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焦燥

「ヒイラギくん。昨日はよく眠れたかい?」

「はい。」


ルシアさんがドアの向こうから話しかける。


「何やら、統治者様がお呼びなようだ。準備して降りてきてくれ。ロビーで待ってる。」

「わかりました。すぐ降ります。」


机の上に置いてある、下履きと服に袖を通す。

確かに、とても肌触りが良く、少しオーバーサイズだった。かけられた鏡を見る。

そういえば。今の自分の顔を見るのは初めてだ。髪は紺色で、顔はあまり前と変わりないようだ。でも、傷はない。それだけで自然と清々しい気分になった。


●●●


「……いいね。似合ってるじゃん。昨日買ったんだね。」


ルシアさんは僕がきたのを見計らって歩き始める。


「はい。どうやらぼったくられたみたいですけど。」

「まあまあ。そう、気を落とすな。」

「落としてないですよ。少し残念だっただけです。」

「それを落としてるって、言うんじゃないかなぁ。」


外に出ると、まだ外は少し暗かった。


「ルシアさんはどうですか?そのブーツ。」

「なかなかいい買い物をしたね。履きやすい。追い剥ぎなんかから奪わなくて良かったよ。」

「ですね。昨日は他に何を買ったんですか?」

「今後の食糧とそれを入れるバッグ。短剣、地図、レザーベスト。後は………魔法書みたいなやつ。」


やっぱりこの元天使は思ったより、頭が回るみたいだ。僕が自分のことしか考えてないところを、彼女は今後のことを考えて準備をしていたんだ。


「あの魔導書、入門編らしいから、少し時間がある時に読んでみよう。少しでも魔法は使ってみたいだろ?」

「もちろんです。手解きの程をお願いします。」

「待て待て、私も初心者だよ。」

「あの解毒のおまじないと言ってたのは魔法じゃないんですか?」

「うーん。魔法っちゃ魔法なんだろうね。何度も言ってたかもしれないけど、落ちても天使は天使なんだよ。聖なる力で包み込めば、大抵のことは浄化される。」

「曖昧ですね。」

「曖昧なんだよ。」

「多分。あの実は、あたりの魔力を吸って、樹木に刻まれた魔法で、毒素を貯めるらしい。結構美味しいのに、もったいないよね。」

「なんでそんなことわかるんですか?」

「まぁ、勘かな。」


勘………何か秘密にすることでもあるのだろうか?


ルシアさんは目を逸らし、そそくさと先へ進む。


●●●


統治者の屋敷に着くとそれはそれはたいそうな歓迎を受け、部屋に座らされた。そこには統治者のラングスは頭を下げて言った。


「数々の非礼、誠心誠意謝罪させていただきます。」

「別にいいよ。息子さんは助かったんだろ? それでいいじゃないか。」

「はい。今朝方目を覚ましました。」

「そりゃよかったね。じゃあここいらで失礼するよ。」


ルシアさんは勢いよく立ち上がる。


「お待ちください! まだしっかりとお礼ができておりませぬ。」

「じゃあここで必要に私たちに関わらないことがその礼だと思ってくれ。」

「刺客の件ですな。」

「察しが良くて助かる。あんたの息子は暗殺されかけて、それを阻止した私たちは今にも殺されてしまうだろう。…………話は終わり。」


なるほど。そう言うことか。朝からルシアさんが少し苛立っていたのはそれが原因か。


「行こう。ヒイラギくん。」

「は、はい。」


そう言うと早足で屋敷を飛び出した。


「話は聞いていただろう? 私たちは今すぐこの街を出る。」

「わかりました。」


すぐに宿に戻り、準備を済ませる。バッグにルシアさんから渡されたものを詰めていると、底に手袋があることに気がついた。


「これもくれたのかな?」


その手袋を付けてみると、それもまた上質な触り心地だった。


ドォォォン!!


…………ッ!!


不意にルシアさんの部屋から轟音が鳴る。


「なんだ!?」


パリィン


………………!?

ガラスが割れ、黒装束の男が入ってきた。大ぶりな動作で、左手に持っていた短剣を振りかざしてくる。


僕はナタを抜き、それを受ける。


火花が散り、重いものが刃にのしかかる。


まずい……僕の筋力じゃ押し負ける。


バン!


