平穏
朝のオーノルトの街は祭りのように盛り上がっていた。ルシアさんは僕たちよりも早く出て行ったようだ。
「毎日こんな感じなの?」
「そうだな。いつだって商人たちは稼ぎどきを逃すまいと商いをしてる。入れ替わり立ち替わり、店が入るもんだから、ずっとこんな調子さ。」
「なるほど。」
今日は街に出たはいいものの、やることが全然決まっていなかった。
「そういえば、昨日聞き忘れたんだけど、旅の目的とかあるか?」
「自分探しかな。」
「そりゃまた曖昧な答えを。」
「言ったろ? そもそも家が嫌で飛び出してきたって。」
「そうだな。よくよく考えれば俺も同じか。」
僕は手を組み頷く。
「そうだよ、あのルシアさんとはどこで出会ったんだ?」
「それは…………成り行きというか。」
「そもそも、ルシアって大天使様の名前だろ?」
「そうなの?」
「それも知らないのか…………一体どんな田舎にいたのやら。邪法大戦時代に天から舞い降りて、影のものを消し去った。有名な伝説だぜ?」
「ふーん。なるほどね。覚えておく。」
ルシアさんは天使だ。その大天使様と接点があるかは知らないが、名前を奪われたと言った。つまりは本来は他の名前を持っているということだろう。
「はい! はいはいみなさん! 世にも珍しい魔術をその目でしかとみよ!」
小広場の真ん中にステージがあり、たくさんの人がそれを囲んでいた。その上に白紙のキャンバスと1人の少女が立っていて、その少女はポニーテールの髪型で、ジャージを腰に巻いていた。
すると、彼女は瞬く間にキャンバスに青い鳥を描いた。
「さあ!ご笑覧あれ〜!」
そう言った瞬間。鳥がキャンバスから飛び出し、喝采が起こる。
「うぉすげぇなあ、加護魔術だ。」
ノージスが呆気に取られる。
「加護魔術?」
「これはわかんなくて当然だな。加護魔術は、普通の魔術とは違い、自らの加護を媒体として、能力を発現させる魔術だ。」
「ほぉ。詳しいんだね。こういうの。」
「まあ、ね。俺には適性はなかったけど、武の道じゃなくて、魔術を学びたい時があったんだ。」
「わかる。僕も昔はずっとやりたいことがあった。僕にはその権利はなかったけど。」
「お互い似たもの同士だな!」
「な!」




