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ロクボクの街

前回同様です

集落の入り口は、階段で高くなっていて、門の前に見張りがついていた。ルシアさんが階段を登り、見張り番に話しかける。


「こんにちは。」

「こんにちは。旅人の方ですか?」

「はい。」

「何か証明するものはお持ちですか?」


僕らは顔を見合わせる。


《旅人に証明書が必要なのかよ!》


「すいません。ありません。」

「正直で結構。お引き取り願います。」

「……見ての通り、一文無しなのです。せめて一晩でいいので留めていただけませんか?」

「お引き取り願います。」


ルシアさんは早々に諦めて、階段を降りた。


「すまんな、ヒイラギくん。私たちは当分あの黄色い実を食べて生きていかなきゃならないらしい。」

「わかりました。ここからは道があるみたいですし、そこを伝って歩きましょう。」


見張り番は僕らの会話を聞いていたらしく、声をかけてきた。


「ちょっと待ってくれ。君たち、解毒の魔法が使えるのか?」

「………はい。私が少々。」

「わかった。少し待っていてくれ。」


そう見張りは言うと、門の中に入っていった。


「ラッキーだったな、ヒイラギくん。恩を売るチャンスだ。」


●●●


少しすると、さっきの見張り番が出てきて、


「どうぞ、私についてきてください。」


先ほどとは態度も言葉遣いも一新され、そう言って門を開けてくれた。


階段を登り、門の中に入る。

そこには沢山の人と建物が所狭しと立ち並ぶ、外からは想像できない情景が広がっていた。建物のほとんどは木造で、沢山の柱で支えられていた。


「ご存知とは思いますが、このロクボクの街は大都市を結ぶ中間部になっていまして、このように外からの見た目より、だいぶ栄えています。」


全然ご存知じゃなかったが、やはりこの情景には驚きを隠せない。

建物の上に、増築したような建物がいくつも立っていて、それぞれに接続するための足場があたりを埋め尽くしている。影になって暗くなっている場所には、ランタンが立っていて、至る所に出店があった。周りの人々は、僕らの奇抜な服装が目立ってか、少し目をこちらに向けてきた。


「さあ、こちらです。」


見張り番は急足で奥へ進んでいく。入り組んだ道を通ったり、足場に登って、先に進むが、見通しがとても悪く、とても覚えられるような道である気がしない。


「ここの統治者である、ラングスさんの息子さんが、高熱を出して、倒れたんです。」

「それなら、解毒魔法は関係ないんじゃないかい?」

「実は、息子さんが倒れた原因が、あなた方が食べたと言う、黄色い木の実なのです。」

「なんほど。わかった。なるだけ力になれるよう努力するよ。」

「ありがとうございます。」

「礼はことが済んでからだ。」


少し広い場所に出ると、その真ん中に大きめの二階建ての家があった。不格好であったが、大切にされてきた形跡が窺えた。


見張り番が扉を開けて言う。


「お待たせしました! 解毒魔法が使えると言う者を連れて参りました。」

「さようか……早く二階にその者を連れてまいれ。」


返事をした人物は粗く切った髪が目立つ男性で、筋肉質でありながら、だいぶやつれていて、ところどころの白髪が目立った。それでも、無骨で派手な色の服から威厳を感じられる。おそらく彼が統治者なのだろう。


