! 星雲共和国をぶっ倒せ!」
「これ以上、搾取されてたまるかあ!」
地鳴りのような咆哮が広場を揺らす。その中には、拳を突き上げる『父親A』の姿も確かに存在していた。
――この日放たれた一発の銃弾は、歴史に刻まれる巨大なドミノの、最初の一個に過ぎなかった。
西暦22611年2月19日。
この反乱運動は、惑星首都ソリアンのみにとどまらず、シアラン、大南といった主要都市へと燎原の火のごとく波及。
同年3月に入る頃には、その炎は惑星全土の枠を飛び越え、ソソリア星系全体を巻き込む大暴動へと発展していった。
そして、西暦22611年3月6日午前11時ちょうど。
完全に団結した星系の民衆は、星雲共和国からの離脱を宣言――**【ソソリア自由国家】**を建国。
これこそが、のちに星雲を揺るがす『大反乱事件』において、民衆の手によって最初に産声を上げた反体制国家の記録である。
西暦22611年3月8日 午前11時30分
ユガンデリア星系惑星ゾナ 都市中心部ゾナリン
「――この報告は一体どういうことかね!?」
豪華絢爛な執務室に、ヒステリックな怒声が響き渡った。
声を荒げているのは、星雲共和国の政府高官――草木春雄。今年で223歳になる男だ。人工進化の恩恵で見た目こそ20代の若者だが、内面は権力に胡坐をかいた、ひどく幼く我が儘な怪物のそれだった。
対面する秘書は、冷や汗をにじませながら応える。
「どういうことも何も、現在はまだ確認中でございます。なんせソソリア星系とは、ワープ空間片道通信でも23時間と少し、往復通信であれば2日近くのタイムラグが発生しますからね」
「そんなことはどうでもいい! ソソリア星系には我が共和国の『第18大艦隊』が常駐しているだろう!?」
春雄はデスクを激しく叩いた。
「なぜ即座に鎮圧に向かったとの連絡が来ない! もう、とっくに来ていい頃合いだ! だいたい貴様らはいつも確認が遅いんだ、これだから――」
(――はぁ)
その怒鳴り声を背中で聞きながら、一人の男が内心で深くため息をついた。
男の名は、青木。春雄の下で働く三人の中秘書の中で、最も古くから彼に仕えている有能な男だ。青木は(さて、あの反乱の件、どうしたもんかねぇ……)と、書類を抱えて静かに廊下へと退出した。
艦隊を向かわせるにしても、春雄が言った通り、なぜ駐留しているはずの第18大艦隊から一切の定時連絡が来ないのか。
青木が思考を巡らせながら廊下を歩いていると――。
ピピピッ、ピピピッ。
ポケットに入れた仕事用の情報端末が、けたたましく鳴り響いた。
なんだ、と眉をひそめて画面を覗き込んだ青木は、そこに表示された文字列に目を疑った。とても正気とは思えない内容が書かれていた。
青木はすぐさま、今出てきたばかりの春雄の部屋へと、なりふり構わず引き返した。
タッタッタッタッ!
静かな高級大理石の廊下に、青木の激しい足音が響く。
「失礼します!」
ノックもそこそこに、青木は叫びながらドアを開け放った。
デスクの春雄が「入れ」と言うより早く、青木は顔を真っ青にして、端末を突き出すように報告した。
「通信を受け取りました! ソソリア星系から、全星雲に向けた無差別ワープ空間通信です!」
「何だと!? 内容は何だ!? 今すぐ降伏するとでも言ってきたか!?」
春雄が身を乗り出し、声を荒げる。青木はゴクリと唾を飲み込み、あまりの衝撃に声を震わせた。
「いいえ――違います。これは……その、何と言いますか……」
「どうした! もったいつけずに早く言わんかい!」
「ソソリア星系に駐留していた我が共和国の『第18大艦隊』ですが――ほぼ全艦、全兵力が新政権『ソソリア自由国家』に帰属し、その国軍となることを公式に発表しました!」
「――何だと?」
春雄の顔から血の気が引いた。
報告している青木自身、頭の混乱が収まらなかった。
(おかしい。なぜ、軍が国家を裏切る? 裏切る要素がどこにある? メリットなど何もない、本国の総力を敵に回すデメリットしかないはずなのに……なぜだ!?)