………大きな音を立てて、ドアが開く。


「ヒイラギくん! 目ぇ瞑れ!」


指示通り、咄嗟に目を瞑る。


「シュルセイン!!」


その瞬間、ナタを押していた重みは消え去り、瞼を閃光が照らした。その刹那……轟音が響く。


追いかけるように風圧が僕を殴る。

目を開けると、壁は吹き飛び、陽光が顔を照らしていた。


「ヒイラギくん、遅れてすまない。今すぐここを離れよう。」

「わかりました。急ぎましょう。」


立ち上がり、急いで階段を降りる。


「お客様! 先ほどの音は一体?!」

「ごめん! 説明してる暇はない! 修理代は統治者様に強請ってくれ!」


勢いよく扉を開け放ち、門に向かって走る。


「ルシアさん。追手は来ないんですか?」

「さっきの2人だけなら、当分来ないと思う。魔法でこの街の端まで吹き飛ばしたからね。」

「2人?」

「私の方にも1人来たんだよ。」

「それ門の方角じゃありませんよね?」

「当たり前だ。もちろん正反対の方向に飛ばしたさ。」


門まで行くと、あの見張り番が立っていた。


「お待ちしておりました。私もご同行いたします。」

「頼もしい限りだね。」


ルシアさんは皮肉そうに言う。

門が開けられると、すぐに街道へと歩みを進めた。


「行き先はオーノルトの街でよろしいですか?」

「よくわかんないから、そこで結構。頼むよ?」

「頼まれました。今日中にできるだけ離れましょう。」


●●●


「一時はどうなることかと思ったけど、無事に出られてよかったよ。」


森の木々に光が遮られ、あたりはもうすっかり暗くなっていた。


「紹介が遅れました。ノージス・オル・レギアルと申します。」


ノージスさんはたくましい体つきで、川の鎧を着ていた。背中には長剣が背負われていて、いかにも里守という感じである。


「私はルシア。」

「僕は…………ヒイラギ……です。」


ルシアさんが物凄い剣幕で僕を睨む。


「ルシアさんとヒイラギくんですか。いい名前ですね。」

「え?」


思わず口が滑る。


「どうされたんですか?」


ノージスさんは首を傾げる。


「ヒイラギって変じゃないですか?」

「変? そうでもないと思いますよ。」

「それなら、よかったです。」


ルシアさんが大きなため息をついた。


●●●


今回の野宿は真っ暗でなく、焚き木を3人で囲んでいた。まあ、2人は寝てしまったわけだけど。ヒイラギくんは念願の寝袋で寝ている。月の綺麗な深い夜だ。

さっきの2人の話を聞いていたが、この2人は結構、馬が合いそうだ。心配はいらないかも知らない………が


………頭が痛む。やはり、私に残された時間は僅かなようだ。


今日も今日とてヒイラギくんの頭を撫でる。


「……何してるんですか?」

「ん………悪いね、こうすると落ち着くんだよ。」

「…そうなんですか。」

「そうなんだよ。おやすみ。」

「…………おやすみなさい。」


●●●


その街は広大な草原に位置していて、森を抜けてすぐの場所にあった。


「ここが、商人の街オーノルトです。」


街の外側の家々は連なり、石造りでしっかりとしていて、まるで城壁のようだった。

ノージスが聞いて欲しそうにしているので、声をかける。


「あの家は何? 人は住んでるの?」

「これらの住居は、魔物からの防衛をするための城壁の役割をしています。この辺りの魔物は弱いですし、少しでも都市防衛にかけるお金を減らしたかったそうです。都市の中心にかけてその中心は大商会の本拠地がありまして、大いに賑わっています。」

「ほーう。なんほど。」


ルシアさんが頷く。


「とにかく、都心部に向かいましょう。この辺りはお店も宿も多くありませんから。」


●●●


僕は窓を開けて、月光を望む。あの夜もちょうどこんな感じに、月が綺麗な夜だった。

不意にノックの音が聞こえる。


「ヒイラギくん。入ってもいいですか?」

「はい。」


ノージスさんは僕の座っている椅子の正面に座った。


「どうしたんですか?」

「理由を言えば、少し眠れなくて、話に付き合ってほしいというわけです。」

「全然構いませんよ。」


どうしよう、そんなこと言われても反応に困るな。


「ヒイラギくん。今日はいろいろありましたね。」

「そうですね。ルシアさんが逸れた時はどうなることかと思いましたよ。」

「オーノルトは人が多いですからね。またそうならないように気をつけましょう。」

「そういえば、ヒイラギくんは何歳なんですか?」

「17歳です。」

「じゃあ僕と同じですね。」

「えぇ。同い年?」

「そうだよ。じゃっこれからはお互いタメ口話さないかい?」

「わかった。ノージス。」

「突然だけどさ、ヒイラギは旅人になる前ってどんな感じだった?」

「そんな昔の話じゃないんだけどさ。父………親父が嫌いだった。何かうまくいかないとすぐ僕に当たって、それでもって僕には利口でいろと、俺の話を聞けと、だから…………全部投げ出したくなった。」

「…………つまり、最近家出したばかりなんだな。」

「なんでそれを……」

「そりゃわかるよ。俺が君たちにあった時、すごい服装だったんだぜ? 腰にナタと質素な布の服。明らかに旅人の装備じゃない。」

「まあ………そうだよね。」

「おっと、ヒイラギだけに話させるわけにはいかないな。さて、ここからは内緒にしておいてくれよ。」


僕はごくりと唾を飲み、頷く。


「実はな。俺、レギアロス家の三男なんだ。でもさ、両親はああであれこうであれ、兄のようになぜできない。兄のようであれ。とか、うるさくて煩わしくて嫌いだったんだ。だから俺は家を出て、自分の道を探すためにロクボクにいたんだ。」

「………………………………………………なるほど。」


まずいな、なんのことやらさっぱりわからん。


「えっそれだけ?」

「う、うん。」


おそらく、レギアロス家というのは名の知れた名家なのだろう。


「………ありがとう。何はともあれ、お互いの過去を知った。つまりは、親友だろ?」

「だな。ノージス。」


僕らはなぜか笑い合う。

感想バンバンお願いします。ぶっちゃけ、自分の文章力と設定の浅さは理解してるつもりなので。温かい目で見守ってくれたら幸いです。


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