その人物と見張り番についていき、二階に上がると、開かれた扉の奥にベッドに横になる男の子がいた。その隣の椅子には医師と思われる男性が座っていた。


「状況は?」


ルシアさんが医師に尋ねる。


「熱が出てから3日です。痙攣していて、呼吸も不安定で、意識がありません。」

「わかった。」


そう言って、ルシアさんは男の子の額にそっと手を乗せ、目を瞑り、何かを唱えた。


「終わりました。明日には熱は引き、目覚めると思います。」



「嘘をつくな。早すぎる。達人の魔法使いでも手遅れだと見放したんだぞ!」

「そう思うなら、それでどうぞ。結果が答えですよ。」

「何!?」


統治者はルシアさんの胸ぐらを掴んで持ち上げた。

僕はなよってしまって、見ていることしかできなかった。


「ラングスさん! オリオスさんの呼吸が安定しました。」


医師が急いで告げる。


統治者はルシアさんを離し、息子に駆け寄った。そして、統治者は口を開いた。


「ノージス。旅の方を宿へご案内してやれ。宿代はこちらで負担する。」

「はい! わかりました。失礼します。」


そう言って、見張り番は僕らの背中を押して、部屋から出た。


「すいませんでした。非礼をお詫びします。」

「別にいいよ。君が謝ることじゃないし、息子を助けようと必死だったのもわかる。」


ルシアさんはそう言いつつも、無表情で、憤りを感じているのが窺えた。


●●●


もう、日が沈みかけていて、あたりはゆうまぐれに照らされていた。

見張り番は統治者の家を出て、来た道を遡って行く。


「君は門の見張り番だろ? こんなとこでよそ者を案内していていいのかい?」

「大丈夫です。他の見張り番に持ち場を託しましたので。」

「そうかい。」


会話はそれ以上続かなかったようだ。


「着きました。ここがここで一番大きい宿です。」


一番大きいと言うだけあって、統治者の家とは違い、整った形で、所々に豪華な装飾がしてあった。それでも装飾がうるさいわけでもなく、小綺麗と言う印象だった。


「別にどこでもいいのに。」

「そうはいきません。あなた方は恩人ですから。」


ラッキーだと言っていたルシアさんだが、統治者のあの態度は流石に嫌だったのだろう。


「2部屋夕食付きで用意しておりますので、詳細はロビーの受付でご確認お願いします。」

「わかりました。」

「では、私はこれで。」


そう言って、見張り番は帰っていった。


●●●


「私はこっちの部屋を使うから、ヒイラギくんはそっちをどうぞ。あとは夕食まで自由行動ね。」

「わかりました。」

ルシアさんは金貨を一枚僕に渡した。


「御礼金だってよ。じゃ。」


そう言ってそそくさと部屋に入っていった。


さて、どうしようか。……一旦外に出てみるか。部屋は二階だったので、降りてロビーを出る。


夜の街は街灯とランタンに照らされ、昼と変わらず賑わっていた。この金貨一枚で何ができるかわからないけど、金貨と言うぐらいなのだから、結構、できることは多いんじゃないか? と思った。僕には買いたいものがあった。流石にこの服ひとつと肩当て、小手、ナタで旅をするのは無理がある。新しい服一式と寝具、バックが欲しい。もう二度と地べたで体操座りとかは嫌だ。