だが、それだけ前線の軍人たちの『不満』が、本国の上層部が想像もしないレベルにまで達していたという証拠だった。
春雄は数秒の間、わなわなと唇を震わせ、激しい怒りと困惑に耐えていたが――やがて、鋭い目で青木を睨みつけた。
「……ソソリア星系は、アメシア星系が近かったな?」
「は、はい。隣接する星系です」
「そこから即座に艦隊を向かわせろ! アメシア星系には今現在、第21から第25までの大艦隊が展開しているはずだ。そのうち、第21、22、23の『三大艦隊編成』でソソリアを包囲し、踏みつぶせ!!」
その容赦のない、そして恐るべき迅速な決断に、青木は目を見張った。
(……見くびっていた。私の主人は、これほどの非常事態において、これほど冷酷で早い決断ができるのか。私は余計なことばかりを考えて、反乱の火の粉を甘く見ていた。そうだ、まずはあの不届き者たちを、圧倒的な暴力で圧殺しなければ――!)
本国の怪物が、ついにその牙を剥き始めた。
ところ変わって――。
チャイロス星系惑星ネメシス 惑星首都・芽義
チャイロス星系には、四つの居住可能惑星が存在する。乾球、ネメシス、海球、緑球――。
その中で最も幸福度が高いとされる惑星ネメシスの首都・芽義の街の中に、その広大な邸宅はあった。
敷地面積、約180万平方メートル。
落ち着いた佇まいを見せるそこは、この地に深く根を張る名門『和邇家』の本拠地、和邇家屋敷である。
その一室で、自身の端末のニュース画面を見上げていた若い男が、面白そうに口元を歪めた。
「なぁ保水。ソソリア星系で派手な反乱が起こったらしいぞ?」
男の名は、和邇 䔍代士。
人口進化の恩恵により、外見は25歳前後の端正な若者。しかし、その瞳には退屈な日常を嘲笑うような、不敵な光が宿っている。
彼の隣で、淡々と携帯端末のデータを整理していた男――白城 保水が、画面から目を離さずに、低く落ち着いた声で応じた。彼もまた、25歳ほどの若々しい外見をしていた。
「あー、あれでしょう、䔍代士さん。なんか前線の軍まで丸ごとひっくり返ったっていう、例のニュース」
「そーそー。大艦隊規模がまるごとソソリアに寝返ったらしい。最高にイカしてるよな」
䔍代士はふっと笑い、ソファの背もたれに深く体重を預けた。保水は端末の手を止め、呆れたように肩をすくめる。
「マジですか。まぁ、この国も大概でしたからね。最近の政府やお偉いさん、軍需企業の連中の汚職のまみれっぷりを見ていれば、当然の結果ですよ」
「ね。正味、この国はもう引き返せないところまで来ちゃった気がするわ。いやはや、国家を思い通りにコントロールしようってのは、本当に難しいねぇ」
「ほんとそれです。……で、どうします? 私が沈めてきますか、今回の反乱?」
保水が冗談めかして、冷徹な目で䔍代士を見つめる。
䔍代士は小さく首を振った。
「いや、いい。この国はもう、中まで腐りきっちまった。市民にとっても、……そして、俺たちにとっても、理想の国を作りたかったんだが、どうやらこのシステムじゃ無理だったらしい。なら、もうこの際――うちらが反乱に乗っかるのも、アリだろ?」
保水の口元が、わずかに緩んだ。
「この国が『星雲共和国』なんて名前に変え始めたあたりで、薄々察してはいましたよ。あんたがもう、この国の暴走を制御する気がないこと。既得権益に目が眩んだ政府が自業自得とはいえ、哀れですね」
「まあね。でも、今回の反乱は今までと違って軍も寝返ってるし、あの白々しい増税発表の直後だ。星雲中のあらゆる場所で、溜まりに溜まった不満と一緒に、一気に大爆発を起こしそうな気がするんだよな」
䔍代士は立ち上がり、窓の外に広がる惑星ネメシスの空を見上げた。
「――おい、保水。これはひょっとすると、ひょっとするかもよ」
「……まぁ、そんな気はしますね」
保水は静かに端末をポケットに収め、䔍代士の背中に並んだ。
「その『ひょっとした時』、私たちはどう動きます?」
「一旦、その時が来てから考えようや」
不敵に笑い合う二人の男。
彼らがのちに、この燃え盛る星雲の歴史において、どのような立ち位置を占めることになるのか――それはまだ、誰も知らない。
この世界では西暦2300年代に本格研究が開始され、西暦2400年代に開始され始めた人口進化によって身体的成長が25歳前後で止まり、平均寿命がおよそ350歳になる。また、寿命を迎える20年ほど前から急速に老化し始める。さらに、人口進化によって人間は0.5g〜3.5gまでの重力に一般人でも耐えられるようになっている。
ヘリオス粒子について。この世界において星間航行などをできるようにしたなんかこうすごい粒子である。
発見:2049年9月17日 日本
発生場所:恒星内部(詳細未定)
ヘリオス化:普通の物質の電子がおさらばしてそこに代わりとしてヘリオス粒子が入ること。この状態になった物質のことをヘリオス化物質と言い、ヘリオスエネルギーを纏えるようになる
ヘリオス粒子、ヘリオス化物質は光を散乱させる性質を持つ。青い光を散乱させるヘリオス粒子を青ヘリオス粒子のように呼ぶ。様々なヘリオス粒子が大量に存在すると黒い光が散乱するため、人間の目には真っ黒なものが漂っているように見える。宇宙とかではこの性質を使って時間稼ぎ程度ではあるが敵の視界を欺くことができる。
ベクトルについて:環状360分割の単位が用いられる。ベクトルの違いなどによって引き起こされる現象は下記のとおり
ベクトルによる相互作用
真反対のベクトル同士:引き合う
真反対のベクトル同士(核融合レベルの極限圧縮):融合して元の粒子同士の中間ベクトルを持つ粒子2個分へと変化する
同じベクトル同士(通常):特に反応なし
同じベクトル同士(核融合レベルの圧縮):反発する
ベクトルが1違う粒子同士:圧縮せずとも自然に反発し合う性質が存在し、反発すると徐々に反発力が衰え、最終的にベクトルが同じになり反発しなくなる
それ以外の異なるベクトル同士(下記の特例を除く):互いに遭遇・衝突すると打ち消しあって消えてしまう。シールドが成り立つ根拠となる基本性質
※ベクトルは現在、環が360分割された単位が用いられている。例えばベクトル360の粒子の隣はベクトル1である。
無干渉ベクトル
真逆のベクトルのちょうど中間に位置するヘリオス粒子同士は、互いに一切の干渉が起こらない。色相環で表すと、青と黄色という真逆の色が混ざる真ん中に位置する緑のヘリオス粒子同士が、この無干渉の関係にある。
通常の推進エンジンの原理
自然反発固定式推進エンジン
1 エンジン内壁をヘリオス化(またはヘリオス粒子を固定)→ベクトルXの状態を維持
2 ベクトルX+1のヘリオス粒子をエンジン内部に供給
3 固定側と供給側が自然反発→しかし固定側は動けない
4 反発力を受けた供給側粒子の唯一の逃げ場がノズル
5 ノズルから噴出→推進力
固定された側のの反発力がどんどん衰えていくため固定側も時々更新が必要となる