歩いていると、服の出店を見つける。結構沢山の服があり、ここなら期待できそうだ。


「すいません。手頃で丈夫な服ってあります?」


店主は顎髭の職人さんのようで、なかなかダンディーだ。


「うちに目をつけるとはやるね、兄ちゃん。いくら持ってる?」

「金貨一枚です。」

「なるほど、見た目によらずなかなか大金をお持ちのようだな。じゃあちょっと待ってな。」


見た目によらず。つまり僕の格好はだいぶ見窄らしいわけだ。


「これはどうだ?南方から取り寄せた綿糸を魔法をかけて編んだ上質ものだ。装備の下に着る時、布ずれやらも少なくて着心地がいい。」

「いくらなんですか?」

「安心しろ、その銀貨2枚程度だ。兄ちゃん、服一式を求めてるんだろ?」

「はい。できるだけ動きやすいのを。」

「その体型で、重い鎧を背負うのはまず無理だろう。なら服自体の防御力が高い物を選んだ方がいい。そこにあるやつとかな。」


店主はテーブルに置いてある一着のズボンを指差した。それは少し大きめで、僕には合わなさそうだった。


「魔物の皮を舐めして作ったやつだな。小さい物でもあのぐらいのサイズしかない。なんの魔物かは知らん。俺が作ったわけじゃないんでな。」

「じゃ、あなたが作ったやつをお願いします。」

「…………わかった。もうちょっと待っとけよ。」


店主は店の奥に行き、一つのズボンを引っ張り出してきた。


「サイズはちょうどいいだろう。通気性はいいし、装備をつけやすい。耐久性には優れているし、大量の魔法をかけているが、決して防御力が高いわけではない。」

「それをお願いします。」


僕は金貨を机に置く。


「お釣り、銀貨7枚。………後、これも持ってけ。」


店主は革製のバッグを机の上に置く。


「いいんですか?」

「もともと、それ、全然売れなくて処分するつもりだったんでな。」


そのバッグは大きめで、ちょうど背負いやすいサイズで、四角く、物がよく入りそうだった。どうもこれが売れ残りとは思えない。


「じゃあな。縁があればまた会おう。」


そう言って店主は僕の手に銀貨をおさめた。


●●●


どうにか寝具を買うことができた。だが、この寝袋は銅貨20枚だった。銅貨は100枚で銀貨一枚らしい。そう聞くと、あの店主にぼったくられたことに気づく。まあ、こちらにきたばかりで世間知らずだったので、いいカモと思われても仕方ないのかもしれない。

宿に戻ると、ルシアさんが待っていた。ルシアさんはあのキトンではなく、麻の服と革製らしいズボンを着ていて、さらにブーツを履いていた。


「意外と早いお帰りだね。これはまた随分と買ったもんだな。」

「一枚でだいぶ買えるもんですね。」

そりゃ、こっちの世界じゃ金貨なんて100万円は下らない。」

「えっ100万円?」


やはりぼったくられてたか。


「………どうした?」

「いや、なんでもないです。そういえばキトンはどうしたんですか?」

「あぁ、洗浄を頼んだ。明日取りに行く。」

「わかりました。」

「じゃ、地下に降りようか、そこが酒場になってるらしい。」


2階へ上がる階段の裏に、下へ降りる階段があり、人が数人行き来していた。

階段を降りると、板張りの壁で、天井からランタンが吊るされた、温かみのある空間になっていた。結構人がいて、夕食の時だけ、ここに来ている人が多いのだろう。


ルシアさんは奥の空いている席に座った。


「ほら、ヒイラギくんも。」


僕はルシアさんの向かいに座った。


「ちょっと前にもこんな感じに座ったことがあったね。」

「そうですね。今となっては遠い昔に感じられます。」

「まあ、まだ2日しか経ってないけどね。時間が長く感じられるのはエンジョイできてる証拠だよ。」


ルシアさんはメニューに手を伸ばしながら言った。

僕も同じようにメニューに手を伸ばす。

なんて書いてあるか…………わかる。


「なんで僕はなんで書いてあるのか読めるんですか?」

「こっちに転生させる時、君の頭にこっちの共通言語を刷り込んだ。その代わり、日本語がわかんなくなってるかもしれないけど。

「ありがとうございます?」


感謝していいのかしなくていいのかわからない。


「まあ、共通と言ってもこっちの下界にも沢山言語はあるから、勉強しといて損はないよ。」

「そうですか。」


日本語がわからなくなってる。か。今のところそんな感じはしないけどな。

指で日本となぞってみたけど、普通になぞることができた。


「お客様、ご注文はお決まりですか?」


ウェイターさんが、メモを持って問いかける。


「私はクリームシチューをお願いします。」


ウェイターさんとルシアさんが僕の方を見る。


「あっ僕も同じものをお願いします。」

「かしこまりました。シチューが2点ですね?」

「はい。お願いします。」


同調行動者の僕を見て、元天使は苦笑する。

感想バンバンお願いします。ぶっちゃけ、自分の文章力と設定の浅さは理解してるつもりなので。温かい目で見守ってくれたら幸いです。



誤文字を修正しました。

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― 新着の感想 ―
確かに少し読みずらいし、主人公より元天使さんの方が魅力的ですが、展開が少し気になるので今後も頑張ってください。応援しています。
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